雄治に丸投げしよ~っと♪
「ほう。紗耶香君は、ホームページ(Webサイト)を作れるっちゃね」
紗耶香君はスゴいな、と県史編さん室の松原先生が声を上げた。
「いえ、それがですね。今じゃそんなに難しい話でもないんですよ。Webサイトを構築するスペースは、無料でレンタル出来るんです。それからサイト構築のためのツールも、最近は無料で手に入るんです。ツールを使えばサイト構築はシロートでも出来ますね」
「ほ~~っ。そうやっちゃ……」
「サイトデザインのテンプレートも、無料で大量に転がっています。だから三〇分もあれば、一応のWebサイトらしきものは作れるんですよ。あとは原稿と、それに写真素材などが必要ですね。それらが揃えばページを簡単に増やせます」
「なるほど」
「初心者でも出来るんです。良い時代ですよ。あたし達シロートでも世界に向けて情報発信出来るんですから。ただしそれを広めるのが、すっごく難しいんですけどね」
そうなんだ、と松原先生は感心し頷く。
先生は高校の歴史教諭だったらしい。五〇歳を過ぎて普通科高校の勤務が体力的に辛くなり、県史編さん室に移動してきたんだとか。
雄治と遺跡巡りをする少し前から、あたしは県史編さん室で雑用のバイトを始めた。
バイト応募の電話を入れ、すぐに履歴書を提出し面接を受けた。松原先生から五分ばかしいろいろ質問され、あっさり採用が決まった。
勤務しているのは室長である県の職員さんと、松原先生のような教諭上がりのおじさん先生三人。それにパートのおばちゃん二人。
みんな、若いあたしに親切にしてくれて、すっごく働き易い。作業内容も比較的簡単な書類整理や、倉庫整理。それからたまに、県内の史跡や博物館へ届け物をしたり、助っ人として雑用をこなす。
大した仕事はしていないのに、結構重宝され可愛がられている。ホント良いバイトを見つけたよ。――
休憩時間にみんなでお茶を飲みつつ、Webサイト構築の話になった。あたしが大学のサークルのメンバーと一緒に、魏志倭人伝謎解きを手がけてWebサイトにリポートを掲載していると話すと、先生方が食い付いてきた……というわけ。
「私らおじさん達は、インターネットなんて全然分からんからなあ。県史のページなんか全部業者任せやっとよ。金がかかるから、予算の関係で思うように更新出来んとよね」
「なるほど……。そうでしょうね」
「紗耶香君がそういう技術を持っちょるんやったら、我々独自の情報発信を検討しようかな。紗耶香君は、作業を請け負ってくれるか?」
「いいですよ」
松原先生はニコニコと頷き、立ち上がって室長に相談しに行った。暫くして戻って来ると、
「ページ作成は自宅持ち帰り作業。更新頻度は月に三ページ程度で、一ページあたり二五〇〇円でどうかな」
と条件を提示された。あたしは二つ返事でOKした。
いや、あたしは先日宝くじが当たったから、正直お金には困ってないんだよね。
それより仕送りの少ない雄治が、お金に困ってる筈。だから雄治に丸投げしよ~っと♪(笑)