あたしの見るところ、確率九割はカタいと思うよ
「暑いぃ~~っ。助けっくれぇ~~」
と電話の主……即ち「王子様」は言う。
「なになに!? どうしたの?」
あたしはみんなの視線を気にしつつ、雄治に質す。
「ほらほらほら。噂の王子様からの電話だよ」
と、スピーカーから漏れる声に聞き耳を立てていた智ちゃんが、他の四人に囁く。とほほほ、やっぱバレてんじゃん……(泣)
「部屋が暑くてかなわん。ロフトなんざ、サウナ状態じゃ~。助けっくれ~~」
「あ、まだエアコンが無いんだっけ?」
「じゃっど~。さすがに我慢出来んから、実家から持ってこようち思ちょるっちゃけど。一人じゃ無理やっで、知り合いに応援要請しまくったっじゃけんど全滅やった。誰も都合がつかん」
「それはご愁傷さま~♪」
「冷てえ事言うなよ~。力仕事やっで女の子に頼むとは気が引けるけんど、あとは紗耶香ぐらいしか頼めるアテが無えとよ。助けて紗耶香様ぁ~~」
「いやいや、あたしはちょっと……」
チラリと周囲の女子五人に視線を送った後、あたしはそう応える。
……と、智ちゃんがいきなりあたしの手から携帯を奪い取り、勝手に電話に出た。
「もしもし雄治君!? 紗耶香ちゃんはOKだって~。雄治君のためなら喜んで身を捧げます……って顔してるから大丈夫だよ~♪」
え~~っ!? ちょっとちょっと!!(焦)
「今のは、あたし達の目を気にして断っただけだからね。本音は違うから心配要らないよ。で、いつエアコン運ぶの? 明日? 明後日?」
「出来れば明日が良か。ダメなら明後日でも構わん」
「わかった~。お礼は雄治君の手料理で良いらしいよ。勿論お酒付きね。あたしからのアドバイスとしては、ワインがお勧めかな」
ちょっと……。なんでそんな、勝手に話を決めるのよ!!(滝汗)
「おうおう。んじゃ紗耶香に、何時に迎えに行けばいいか聞いてくれ」
智ちゃんが携帯を耳から離し、あたしの方を見る。
なになに!? 結局あたしは雄治の手伝いをしないといけないの?
まあ、成り行き上、仕方ないか。邪馬台国謎解き作業以外、特に予定も無いし。誰かが手伝ってあげないと可哀想だもんね。――
「それじゃあ……明日午後一時、月読ヶ丘の宮崎海南高校正門前で待ち合わせ、ってことで」
あたしの家から徒歩五分の、母校を待ち合わせ場所として智ちゃんに告げる。智ちゃんはあたしの携帯で、雄治にそれをそのまま伝える。
「んじゃそういうわけで、明日はふたりで頑張ってね。あと紗耶香ちゃんにはオフレコだけどさ、明日のチャンスを有効活用しなきゃダメだよ~。上手く紗耶香ちゃんをオトしてね。あたしの見るところ、確率九割はカタイと思うよ。頑張れ~♪」
いやいや。オフレコったって、全部聞こえてるってば。
四人がニヤニヤしながら、あたしの脇腹や太もも、足先を突き回す。智ちゃんは電話を切ると、ニッコリと小悪魔の微笑みをあたしに投げかけた。
もう、女子会なんて大嫌いだ~っ!!(爆泣)