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どっちも無理やと思うし間違っちょると感じるわけよ

 そうなんだ。漢字の読みの問題もまた、確実な事は何も解らなくて、ことごとく仮説に過ぎないんだ。……

 結構ショッキングな話じゃん。


「漢字ってのは、実は漢民族が作ったわけではないらしい。教科書で『殷の時代の甲骨文字を元に、漢の時代辺りに現在の形となった』と習うけど、そもそも殷朝自体が漢民族の国家ではないみたいだし……。紀元一世紀に許慎ちゅう学者が、漢字の辞書を編纂しているけど、その時点で既にモロモロ意味不明になってるっぽいよ」

「ほぉ~~っ。マジ!?」


「問題の一点目は、そこやな。つまり邪馬台国時代に、魏朝の人間が漢字をどんげな音で読んじょったかが不明、ってこと。二点目は、当時の我が国の言葉が不明、ってこと」

「そっか。書物の一冊も残ってないもんね。……っていうか、まだ文字すら無かったことになってるし」


「そうそう。で、日本の学者は、そこを六世紀七世紀のナレッジでどうにかどげんかしようと考えちょるわけよ。邪馬台国の時代とは三〇〇年のギャップがあるのに、強引にそんげな手法を使うのがはたして理に適っているのか」

「う~ん……」

 なんじゃそりゃ。――


「例えば古代の日本語ってのは、母音が八つあった……ち言われちょったとよ。万葉仮名やら記紀の記述を見ると、漢字の用法からそんげな推測が成り立つらしい。んでもってそれが平安時代辺りに、次第に現在のような五母音五〇音に変化した、整理された……っちゅう話やっちゃけど」


「それは間違いや、っち説が出て来てるんじゃないかちょらせんか?」

 雄治が突っ込む。

「そうそう。昔は母音八音説が定説やった。しかし最近、『元々の日本語にも母音は五音しかなくて、それを渡来人達が厳密に聞き分けて勝手に八音と解釈し、漢字を使い分けたんじゃないか』……っち説が広まっちょる。雄治の言う通りや。つまり大昔の書物が一冊も存在せん以上、実際のところは何も解らん。学者達が色々言うちょるだけやね」

「なるほど」


「で、その辺もよく解らんまま、万葉仮名の読み方なんかを魏志倭人伝の地名や人名に当てはめようとしちょる。しかし万葉仮名も、六世紀七世紀やろ!? おまけに、ある程度訓読みが混じり始めちょる。三世紀卑弥呼邪馬台国の時代の、魏朝の発音とは確実に別モノの筈やね」

「うん」


「それを魏志倭人伝の漢字表記に当てはめるのが、正しいっちゃろか!? オレは『ちゃんちゃら可笑しい』ち思うんやけど」

「なるほどね。結局、邪馬台国時代の魏朝の漢字の読みを把握するとか、当時の日本語を正確に掴もうって試み自体に、無理がある……と」

「そういうこと。学者達には悪ぃけど、どっちも無理やと思うし間違っちょると感じるわけよ」


 なるほどね。敬太郎君の言う通りじゃん。――


「で、問題の三つ目。魏朝の連中と、どこまで正確なコミュニケーションが取れていたか……っちゅう問題やね」

 ほうほう。なんか解かる気がする。

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