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みんな、ごめ~ん

(うわ~っ。やっちゃったよ……)

 恥ずかしくて、一瞬で顔が紅潮。でも即座に立ち上がり、手早くロングスカートのホコリをはらって所定の位置まで歩く。


 ステージ下の観客はまだざわついており、中には笑っている人もいた。あたしは赤い顔のまま、咄嗟に照れ隠しで、

「バンっ!!」

 と、ピストルを撃つ真似をした。ドっと観客が沸いた。あたしはダメ押しで、さっとスカートのスリットに手を入れ、内腿からナイフを抜き取って観客席に投げつける真似をした。またもやステージ下から、ドっと歓声が上がった。


 他の出場者と並び、定められた位置に立つ。

 観客はもはや、あたしの方ばかり見ている気がする。すっごく恥ずかしくて、あたしは赤い顔のままうつむく。テレビカメラもあたしばかりアップで映している気がする。もう、終わっちゃってるよね(号泣)


 MCによる紹介が終わると、あたし達出場者は一斉にお辞儀し、ステージ袖に下がって控室に戻る。

「終わっちゃったわ。みんな、ごめ~ん」

 あたしは半ベソでプロジェクトチームの三人に詫びた。


「いやいやいや。ミスコンの神様が下りてきたよ。紗耶香ちゃんに追い風が吹いてるって」

 智ちゃんが嬉しそうに言う。どういうこと!?


「このミスコンは、プロジェクターすら無いわけ。だから観客からは、顔なんてほとんど見えないのね。つまりスタイルとファッション勝負なのよ。ボンキュッボンで足の長い、紗耶香ちゃん向きでしょ!?」

 智ちゃんはあたし達に、他の出場者に聞こえないよう小声で説明する。


「それとステージ上での所作ね。さっきの紗耶香ちゃんみたいに、堂々と振る舞うとカッコいい。あとそれを踏まえて、結局目立った者勝ちかな……ってあたしは分析してるの~」

「ふ~ん……。なるほど」


「となると、さっきのハプニングは多分、プラスに働いてるよ。おまけにその後の、紗耶香ちゃんのアクションがすっごく良かったの~。だから観客は、もう完全に紗耶香ちゃんばっか見てるし」

 智ちゃん曰く、あたしが髪をなびかせナイフを投げるアクションが、凄くシャープでカッコ良かったらしい。それでいて、恥じらい、うつむき加減で立っているというギャップが観客の心を鷲掴みにした……らしい。


 そうか。――

 考えようによっては、逆境がチャンスと化したのか。ドジった本人的にはまるで実感がないんだけど。


 智ちゃんはゆっこに目配せし、ゆっこは素早くあたしのメイクに手を入れ始めた。なんかスマートフォンケースの立体デコみたいなシールを、幾つかあたしの顔に貼り付ける。

(ん!? 何これ?)

 インド人、っていうか南方系の人っぽい雰囲気の謎メイクに変貌。ちょっと卑弥呼様っぽい感じがしないでもない。

 他の出場者達もあたしの謎メイクに気付き、怪訝そうな目で見てるじゃん。――


「さあ、そろそろ次の出番だよ」

 智ちゃんに促された。あたしは質疑応答カンペにざっと目を通し直すと、ステージ袖へと移動し出番に備えた。

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