ふたり共それなりの覚悟をせんといかん
既に遅い時間だというのに、敬太郎君も智ちゃんも直ぐに駆けつけてくれた。あたし達は二人に、卑弥呼様の依頼を説明した。
「う~ん……」
敬太郎君が、渋い表情で腕を組んでいる。
やはりあたし達と敬太郎君達二人では、温度差があるのを感じた。
というか、むしろ雄治がすんなり同意してくれた事の方が、びっくりなんだけどね。
つまりあたしと雄治は、何度も卑弥呼様に直接会っているという点と、その卑弥呼様の言葉をどこまで信用できるか……ってところで、敬太郎君達とのギャップが発生してるんだろうね。これはもう、どうしようもないよ。――
「サークルの部長としては、断固反対と言うしかねえよなあ……。ホンネはともかく、建前上反対せんにゃならんし、表立って協力も出来んよ。下手すりゃ大学にも大きな迷惑がかかってしまうからなあ」
と、敬太郎君は言う。
「あたしもホンネはともかく、敬太郎君の判断に従う~」
と、智ちゃん。彼女もちょっとしたハイソ家庭の一人娘だから、慎重にならざるを得ないんだよね。うん、その辺の事情はあたしも重々承知してる。
「当日一応現地に付き合って貰って、問題があると判明した時点でふたりに撤退して貰う……ってのは、どう?」
雄治とふたりで検討したプランを、提案してみた。しかしあっさり、否定されてしまった。それすらもリスクがデカい、だってさ。
仕方ない。――
卑弥呼様の依頼通りにはいかないけれど、ひとまずあたしと雄治だけが当日、現地へ行くことになった。あたしと雄治はこの結果を想定していたので、敬太郎君達が来るまでに急遽準備した、本日付の退部届を預けた。敬太郎君は二通の退部届を、黙ってバッグに仕舞い込んだ。
「さて、まあ以上は建前であって、足が着かん形であれば協力は惜しまんよ。まず、生目一号墳やっちゃけど……」
と、敬太郎君が表情も口調も一変させつつ、語り始める。
「西都原の男狭穂塚女狭穂塚なんかは、柵が張り巡らされちょって近寄ることも出来んかったやろ!? あれはつまり、一切立入禁止っちゅう意思表示やね」
「うん」
「で、生目古墳群はどうか。どこにも柵は張られちょらんやろ!? 三号墳とか、復元されちょる五号墳に登っても、文句言われんやろ!? 一号墳にも柵は無え」
「うん」
「つまり、一号墳も上に登るだけやったら、おそらくセーフやね。侵入やちケチがついても、まあ言い逃れ出来る」
「なるほどね」
「ただし、古墳をちっとでん傷付けたらアウトやぞ。掘らんにゃならんような事態になれば、ふたり共それなりの覚悟をせんといかん」
「いや、その前にさ……」
と、智ちゃんが口を挟む。
「卑弥呼様の墓って、どれかハッキリ判明してるの? 生目一号墳なの!?」
あっ。……
それって、卑弥呼様に確認し忘れてるわ(呆)