ん!? 正確な場所は判らないの?
三人寄れば文殊の知恵、と言うけれど、歴史研究会メンバーの四人が集まれば正に諺通りだね。昨晩の作戦会議はすっごく有意義だったと思う。
当日の服装は、迷彩柄のキャップとズボンに、黒の長袖Tシャツ。それから黒の軍手に登山靴……と決まった。念の為、普段着の着替えもクルマに乗せておく。
これまた念の為、シャベルと鎌、杖を持参する。他にもライトにメジャーにロープ、虫除けスプレーに虫刺されかゆみ止め。それらを入れる大きめのリュックに、シャベルや鎌を背中に括り付けるベルト。
スマートフォンも当然持参するが、現地で落としてしまうとアウトなので、長いストラップを準備し腰に付ける。それにクルマを覆い隠すためのカバーや、ライト付き腕時計やコンパスといった小物類。大小様々なサイズのビニール袋。タオルやウェットティッシュ。……
「古墳って結構大きいから、上空からじゃないと位置を確認出来ないんじゃない?」
とあたしが指摘したため、空撮とそのモニタリングが可能な小型のドローンを購入することになった。
昨晩のうちに四人で吟味し、それらのリストアップは終わっている。
ネットで全て購入すればラクだけど、足が付くかもしれない。なのでドローン以外は極力、地元のお店で調達することになった。ドローンだけならネット購入で足が付いたとしても、何かしら言い訳は立つよね。
あたしと雄治は無地Tシャツとジーンズという地味な格好で、まず近所のコンビニに行き、サングラスを購入した。ほら、なるべく顔がバレないようにしたいでしょ!?
それからホームセンターや職人の店等を回り、リストアップした品々を買い揃える。費用は勿論、宝くじ成金のあたしが全額負担。昼過ぎ三時頃までかかり、全ての品々を揃えることが出来た。
一旦雄治のアパートに戻ると、ネットでドローンを物色。手頃な物が見つかったので、早速注文をかける。
「まだ陽が落ちるまでに時間があっど」
と雄治が言うので、クルマで生目一号墳に向かう。
雄治のWi-FiルーターとノートPCを使い、Webマップを開いて、生目一号墳から瓜生野墳丘墓までのルートを確認する。
「多分、これやろち思うっちゃけど……」
雄治はWebマップを航空写真モードに切り替え、墳丘墓と思しき一点を指差す。
「ん!? 正確な場所は判らないの?」
「おう。日高祥氏の本を読んでン、ローカルな地名が色々使われちょっせ、地名では場所を特定出来んとよね」
「どういうこと?」
「この辺全体が、瓜生野ち呼よばれちょるらしい。で、本には『九電柏田変電所』の北側……っち書いちゃっとよ。じゃっどん、その後は大概、『笠置墳丘墓』ち記述されちょる。つまり瓜生野、柏田、笠置っちゅう三つの地名がゴチャゴチャに使われちょっせ、何が何やらさっぱイ場所が解らん」
「なにそれ~!!」
「こげんして航空写真を見ても、一面林ンごたるから、どれが墳丘墓かよく判らんとよ。かなり破壊されちょるらしいし、形で判別もつかん。変電所の西側にも、それらしい林が広がっちょる。つまり地名からも航空写真からも、墳丘墓ン場所が特定出来んとよ。日高氏はざっと測量もやっちょるらしいけど、本には図面も載っちょらん」
「うわ……。どうしよう。まあとにかく、暗くなる前に現地に行ってみようよ。行けば判るかもしれないし」