まあ、オイも付き合うちゃるわ
なるほど。――
へのこ回収の必要性は解った。それがあたし個人にとっても重要だということも、よく解った。
しかし大丈夫なのか!? 埋葬されている物を回収するんだから、つまり墓荒らしになっちゃうよね。それって重罪じゃん。ましてやそれをあたし達が手がけるなんて、とんでもない話じゃん。
それが卑弥呼様の指示だから……なんて言い訳は、社会的に通用しないよね。犯罪は犯罪だよ。――
大体、あたしがやるのはまあ仕方ないとしても、雄治や敬太郎君や智ちゃんが協力してくれるとは思えないよ。
「いやいや心配は無用じゃ」
と、卑弥呼様は言う。
「とにかく七日後の日の出前、四人揃いて吾の墓へ行け。何の心配も要らぬ」
マジ!?
「吾はいわゆる霊体故、物に触れたり動かすことはかなわぬ。そこだけはそなた達にやってもらわねばならぬのじゃ。あ、ちゃんと礼も用意しておく。それからそなたに渡すべき物もある」
「本当に大丈夫ですか?」
「心配無用じゃ。とにかく他の二人にも伝え、絶対に四人揃いて吾の墓へ向かえ。行けば全て判るし、全て上手くゆく」
う~ん。……
「おおっ、時間がない。では頼んだぞ。男よ、そなたにも頼んだぞ。おなごを支えよ」
と言つつ卑弥呼様の姿が薄らぎ始め……消滅した。
ふたりは呆然とした。
しばらく押し黙ったままぼ~っとしていたが、突如スピーカーからブル三終楽章の金管強奏が流れ、我に返る。
雄治はリモコンを操作し音楽のボリュームをぐっと下げ、それから氷が完全に溶け薄まった焼酎を、一気に飲み干した。
「う~む……。心配要らんっちゅうことは、墓荒らしはやらんで済むっちゃろか。いや、それとも俺達が墓を掘った後、証拠隠滅してくれるんか……」
「卑弥呼様は霊体だから、物には触れられないんでしょ!? ってことは、墓を荒らした証拠隠滅なんかは出来ないよね」
「あ、そうだそうだ。……っちゅうことは、墓荒らしはせんで済むんやろな。それか、関わった人間の記憶を消すとか、どげんかして『無かったこと』にしてくれるんやろか」
「わかんない……。でもとにかく、あたしは言われた通り七日後に行ってみる」
雄治は大きな溜息をつき、腕を組んで考え込む。そしてすぐに、
「まあ、俺も付き合うちゃるわ。卑弥呼様の話を信じるっちゅうことで」
「ありがとう」
「まさか自分の彼女を、一生恥さらしにするわけにもいかんやろからなあ……」
雄治はそういうと、おもむろにテーブル上のスマートフォンを手に取り、敬太郎君に電話をかけ始めた。