見えた道筋
それからしばらく経って、もう辺りはすっかり暗くなっている。街灯の灯りが揺れる中、俺達は道を歩いていた。これからどうしたものか。
もう夜だし、とりあえず寝床が必要だな。宿屋でも探してみよう。だが、その前にレニアちゃんの様子を見に行こう。少し、落ち着けているだろうか。
この世界の一日は長いようだ。
有り得ない量の出来事が起きた。24時間では到底こなすことはできまい。
……だとしても、今日は濃すぎる1日だった。
少し、疲れたな……
「リリアさん、宿屋を探す前にレニアちゃんの様子を見に行きましょう。」
「そうね。それに、ギルドに行けば冒険者登録ができるわ。今は登録しても意味ないかもしれないけど、いつかきっと役に立つわ。」
冒険者…か……『扉』のない俺にそんな資格いるのか?
だが、俺なんかよりこの世界をよく理解している人の言うことだ。大人しく従っていよう。
ギルドはすぐ近くにあった。俺達は中へ入りレニアちゃんを呼び出した。
「レニアちゃん、大丈夫だった?」
「……うん。ありがとう。お兄ちゃん、お姉ちゃん。」
……まだ、レニアちゃんは落ち着けていないようだった。少し前まで泣いていたらしい。
瞼が赤く腫れている。その姿は弱々しく、胸が締め付けられた。それはリリアさんも同じだ。辛そうな顔をしている。
この子を、一刻も早く救い出そう。この絶望から。
「ギルドの人達は、優しくしてくれる?」
コクッ
少女は静かに頷いた。
ギルド役員曰く、初めはずっと怯えていて近ずいてすらくれなかったので大変だったという。
「……そうですか。」
しばらく会話をしたのち、俺達はギルドを後にした。
「レニアちゃんに……笑顔になって欲しいです。」
「…………そうね。」
「じゃあ、宿屋に行きましょう。」
俺達は、大通りから少し離れた宿屋へと向かった。
「結構立派な宿屋ですね。」
「この国は栄えてるから、あんまりボロボロな所はないのよ。じゃあ、入りましょうか。」
「はい」
そこに入ると、一階には酒場が広がっていた。
客もそこそこ入っているようだ。冒険者や商人で賑わっている。
「一部屋」
一部屋?
そう言い案内されたのは少し広めの部屋、ベッドは2つあるようだ。装飾は少なく質素だが、
安かったし当然だろう。
「今日はここに泊まるわよ。」
「は、はい」
どうやら俺はリリアさんと同室に泊まるようだ。
リリアさんはささっと荷物を片付け、端にあった個室に入り着替えた。俺も荷物を下ろし座った。
「さ、ご飯を食べましょうか。1階に行くわよ」
「はい」
そう言ってリリアさんは部屋を出た。俺も続いて部屋をでる。1回に降りると、そこは先程の賑わっていた場所とは別の場所のように静かだった。
端の方で呑んでいる男達がチラホラと言った程度だ。そんな中、俺達はカウンター席に座り料理を待った。
「ねぇ。カナタは男達が今どこにいると思う?」
「正直、検討がつきません。どこかにアジトを構えているのか、それとも商人について行き別の街へと向かったのか。」
「そうよね。私も同じだわ。検討がつかない。でも、早く、早くあの子を助け出さないと。」
「同感です。これからもあらゆる場所を調べ尽くしてすぐに見つけ出しましょう。」
などと話していると料理が来た。肉料理とナンのようなもの。
俺達が食べ始めると、横からヒゲが生え放題の小柄な男と長身の男の会話が聞こえてきた。
「でよォ、そいつはどうなったんだ」
「殺した。今朝な。」
あまりに唐突な話。
思わず驚いてしまった
「なっ!?」
隣でリリアさんも絶句している。すると男達がこちらを向いた。
こいつらはもしかしたら俺達の探している男達の仲間かもしれない!バレたらまずい!
「なっ…なんて美味しいんだこの店の料理は!」
「わっ!私も驚いちゃった!すっごく美味しい!」
バレるか……?演技が下手すぎる!
「はぁ……でよォ」
良かった!バレずに済んだ!
俺は小さい声で耳打ちした。
「リリアさん、奴らかもしれません!」
「私もそう思うわ!このまましばらく聞いていましょう!」
「でよォ、その殺した女はどうしたんだァ?」
「そのままだよ。あのガキがどう反応するかと思ってな」
「でもよォ?あのガキは森に向かわせただろォ?アイツ森の中で死んでんじゃねェかァ?」
「それはないと思うぜ。あそこは冒険者も多い。助けられてる可能性が高い。」
「そういやあのガキの名前ナンだったかなァ?」
「さぁ?もう忘れちまったよンなもん」
はらわたが煮えくり返りそうだ。許せない。なんなんだあいつらは……!
隣でリリアさんも震えている。怒りが抑えられそうにない。だが、今は我慢してくれリリアさん!
「もう本部には言ったのかよォ」
「まださ。これから行くとこ。ところで、他の奴らは上手くやってるか?」
「あァ、ちゃァんとやってるよ。」
「そうか。じゃあそろそろ帰るか。」
「にしてもこんなうめぇ料理出すとこが近くにあるたァ嬉しいねェ。」
「行くぞ。」
「ヘイヘイ」
ガチャン
「リリアさん、聞きました?」
「ええ。奴らで間違いないでしょうね。それに、アジトがこの近くにあるわね…!」
「それに多数居るようです。しばらくこの付近を調べましょう。」
「それに、【本部】というのも気になります。」
「そうね。やっと光が見えてきたことだし、ここから少し慎重に行きましょ。」
「ごちそうさま。じゃあ、上に行ってちょっと会議しましょうか。」
「はい!」
まさか1日目にしてここまで大きい情報を手に入れることが出来るとは思わなかったが、早いに越したことはないし、すごく大きい進歩だ。一刻も早くあの子を助けてあげよう。
あいつらは絶対に許さない!