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闇夜の世界と消滅者  作者: 三浦涼桜
第一章 黒き鬼の再臨
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八話 剣技決闘(デュエル)開始! 前編

戦闘シーン難しすぎてどうしても文字数が増える・・・

この部分は三分割で投稿する予定です

 相対するゲートの前に立っている相手を見つめ、二人は言い放つ。

「せいぜい楽しませてくださいね」

「それはこっちのセリフだ」

 試合開始のコングが鳴る。

 学園最強と噂の最強剣士の戦いの火ぶたを切った。


「打ち鳴らせ、『リゼール』!」


 そう叫んだ直後、イルディーナの前に雷が落ちた。

 その中心地点には一本の剣が突き刺さっている。

 イルディーナがそれを引き抜く。

 

 それは、人の心を惹きつけるほど美しく、また同時に一目見てかなりの業物であることがわかるほどの剣だった。

 戀が呆れ混じりに言う。

「ふぅん。あんたの得物は片手直剣か……細いことを鑑みるにスピードに特化した武器だな。しかし随分と派手な演出だな…………」


 一目見て自分の武器の特徴を当ててくることに感心しながら、戀に言葉を返す。

「これも一種のパフォーマンスです。あなたも得物を出したらどうです?」

「それもそうだな。じゃあお言葉に甘えて…………」

 そう言って戀は手を前に突き出し、静かな口調で唱える。



「全てを引き裂け、『殺鬼』」



「ッッッ!?」

 戀が得物を呼んだ直後、イルディーナは異常なほどの魔力の嵐に見舞われた。

 いや、イルディーナだけではない。防御障壁が展開されているにも関わらず、周りの観客たちにまで被害が及んでいた。

「キャアアア!」「なんだよこれ!?」「すごい……こんなもの、Sランク魔導士でも無理な芸当だぞ!」


「なんという魔力の奔流!!観客席よりも上に位置する実況席にさえ魔力の嵐が直撃しています!!」

 実況席にいる天塚が立ち上がって吠える。

 

 それほどまでに圧倒されるものなのだ。

(これほどの魔力量………本当に人間ですか!?)

 イルディーナは驚きを隠せない。

 こんなもの、おそらく一生かかっても見られるものではない。


 そしてイルディーナは気が付いた。

 戀の手に黒い炎がまとわりついてることに。

「それはいったいーー」

 なに? と、聞く前に戀が腕を振り払う。

 再び衝撃。


 再度目を閉じ、そしてもう一度開いたとき、イルディーナは戀の右手をみて目を見開く。

 

 戀が右手に握っていたのは、刀だった。

 否、ただの刀ではない。

 真っ黒な刀身。

 イルディーナの『リゼール』とは違い、全くの飾り気がないものだが、その透き通るような黒い刀に、人々は目を奪われる。


「さて、始めようか」

 そう言って戀が構える。

 東洋剣術では基本の構え、居合だ。

 居合切りは、さやからの抜刀で相手を切り伏せる最速の一撃である。

 それに今しがた見た魔力の嵐。


 あの魔力で身体強化をされたら、確実にスピードで押し負ける。

(なら、それを利用するまでですっ)

 スピードで一撃を決めてくるのであれば、確実にまっすぐに突っ込んでくるだろう。

 ならその直線上にいなければ一発KOは回避できるはずだ。


 そう確信して、イルディーナは中段突きの構えをとる。

 こちらも居合切り同様、最速の一撃を放つのにとる構えだ。

 そしてこの構えは、イルディーナが本気で相手を叩き潰すために使う構えでもある。


 これを見た観客たちは期待を寄せる。

 彼らも確信したのだろう。

 --この転入生は、この学園最強の生徒会長と互角に渡り合える実力者なのだと。

 構えをとって一分近くの時間が経った。

 

 沈黙を破ったのは戀だった。

 刀が垂直に走る。

 イルディーナはこれをギリギリの間合いで回避する。イルディーナは先ほどまで自分が立っていた場所を見て唖然とした。

 

 そこには自分の立ち位置どころかリングを通り越して観客席まで傷跡がついていた。

 いったいどれほどの速度と腕力を持っていればこれほどの斬撃を放てるのだろうか。

 イルディーナは即座に態勢を立て直し、戀に向き直る。

「星の神秘たる力よ 我に力を貸して給う

 彼のものを地に縛り付けろ

 重力倍加(グラビィティ)!」


 イルディーナは真っ先に戀の体を縛り上げることにした。

 重力魔法重力倍加(グラビティ)。その名の通り相手の体にかかる重力を2~5倍に引き上げる魔法である。

 戀の体を縛り、イルディーナは『リゼール』を構えて突進する。

 リゼールは片手剣ではあるが、その細さゆえに突き技を放てばレイピアに勝るとも劣らない速度と膂力を得ることができる。

 さらにイルディーナは身体強化だけではなくリゼールの特徴である雷属性を利用し、神経伝達率を人間の2.5倍にまで引き上げている。

 

