表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/155

それこそが日本の古代史におけるミステリーだ

 三日後、四人は無事、教育学のレポートを提出した。


 教育学は半分耄碌したようなおじーちゃん先生で、レポートの要求レベルは低いらしい。とにかく提出しさえすれば、単位は大丈夫だという噂。しかしあたしは三日間もの禁欲生活に耐えかねてイライラとムラムラが昂じ、つい、

「現代日本の学校教育は、愚民化・白痴化政策の一環である」

 なんてつらつら書き綴っちゃったから、ちょっとヤバいかもしれない。とほほほ。――


 四人は大学の近所のファミレスに集まり、通りに面した窓際の席で、ワンコインの日替わりランチを食べた。

 黒木敬太郎は、ランチのみでは炭水化物不足とみえて、卓上のボタンを押しライスを追加注文した。負けじと有村雄治も唐揚げプレートをオーダーする。ガチ文系の癖に、昼間っからガッツリ飯らしい。


 ひと通りお腹も満たされたところで、四人はドリンクバーに足を運び、飲み物を手にして席に戻った。

 空いたお皿をテーブルの片隅に積み上げ、スペースを確保すると、めいめいノートPCを広げる。


「これは、オレが去年まとめた資料なんだけどね。基礎知識の共有、ってことで……」

 黒木敬太郎が全員にレジュメを一部ずつ配る。

 レジュメは二〇ページもあった。敬太郎君、体調崩して受験に失敗したとはいえ、元々は某難関国立大学を狙っていた筈。そんな受験生が、どうしてこれだけの作業に時間を割けたのか。感心するやら呆れるやら。……


「いや、ネットで拾った情報を切り貼りしただけだよ」

 そう謙遜する彼のレジュメに目を通すと、魏志倭人伝及び邪馬台国に関する基礎知識が実に解り易くまとめられていた。


 魏志倭人伝。――

 正しくは「三国志」中の「魏書」第三〇巻、「東夷伝倭人条とういでんわじんのじょう」である。三国志の時代、つまり三世紀頃の日本の様子が詳しく書かれている。

 著者陳寿ちんじゅは、この倭人伝を書きたいがために三国志執筆に取り掛かった……と言われている程、並々ならぬモチベーションで執筆したらしい。字数は約二千字。

「たったそれだけか」

 と一瞬思ってしまうが、よくよく考えれば漢文の二千字だから、結構な情報量だと言える。


 三世紀頃の日本について、魏志倭人伝には、

「邪馬台国という女王国があり、倭の盟主として数十ヶ国を従えていた」

 と書かれている。しかし不思議なことに、この邪馬台国及び女王卑弥呼について、「古事記」はおろか正史「日本書紀」にも、全く記述がないのである。偽書扱いされている複数の古史古伝にも、同様に記述がない。


「それこそが、日本の古代史におけるミステリーだ」

 と、黒木敬太郎はレジュメにおいて述べる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