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あれっ!? あたし達のクルマが無いよ!!

 卑弥呼様はあたしの手を、両手でしっかり握りしめた。

 あたしも卑弥呼様の手を、両手で握り返した。卑弥呼様の手に実体感はなかったが、しかし手のぬくもりを確かに感じた。


「他の三人は、それなる紗耶香を支えよ。良き国に立て直せ。そして中つ国せかいのあり方を変えよ」

 そう言うと卑弥呼様の姿は薄らぎ始め……消えた。


 四人が呆然とする中、不思議な事が起きた。空から射す光が周囲の泥を一気に乾かし、先程散々引っ掻き回した石棺付近がさらさらと砂で埋まった。あたし達が引っ掻き回した痕跡は見事に消えた。

 あたしと雄治の泥まみれの体も、一気に乾き、砂がはらはらと舞い落ちた。手で衣服を払うと大半が落ち、ほとんどキレイになった。


「よし、早く退散しよう」

 木に括り付けていたロープを外すと、智ちゃんを先頭に墳丘墓を下りる。


 その、あたし達の後ろから、光がピッタリ付いてきた。驚いて振り返ると、行きがけあたし達の刈った雑草が、光を浴び元のように茂っていた。雑木林と化した墳丘墓を下り小道に出ると、背後の雑草は完全に再生し侵入の痕跡は消滅した。


「あれっ!? あたし達のクルマが無いよ!!」

 智ちゃんが突然、声を上げた。

 路上に駐車していたクルマが、二台共無くなっているのである。


 四人は驚き、クルマを停めていた位置に駆け寄る。……と、何かにぶつかった。

「いや、在ることはあるぞ。でも見えん……」

「どうなってるの!?」

 慌てる中、空からの光が再びあたし達の頭上に降り注ぐ。すると突然、目の前にクルマが出現した。


「そうか……。卑弥呼様がクルマを見えないようにしてくれていたんだ」

「にゃるほど~。助かったよ~」

「そうやな。早く帰ろう」

 雄治は大きなビニール袋を多数取り出し、手早く二台のクルマの座席に被せた。その間あたしは車外に貼ったシールやナンバー偽装シールを外す。


 その時、急に空が光った。

 四人が上空を見上げると、遥か高いところに大きな光体が見えた。そこから光が、広く地上に降り注いでいた。それは奇しくも、前方後円墳の形に見えた。

 光体は、地上のあたし達に合図するかのように四度点滅すると、一瞬にして南の空へと飛び去った。


 こうして証拠隠滅ミッションは完了した。

 猛烈に疲れた……と思ったが全くの気のせいで、不思議と疲労感はない。あの光があたし達の疲労まで癒やしてくれたのか。


 無事帰宅し、あたしは改めて成功を噛み締めた。結局敬太郎君と智ちゃんも協力してくれて、人間関係に波風が立つこともなかった。本当に卑弥呼様の言葉通り、全てうまくいった。夕方、四人は再び雄治のアパートに集まり、成功を祝って乾杯した。


 テーブルには、四人の絆のあかしたる銅鏡が、並べられていた。グラスを傾けつつ、四人は銅鏡の重みを意識した。

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