 この時点でイルディーナの突進速度は軽く音速を超えている。

 常人では到底逃れることのできない一撃。

 しかし戀は特に問題もないように軽々と躱す。

 傍から見れば、勝負に出たイルディーナがいなされた形になる。


 ………傍から見ればの話だが。

「罠に掛かりましたねっ」

「っーー!?」


 戀が足元を見る。

 そこには不可思議な紋様、魔法陣が浮かび上がっていた。

 それを見た戀の顔色が変わる。

 即座にその場を離れようとしたが……………もう遅い。


生者を戒める怨嗟の鎖リスティック・バインド!!」

 魔法陣から青白く白光するいくつもの鎖が戀の体に巻きつき、蝕む。

生者を戒める怨嗟の鎖リスティック・バインドは私が生み出した中級魔法ギガノクラス固有魔法オリジナルです。そう簡単に破ることなどできません!」


 この世界では魔法をランク化して使っている。

 無詠唱で瞬時に発動できる低級魔法レイクラスと、詠唱を伴う中級魔法ギガノクラス、詠唱時間が長く、魔力の消費が非常に大きい上級魔法ディオガクラスが存在する。


 今イルディーナが使ったのは中級魔法ギガノクラスの拘束系魔法。詠唱がなかったのはおそらく《グラビィティ》を使用したのと同時に時間を稼いだのだろう。


 しかし、ピシッッッッッ!!

「こんなものか」

 と、鎖がちぎれる音がした。


 なんてことはない。戀が腕を振り払い無理やり引きちぎったのだ。

 これにイルディーナは目を見開いた。

 無理もないだろう。

 自分が必死に考えて生み出した固有魔法がこんな力づくで破られるなど、誰も思わないだろう。

 

 さらに戀は魔法を使うことなく、腕力だけで引き千切ったのだ。

 これはさすがのイルディーナの自信を木端微塵に砕いた。


 それゆえの一瞬の硬直。

 そう、たった一瞬。 

 普通ならたとえ隙があったとしても相手も、まして自分も動く時間すらない。そんな時間だ。

 しかし、今イルディーナが戦っている相手は普通の人間ではない

  

 まして、ついこの間まで軍人として戦っていた戀にとって、この一瞬は相手を叩き潰すには充分すぎる時間だった。

 だが………


「それじゃ面白くねぇよな」

 そう言って戀は軽く後ろに跳躍し、イルディーナと距離をとる。

 そして構え直しながら言う。


「確かに悪い手ではなかったよ。最初の重力倍加(グラビィティ)で時間を稼ぎ、敵に突っ込んでくるのをフェイクに利用しながら、相手を所定の位置まで誘導し、本命は光魔法生者を戒める怨嗟の鎖リスティック・バインドで縛ってから王手をかける。とても良い案だと思う。でも残念。その戦術は学生や中型魔物モンスタークラスにしか効果がない。せめて大型魔物アビスクラスを抑えられるくらいにはならないと俺は止められない」

 

 だが、と戀は続けて言う。

「この魔法のお返しとして、俺の固有魔法オリジナルを見せてやるよ」

 この言葉にイルディーナは警戒し、戀と距離をとる。

「桜が敷き詰められた白色の川 死体の埋まる断罪の丘

 国民の悲鳴は歓喜へと変わり 罪人の首は提灯に変わる

 血風刃・暴風(エルトス・ブラッド)!」


 瞬間、戀の周りに紅い風が吹き始める。

 次第にそれは強くなり、旋風を作り始めていた。

中級魔法ギガノクラス…………しかもこれは、風刃・旋風(エルトス・ブレイド)の変化形………?」

 「ご名答」と戀は、嬉しそうに言った。


 風刃・旋風(エルトス・ブレイド)とは、風魔法の中では初歩的な攻撃魔法である。

 殺傷能力が極めて低いため、模擬試験などでは愛用されるが、実戦やこういった試合では意味ではなさない魔法である。

 この魔法の派生形は結構多く、いろいろな付与魔法エンチャントと合体で使用される。

 恐らく戀の魔法も派生形の魔法なのだろうが、それにしてはあの色は見たことはない。炎の付与魔法エンチャントも似た色ではあったが、あそこまで濃い色ではない。しかも彼は先ほど固有魔法オリジナルと言った。つまり今までの魔法とは違うのだろう。


 さらに、本来風刃・旋風(エルトス・ブレイド)低級魔法レイクラスである。合体魔法でも低級魔法レイクラスであるにもかかわらず、彼の魔法は中級魔法ギガノクラスだ。どこからどう見ても強力な魔法であることがわかる。


 以上のことから、イルディーナは危険と判断。すぐさま防御魔法を展開する。

「風の神たるノトスの加護を 哀れなる力の暴虐から我を守り給う

 その力、ここに示せ!

 風雷の断絶領域(ホワイト・リ・アンセ)!」


 防御魔法を展開し、さらには武器に宿っている力も借りて、二重に防御壁を展開する。

(この魔法は私が扱える防御魔法で最大クラスの魔法……お願い耐えてっ)

 戀の魔法がイルディーナに直撃。

 一つだけではない。幾多の刃がイルディーナを襲う。

「おぉっと!、三觜島選手の魔法がイルディーナ選手に次々と襲い掛かる! イルディーナ、このまま成す術もなく敗退してしまうのかぁぁぁあ!? 一方、三觜島選手は勝利を確信したのか、イルディーナ選手を見ようともしません!」


「今の魔法は戀の得意技だからね。生半可な防御魔法ではすぐに崩されてしまう。あれが防げているかどうかで、勝利の結果は変わるよ」

そう言ってティナはイルディーナを見やる。


(さて、戀君はもう油断しきっている。倒すなら今がチャンスだけど、どうでる? イルディーナさん)


 ティナが心の内で呟くのと、イルディーナを囲んでいた魔法が飛び散るのは同時だった。

次話は明日の午後に投稿する予定です。

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