ヤベえ。多分自治体のパトロール車両や
その光はサーチライトかレーザービームのように、雲間から地上へと一直線に射していた。
「えっ!? あれ、何?」
あたしは雄治に指で合図する。雄治の位置からは一号墳に隠れて見えないらしく、こちらに駆け寄ってきた。
「う~ん……。瓜生野墳丘墓の方角じゃね?」
「なんか、それっぽいよね」
「卑弥呼様からのサインかンしれん。行ってみるぞ」
「了解。でもその前に、トイレ」
「おう。急げよ」
あたしは慌ててトイレに駆け込み、乙女にあるまじき物凄い勢い(恥)で用を済ませ、トータル二五秒(推定)で個室を出ると手を洗う。そして小走りで雄治のクルマへ戻る。
ところが、クルマまであと一〇mという所で、突然駐車場内にパトカーのような白黒ツートーン車両がゆっくり入ってきた。
「げっ。ヤバい!!」
クルマの傍らに立っていた雄治もそれに気付き、直ぐにドアを開け乗り込む。あたしもダッシュでクルマに駆け寄り、急いで乗り込んだ。雄治は素早くクルマのエンジンをかけ、あたしが乗り込むと同時にクルマをバックさせる。
「ヤベぇ。あれは警察のパトカーじゃねえけど、多分自治体のパトロール車両や」
シフトチェンジと同時に素早くクルマをターンさせ、アクセルを踏み込みタイヤをわずかに軋ませつつ発進。パトロール車両の脇をすり抜け駐車場を出る。
路上に出るとすぐ、後ろからパトロール車両が追ってきた。案の定、不審者と認識されたらしい。雄治はアクセルを踏み、制限速度オーバーペースで一本道を走る。ふたりの緊張が高まる。
「どげんすっか……。こんクルマやったら振り切ることは出来るけど、そうすっと完全に不審者認定や」
幸いパトロール車両は一本目の信号に引っかかってくれて、多少距離を稼げた。しかししばらくは一本道が続く。巻いて逃げることが出来ない。
穏便に逃げ切る方法はないか……と考えているうちに、突然どこからともなく一台のクルマが現れて、うまくこのクルマとパトロール車両の間に割り込んでくれた。ラッキー♪
ん!? あれっ!? 後ろのクルマって、智ちゃんじゃない?
「やった~。後ろは多分、智ちゃんのクルマだよ。援軍だ♪」
雄治は驚き、ミラーで背後を確認する。
「あ、ホントだ。敬太郎も乗っちょる」
バリチェロ智ちゃんのフェラーリ(笑)は、制限速度をちょっと下回る位でペースコントロールしつつ、後方のパトロール車両をさりげなく牽制する。雄治シューマッハは抜かりなく、この付近の道路を下調べ済みである。すかさずクルマを加速させリードを広げると、後方の二台が次の信号に引っかかったタイミングで素早く脇道へ逃げた。
「いける。逃げ切るっど」
雄治シューマッハはオーバースピードであちこち路地を迂回し、一〇分程適当に走り回った後、改めて瓜生野墳丘墓を目指した。
「良かった、助かった~。現地は全く荒らしちょらんし、ここを逃げ切れたら問題ねえ」
予定していた場所にクルマを停め、偽装ナンバーシールを剥がして別のシールに張り替えた。デカール類も全部剥がし、これもパンダシールに張り替えた。
時刻は六時数分前。日の出前二〇分、といったところである。
先程あちらで見た謎の光は正しく、この瓜生野墳丘墓の一角を真っ直ぐ射していた。