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いよいよ魏志倭人伝

 いやいや実にディープな話である。

(あたしは今まで何も知らないまま、『歴史好き』を自称していただけか……)

 紗耶香は大きな衝撃を受け、言葉を失った。ふうっ、と大きく溜息をつく。


「なんか、魏志倭人伝の話からちょっと逸れてしもたね。でもまあ、古代史を語るなら、まず避けて通れん話やっとよ」

 黒木敬太郎が言う。


「さて、本題に戻ろうか」

「ちょっと待ってちょっと待って。一旦休憩にしよう……」

 山元智美がそう言うと、立ち上がり、トイレに向かう。あたしも……と紗耶香もその後を追う。


 あははは。智ちゃん、随分ガマンしてたっぽい。

 ん? 何で分かるのか、って!? いやそれは乙女のヒミツだから詳しく明かせないけどさ(笑)。まあ、あれだけディープでショッキングな話題を畳み掛けられると、トイレどころじゃなくなっちゃうよね。


 個室から出てきて、

「間に合った……」

 とはにかみつつ笑みを浮かべるゆるふわ系お嬢様が、なんかスゴくカワイい。

 くぅっ。アタシが男だったら間違いなく、今この場で抱きしめてるわ。――


 二人はドリンクバーでお茶を注ぎ、テーブルに戻る。

 男二人は日教組の「教科書採択基準」とやらについて、アツく語っていた。あたしには何のことか、さっぱりわからない。後で調べてみようかな。


「雄治が引っ越しを控えちょって忙しいらしいから、ちょっとだけ魏志倭人伝に触れて、今日は締めようか」

 と黒木敬太郎が、テーブルに戻ったあたしと智ちゃんに言う。


「ん? 雄治、引っ越すの!?」

「おう。都城みやこんじょからの通学は大変やっで、親を口説いて宮崎市こっちに引っ越すことになった。梅雨に入っせ、山ン中で電車が停まる停まる(怒)」

 山間部で規定雨量を超えると、電車って安全確保のため運転を中断するらしい。エアコンも止められサウナ同然、いつ運転再開となるのかも不明。イライラしながら待たされることが頻繁にあるのだとか。


「あ、それはツラいね」

「時間と体力のロスも大きいふてとよね。最小限の仕送りだけもろて、足りん分はバイトで稼いで補っおぎのうたがマシじゃ……っち親を口説いたら、やっと納得してくれたわ」

 既にアパートも決まり、現在荷造り中らしい。


「まあ、そういうわけで、ちょろっと魏志倭人伝の解説をやりましょうかね……」

 黒木敬太郎は、自ら作成したレジュメを示しつつ、説明を始めた。


 改めて、魏志倭人伝。――

 著者陳寿が並々ならぬ熱意でもって書いた……と言われるだけあり、実に詳しく古代日本の事が記述されているらしい。

「次、どの方角に何里で、○○国に至る」

 といった具合に、朝鮮半島帯方郡から邪馬台国までの行程が詳細に記されている。つまり、それを辿れば邪馬台国の位置が判かる筈である。めでたしめでたし。


 ……とは、いかないらしい。

 何故なら、半島を出航して対馬、壱岐、と進み佐賀県辺りに上陸してから、行程がよく判らなくなるのである。

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