宮崎って、そういう意味でも後進県なのか
「つまり学者先生方は、歴史を素直に眺めていない……ってこと!?」
「うん。俺はそげん感じる。確かに古代日向の歴史は、何か事情があっせ抹消された形跡がある。じゃっどん、素直に眺めりゃ謎は解けるやないかっち感じるっちゃけど」
「だよねえ……」
「学者ン仕事のやり方にも、ちと疑問がある。多くの学者は学会誌しか読んじょらんとやないやろか。そイと高名な学者の著書と」
「どういうこと!?」
「つまり宮崎の膨大な発掘調査報告やら、まともに読まれちょらんのかも。ましてやアマチュア研究家の指摘やら、歯牙にもかけちょらんごたる。アンテナの張り方が足らん」
「へぇ~~」
「学者ン誰かが宮崎の古代史に興味を持っせ、膨大な調査報告を徹底分析して論文を書く。で、学会誌に寄稿しまくる。そこまでやらんと、アカデミズムの認識は変わらんとじゃねえやろか!?」
「……」
「そイをやる、熱意ある学者がこれまで宮崎におらんかったっじゃろなあ」
「そこが不思議なんだけど~」
「宮崎にはそもそも大学が少ねえし、史学科も無え。つまり般教ン歴史学のコマが幾つかあるだけやから、学者稼業が成り立たん。喜んで宮崎に赴任すっとは、やる気の足りん、国立大学退官のセミリタイア組ばっかやろ!? 宮崎にじっくり腰を据え、熱意を持って古代史を徹底研究しようち人がおらんとじゃねえやろか。そげなマイナスもありゃせんどかい……っち俺は想像しちょる」
なるほど。――
あたしはガッコに在籍する、沢山のおじいちゃん先生方の顔を思い浮かべた。
確かに東京や京都辺りだと、有名大学の教授職を務めつつ、あまたある私立大学なんかの講師を兼任したり出来るよね。意欲ある若手だって、講師の口が沢山あるだろうし。単価は安くてもあちこち兼任出来れば、何とか食っていける。
ところが我がど田舎宮崎だと、大学自体が少ないからホント職がないわけよ。若手研究者にとっては全く魅力がない土地のか。……
宮崎って、そういう意味でも後進県なのかも。今までそんな事、考えもしなかったけど。――
クルマは漸く、宮崎市街地に入った。
雄治のアパートそばの、コンビニ駐車場で下ろしてもらった。あたしは店内でビールを二本買うと、雄治に渡し、そこでふたりは散会した。
時刻は夜の八時前。すっかり暗くなっていた。あたしは一kmちょっと歩き、自宅に戻った。
二泊三日でかかった費用は一人二万円弱。ホントに貴重な体験が出来たと思う。無事オトナのオンナにもなれたしね(笑)
ゆっくり入浴し食事を済ませ、あたしは自室のベッドに横たわるとそのまま爆睡した。