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『生目』で確定じゃん

「江戸時代の学者は、『邪馬台』は『やまと』と読むべきじゃらせんどかい、と唱えちょったとよ。でも戦後の歴史学会では『やまたい』『やまいち』の、ほぼ二択っぽい」

 と、有村雄治が言う。


「へぇ~~。何でだろう……。邪馬台国論争って、なんか深そうだね」

 俄然興味が湧いてきた、と山元智美が言う。


 彼女はあたし達歴史研究会の副部長である。小柄でお嬢様っぽい雰囲気の可愛らしいコだが、あたしは知っている。智ちゃんはいわゆる腐女子かもしれない。先日コソコソとアヤシげな小説を読んでいたのを、あたしは確かに目撃したよ。――


「いずれにせよ……」

 紗耶香あたしが口を開く。

「『やまたい』ではなく『ぃやぅまとぅ』が正解らしいよ。それから卑弥呼様の住まいが、あたしんから北西に約七〇里の『いきめ』だってさ。あ、七〇里って何キロ位なの?」

「前に調べた情報だと、一里は八〇m弱って書いてあったよ。……ってことは五kmちょい、か」

 黒木敬太郎が、ささっと暗算し答える。


「すげ~~」

「『生目いきめ』で確定じゃん」

「そうそうそう、邪馬台国の長官の名前が『伊支馬』らしいとよね。これも読み方が議論になっちょるんやけど、呉音なら『いきめ』やっとよ」

「すげ~~!! 宮崎すっげ~。やっぱ宮崎が、畿内大和朝廷の本家じゃろ」

 さっきは半笑いだった有村雄治が、興奮しまくっている。


 こいつは体育会系でもない癖に、なぜか筋肉がゴツい。ミオスタチン欠損体質かよとツッコみたくなる。単なるずんぐりむっくり筋肉バカかと思いきや、時折妙に鋭いことを言うから得体が知れない。


「他に、卑弥呼様とどんな話をしたの?」

 と、山元智美。

「いや、そこまでしか聞き出せなかった。宮崎市の地図見せたら、この辺……って生目付近を指差したところで卑弥呼様が消えちゃった。出現時間は一〇分足らずってとこかな」

「そうか……。それはちょっと残念」


「でもさ、それだけでも衝撃情報じゃない? で、このネタを取っ掛かりにさあ、当面の研究テーマはこれにしようよ……って提案なんだけどさ」

「いいねえ」

 三人共すんなり同意する。


「よし。んじゃ次の、教育学のレポート提出が片付いたら、このネタに取り掛かろう」

 黒木敬太郎がそう言うと、皆即座に頷いた。

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