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いやいや、紗耶香こそ天才やろ

「つまり、言語学的な問題やなあ」

 敬太郎君は、ホットプレートから焼きうどんをゴソっと取り、取り皿に乗せてからパクつく。

 ふと気付けば、ホットプレートの焼きうどんはほとんど無くなっていた。智ちゃんが残りを雄治の取り皿に乗せ、あらためて油をひきボウルの野菜と肉を炒め始める。


「漢語辞書も日本語辞書もない時代、両者のコミュニケーションがどこまで正確やったか、アヤシいやろ!? 魏朝の連中は邪馬台国人の言葉を、ちゃんと正確に聞き分けたっちゃろか?」

「そうだよねえ……」


「オレ達は中国人の会話を聞いても、全然聞き取れん。早口でケンカしちょるように聞こえる。しかし中国人に言わせれば、日本語こそ早口に聞こえるらしい。何故か。中国人を含め、他国の人間は子音の聞き取りにけちょる。逆に日本人は、母音の聞き取りやら発音を重視する。一音一音に母音がある日本語は、外人さんにしてみれば聞き取りづらいらしいよ。そういう言語学的な差異がデカい」


「うん。何かそんな話を聞いたことがある」

「そんげな言語学的差異を、当時ちゃんと克服出来たっちゃろか。魏朝の連中は、日本人のしゃべる名詞……人名だとか地名を、ホントに正確に聞き取って漢字に表したっちゃろか。そもそもそこが、結構アバウトやったっちゃね!?」


「そうか……。だから『キクチヒコ』が『クコチヒク』なのか」

「そうそう。『タリシヒコ』が『タラシホコ』とか」

「うんうん。『イキメ』も、元々は『イクメ』やったかもしれんし、『イキマ』『イコマ』もあり得る。今となっては調べようがない」


 敬太郎君はそう頷きつつ、うどんを口にドカっと放り込む。雄治はインチキビール五缶目を凄いペースで飲みつつ、敬太郎君の解説に耳を傾けている。酔っている様子が全くない。


「ちゅうわけで、オレの調査は行き詰まった。……っつか、行き詰まるという結論を確認するに至った」

「あははは。了解」

「あと魏志倭人伝を読むと、やたら『奴』の文字が目立つやろ!? あれは格助詞の『の』かも。それと『属する』ち意味も、あるかもしれんね。両方混在しちょるっちゃないやろか!? オレが調べた限りでは、『な』と読んだっちゅう根拠は見つけきれんかった。『の』か『ぬ』らしいな」


 うん、それっぽいね。――

 それにしても、やっぱ敬太郎君はスゴいわ。学者になるべきじゃない!? 歴史学者になって、アカデミズムの大改革をやって欲しいよ。

 あ、智ちゃんもスゴい。たった数日で、よくあそこまで調べて分析してるし。あと雄治もわけわかんないけどスゴい(笑)

 あたしは日頃、天才セクシー系なんてうそぶいてるけど、何かちょっと恥ずかしくなってきた(汗)


「いやいやいや。紗耶香こそ天才やろ」

 と、雄治が言う。

「そうやなあ」

 と、敬太郎君。


「『一大=天』っち説は、衝撃やったぞ。ざっとネットでググってみたけど、他にそんげな主張している人を、見かけんかった。あれは卑弥呼に教えて貰ったと?」

「いや、あたしが自分で気付いたんだけど」

「ほら。やっぱ天才やな」

 あははは。そうなの!? テレるじゃん。――

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