それが皆にバレては、諸々非常に困る
「吾は幸か不幸か、長う生きた。三十路前にして神通力も衰え始めた。四十路ともなると、もはや出涸らし状態じゃ」
卑弥呼様は、悲しげに語る。
「齢三〇で既に限界を覚え、周囲には隠遁を言い渡した。されどそれが許される状況ではなかった。神の御意志に従い豊葦原瑞穂国を再建すべく、天孫日御子全てが全力で事にあたっておったからのう……。皆、吾の強靭な神通力を頼み、最期まで隠遁を阻みおったわ」
「そうだったんですね……」
「『八慎』と言うて、すめらみことには厳格な掟があっての。地に伏して泣きつつも自らの役目を全うせよ、と宿命付けられておるのじゃ。吾は既に、すめらみこととしてとうが立っておったが、何とか精神集中し出涸らしの神通力をかき集めつつ務めた。……へのこは正に、それがための道具じゃの。すけべい目的ではない」
「なるほど。紗耶香のように、性感を高めっせトランス状態にもっていったとですね」
雄治が頷く。あたしは赤くなる。
「そうじゃ。それを知ってか知らずか垂仁天皇の阿呆が、吾の愛用品として墓に副葬しおったのじゃよ」
「なるほど」
「それが皆にバレては、諸々非常に困る。この先、悪しき連中にへのこを掘り当てられてみよ。そなた達の言う……科学調査か。もし科学調査とやらでへのこの用途がバレてしもうたら、天孫日御子の尊厳は失墜する」
へ!? 自分の恥ずかしいヒミツがバレちゃうのが、イヤなだけでしょ?(笑)
「阿呆っ。それだけではないわ!!」
卑弥呼様は語気鋭く否定する。
「吾れら天孫日御子は、この乱れに乱れた中つ国を立て直す役目を負うておる。そのためにはまずこの国を、神の御意志に沿うた、世界に範たる国家として再建せねばならぬ。それを主導するすめらみことの祖が、へのこなんぞを使うておったとバレたら権威失墜ではないか」
「あ、なるほど……」
「そなたとて、困るはずであろうぞ。吾の血筋たるそなたも、実はアレをして吾を呼び下ろした……と衆生に悟られても良いのか!?」
「え~っ!? それは困ります」
あたしは再び赤くなる。
いや確かに、その可能性があるわ。そんなの世間にバレたら、あたしはもう二度と他人様の前に出られないよ(滝汗) 一生引ききこもり生活確定だよ。――
「そうじゃろそうじゃろ」
卑弥呼様は頷く。雄治もニヤニヤとあたしの顔を覗き込んだ後、頷く。
「神無月直前故、吾はこれより七日間、天界高天原に赴いて不在じゃ。その後またここへ戻る。よって今から七日後の日の出前、そなた達四人で吾の墓へ向かえ。埋葬されたへのこ四本を回収し処分してくれ」
え~~っ!?……