第13話・遺体の行き先
私たちはタモツさんの家の前でずっと話し込みそうになったので、個室のあるカフェに場所を移動した。その前にゴミを捨てるため、ランは廃棄所へ寄ると言い出した。ランは市街地とは反対方向に車を走らせ、郊外にある廃棄処分所へ向かった。タモツさんの家から一〇分も走れば廃棄処分所にたどり着いた。敷地内に車を乗り入れると、
事務所として扱っているであろう建物から作業服を着た男性が出てくる。髪はボサボサで剃髪しておらず、ヒゲも濃い。目も落ちくぼんでおり、あまりいい生活をしているとは思えなかった。
「よお、ランさん。お仕事を届けに来てくれたのかい?」
「ええ、仕事よケンゴ。このトランクにあるゴミ、処分しておいてくれない?」
「お安い御用だ」
ケンゴはすぐ事務所に戻り、荷台を運び出してきたので、トランクに積んであったゴミ袋をどんどん移動させた。作業が終わるとケンゴがポケットから請求書を取り出し、ランはそれにサインを行い取引は滞りなく終了した。
「それで、ランさん。隣にいるお嬢さんは?」
「ああ、この子。新しいパートナーよ」
「ついに見つかったんですね、良かったじゃないですか」
「仕事は今日がはじめてだけどね」
「そうですか~ それよりランさん、最近あの依頼が減っていませんか? 前までは一週間に一回はあったのに、今は月二回あればいいほうじゃないですか」
「そう簡単に仕事増えても、あんた困るでしょ?」
「別に困りはしませんよ。こんなしがない廃棄所、ランさんみたいな依頼者がいないとやってらんないですよ」
「……そう。そんなに仕事が欲しいなら、一応この子に期待しておけば?」
ランは私の肩を叩くも、勝手に何かを期待されても困ってしまう。そんなことはお構いなしに、ケンゴはズイと私の前に出てきて、手を握ってくる。
「そうか~ じゃあ君には期待しておこうかなあ。俺は宮本ケンゴだ。あんた、名前は?」
「あっ、私は……。サクラです」
「サクラさんね、オッケーだよ」
お互いの挨拶が終わると、ランがすぐに今日は帰るわ、と言って車に乗り込み始める。私は軽く会釈だけして、彼の前から立ち去って助手席に座った。
「もう、変な紹介しないでよ」
「ごめんなさい、どうせ彼のことも紹介しておきたいとは思ってたから」
私は走り出す車から、彼のいた事務所のほうを見てみる。彼は憎みきれない笑顔でこちらに手を振っていた。
「なんか、つかみどころのない人よね」
「そう? 割とはっきりしてるわよ。お金のためなら何でもするって点に関して言えば」
ランが私にちゃんと紹介しておきたい人物。ということは、おそらく自殺ほう助についても何かしら関与しているのだろうか。私は思い切って、彼が自殺ほう助について何か知っているのか聞いてみた。
「そうよ。彼は私のやっていることを知っているし、今日見たいに早めに処分したいゴミを片付けてくれるわ」
「たしかに、部屋が荒れてるパターンは多そう」
「そうね。まあ、ケンゴに依頼するのは、それ以外もあるんだけれど」
ランはそこで言葉を切り、それ以上は話すのを止めてしまった。
「なによ、私だって自殺ほう助について知っちゃった人間なんだから。後だしなんてしないで、重要なことははなしておいてよ」
私の言葉を聞いても、ランはしばらく口を真一文字にした。だが、このまま話してもらえないのも気持ちが悪い。私は駄々をこねる子供のように、ケンゴの情報をねだった。
「あんた、この話聞いてもすねないでよ」
「子供じゃないんだから。もうちょっと信頼してよ」
ランは私の願いを聞き入れ、やっと口を開き始めた。しかし、彼女が話したことの意味が、しばらく理解できなかった。
「自殺が成立して遺体が出たとき、処分は彼に任せてあるの」




