あたしが世直しを担う……って!?
「ご先祖様は、度重なる天災により世界を導く力を失い、豊葦原瑞穂国の平定のみを担うことを選択した。それ故神武天皇は、高千穂宮を離れ豊葦原瑞穂国の真ん中へ本拠地を移した」
「なるほど……」
「吾れ達本家ぃやぅまとぅは、それを長年後押ししつつ頑張った。しかし一筋縄ではいかず、国は大いに乱れての。故にそれを立て直す者として、吾は『すめらみこと』に選ばれたのじゃよ。神の御意志を聞け、神の御意志に従い国を再建せよ……と。それが吾と、弟崇神天皇に天より与えられた役目じゃった」
あたしと雄治は頷く。
宮崎こそが「本家やまと」だと知った上で、魏志倭人伝を読み西都原考古博物館を見学すると、自然とその構図が見えてくるのである。
卑弥呼様の言葉によって、その推測が裏付けられた形である。
「今またこの国は、大いに乱れておるようじゃのう……」
卑弥呼様は、溜息をついた。
「誰も、『しらす者』の発する声を聞かぬ。『しらす者』の信任を得ずして、人の倫も世の理も知らぬ者、心得あらざる者が世をうしはく(統治する)。大いに乱れて当然じゃの。今こそ世の立て直しが必要じゃ」
「同感です」
雄治が大きく頷く。
「女よ。……紗耶香と申したか」
卑弥呼様は、あたしに視線を転じた。
「大いに、励め。そなたが日御子の血をひく者として、世直しを担う時が、来るやもしれぬ」
「ええ~っ!?」
卑弥呼様はあたしに微笑みかけた。そして次第にその姿が薄らぎ……消えた。
あたしはパ○ツ丸出しのまま、呆然とした。
(あたしが世直しを担う……って!?)
「紗耶香、すげえじゃん」
呆然とするあたしに、雄治が声をかける。
「現代の天皇は戦後、政治に関われんようになっちょる。憲法でそげん定まっちょるからな。だから天皇の代わりに、いずれ紗耶香が世直しを担え……っちゅう事やろ。紗耶香のそン能力が、戦後日本の腐り切った社会の改革に必要や、っちゅうわけや」
「はぁ……」
そうなったら責任重大じゃん。ただただ、溜息しか出ない。酔いは完全に覚めた。
「卑弥呼様を降臨させっせ、会話が出来る。それは完全に、遺伝的な特殊能力や。紗耶香はそイを持っちょる。フツーの連中とは違って、特別な役割を担うべくして生まれた……っちゅう事だ」
とほほほ。アタマが痛くなってきたよ(涙目)