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また夕方五時に南宮崎駅集合……でよかやろか?

「お店も混んでるし、そろそろ戻ろうか」

 あたしと智ちゃんがコーヒーを飲み終わるのを見計らい、敬太郎君がそう促す。三人は席を立ち、会計を済ませて智ちゃんの車に乗り込んだ。


 片側一車線しかない万年渋滞の道路を、どうにか右折。雄治の新居へと向かう。空は晴れ間が随分と広がり、かなり蒸し暑くなってきた。


 アパートに着くと、三人がかりでスチールのラックを組み立てる。一〇分足らずで組み上がり、雄治に指示された位置に設置する。二本目の組み立ては少し部屋が狭くなった分手こずったが、まあどうにか上手くいった。これも指示通りの位置に設置する。


 敬太郎君は積み上がった段ボールを眺めつつ暫く考え込んでいたが、書籍の詰まった箱をラックの最下段に、そして日用品の箱をその一つ上の段に収めた。それから衣類の詰まった箱を全部、ラックの天板の上に置いた。

「うん。これで随分とスペースが空いたぞ」

 なるほど。さすが敬太郎君だわ。小技が利いてるね。――


 感心しているうちに、雄治が最後の荷物をお父さんの車に満載して戻ってきた。

 三人はすぐに、車から段ボールを引っ張り出し室内へ運び込む。

 智ちゃんは後部座席の布団を目にするや、室内に駆け込んでゴソゴソし始めた。何をしているのかと思えば、先程購入した雑巾を濡らして絞り、ロフトを掃除していた。そこへ雄治と敬太郎君が二人がかりで布団を担ぎ上げる。


 全ての作業が二〇分足らずで片付いた。

「いやぁ、マジで助かった。三人共ありがとう」

 雄治が頭を下げる。


 あたしは日用品を詰め込んだ段ボールの一つを開き、髭剃りを取り出すと雄治に手渡した。

「おおっ、探さんで済んだわ。ありがたい」

「ヘアースプレーなんかも、この箱に入ってるからね」

「了解」

 雄治は首にぶら下げたタオルで顔の汗を拭いつつ、頷いた。


「ほんじゃぁ一旦解散しっせ、また夕方五時に南宮崎駅集合……で良いよかやろか?」

「そうやなあ。智ちゃんが車やし、オレらもチャリで出直した方がいいね」


 雄治は急いで表へ出たかと思うと、自販機でお茶を買い、戻ってきた。三人に一本ずつ渡すと、さらに智ちゃんには、

「ガソリン代な」

 と千円札を折りたたんで握らせた。智ちゃんは遠慮したが、

「いや、オイは臨時収入があっせ今だけ金持ちやから、受け取っちょってくれ」

 と彼女のバッグのポケットに突っ込む。


 まあ、そんなこんなで三人は雄治のアパートを出て、智ちゃんの車で家に戻った。あたしの部屋の時計は、昼の三時過ぎを指していた。

 待ち合わせの時間まで、ちょっとハンパな感じ。

 どうしよう……と暫く思案したが、ふと思い付きPCの電源を入れ、あたしは魏志倭人伝を読み始めた。

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