危ねえっ!!
あたしは、
「ありがとう。助かったよ。卑弥呼様の墓は瓜生野墳丘墓で間違いないみたい。無事現地に着いたので、これから乗り込む」
と智ちゃんにメールを送った。
その間雄治は、トランクから二人分のシャベルと鎌、それに小道具類を詰めたリュックを取り出す。
……と、そこへ智ちゃんのクルマがやってきて隣に停車した。
「おおっ。二人共、ありがとう。結局来てくれたんやなあ……」
「ふたりのプランを見て、こういうケースを想定してたの。だから一応、近くで待機してたんだよ~。この程度ならあたし達にも手伝える、と思って」
智ちゃんと敬太郎君は、長袖Tシャツとジーンズ姿である。
「あれがパトカーやったらアウトやったけど、マジで助かったわ」
「うん。パトロールの車は雄治君のクルマを見失って、途中でUターンして引き返したよ~」
「良かった良かった。生目一号墳の方は全く荒らしちょらんから、全然大丈夫やと思う」
「おっしゃ、all OKや。……で、何であっち(生目一号墳)じゃなくて、こっち(瓜生野墳丘墓)が本命だと判ったの?」
「ん? ほら、あの光」
「へ!?」
あれれれ!? 敬太郎君と智ちゃんには、あの光が見えないの?
「いや、何も見えん」
「そっか……。雲の間から真っ直ぐ光が下りてきて、あそこに射してるのよ。それが生目一号墳から見えたから、急いでこっちに移動してきたの」
「なるほどな。何か卑弥呼様が教えてくれちょっとやろなあ」
「もう日の出が近いから、あたし達はこれからあの光の位置まで行ってみるよ」
「了解。俺と智美ちゃんはここで待機しちょるから、何かあったら呼んでくれ」
事ここに至れば、もはや躊躇っているわけにはいかない。あたしと雄治はリュックを背負いシャベルをベルトで体に括り付け、鎌を構えて気合一発、雑木林のような墳丘墓に突入する。
豪雨の後なのに、足元は意外としっかりしていた。雄治が前、あたしが後ろ。バッサバッサと鎌で雑草を刈りつつ、墳丘墓斜面を登る。
生目一号墳前では呆然となり侵入を躊躇ってしまったが、今は気合が入ったせいか、不思議と前へ進めた。
「案外、行けるな……」
「うん。頑張ろう」
ひたすら前進する。さっきまで寒くて震えていたのに、あっという間に暑くなって汗をかき始めた。一〇分ちょっとかかり、漸く光の射す位置の手前へと辿り着いた。
「良かった。多分まだ日の出前だよ」
空はまだ暗い。ギリギリ間に合ったか。――
ほっとしつつ、ポケットからハンカチを取り出そうとしたその途端、あたしはふいに足を滑らせてしまった。
足元の緩い場所があったらしい。おまけに豪雨続きでかなり泥濘んでいる。うっかりそこへ踏み込んでしまったっぽい。あたしはズルリと足を滑らせ転倒し、そのまま数メートル下までズルズルと落ちた。
「危ねえっ!!」
と咄嗟に手を伸ばした雄治も、巻き添えを食って一緒に滑り落ちた。