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精霊騎士である為に  作者: 雪那 由多
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深い時間の内側の

情報の伝達能力。

初めて見る光景を目ではなく脳裏で理解すると言う景色を見ていた騎士団の隊員達はへーなんて初めて見る景色を見ながらも何かを確認して黒板へと新たな情報を書くブレッド達の姿にいかに有効な能力かを眺めていた。


「こうなるとレオンハルトへのルートは大体決まったもんだな」

「っていうか、ウェルキィの森まで目と鼻の所じゃありませんか。

 待ち伏せをして戦場をウェルキィの森にした方が貴方には好都合じゃありませんか?」

「確かにその方がノヴァエスとしては好ましいのだが……

 ウェルキィを捕獲されると言う最悪な事態は避けたいな。

 レオンハルトの当主も既に長い事ウェルキィとあってないし、後継問題もうやむやのまま。

 ゼゼット隊長何か聞いてますか?」

「お前らな……」


ゼゼット騎士団隊長はこめかみに血管を浮かせて普通なら絶対口に出さないような事を朗らかに話題にする三人に睨みつけるも三人とも知らん顔。

そんなどこ吹く風の顔ぶれと好奇心が隠せれない周囲の視線に溜息を吐き


「この話はレオンハルト家の問題だ。

 一歩でも家を出た俺の所まで聞こえてくる内容じゃない」

「つまり、まだうやむやのままか。

 大体ウェルキィすらレオンハルトに見切りをつけてもう国内に居ないって言う話だしな」

「ブレッド、それはどこのどいつの話だ?」

「人気食堂のよくある話題さ」

「チッ……」


舌打ちするゼゼットにアルトゥールは視線だけを向けるだけで地図を書きしめされた黒板をただ眺める。


「ヴィンシャー、お前達のボスの居場所は知らないのか?」


聞けば「クーン」と自信ないそんな声。

垂れ下がったしっぽが数回ほど床を撫でるも、側に居たティルシャルまで視線を反らす。


「ったく、一体どこに行ったんだか我が国の守護者達は」


既に国の名前を持つフリュゲールも千年ほど出現しておらず、代理で守護していたとされるクヴェル、ヴェラート、ウェルキィさえもう長い事出現していない。

 一番姿をよく見せていたウェルキィさえラフェールに片翼のウェルキィを与えて以来姿を消したままだ。

あれだけの巨体でありながら気配のない精霊を恐ろしく感じるも、今はその姿がどうして見つからないのかだけが気にかかる。


「とりあえずここに居もしない者に頼るよりももっと現実的になろう。

 レオンハルト家の協力が得られればレオンハルトの警備、そしてウェルキィの森への侵入を阻止だ。森への侵入の阻止へは極力避けるようにしてシェムエルの森で留める方向にする。

 ノヴァエス家の苦情を無視してウェルキィに侵入前に侵入者の捕縛、もしくは国内への違法侵入としての殺害も許可する。

 一人とて見逃して一般市民に被害が出ないよう細心の注意を払う事!」


ゼゼットの高らかな方針に全員が踵を鳴らして敬礼をする。

一糸乱れぬその光景にランは思わず息を呑んで硬直してしまうが、その頭をゼゼットがポンポンと柔らかく手を当てる。


「ランだったか?院生のお前さんには悪いんだが、今からウェルキィの森へと向かう。

 シュネルの能力をどうか貸してほしい。一緒に同行してもらえるか?」

「ちょっと待て!ランは院生だ!こんな子供を戦場に連れて行く気か?!」


思わずと言うようにブレッドが待ったをかけるもゼゼットは白い目を向けて


「それをお前が言うか」

「俺はあの時既に騎士団の一員だった」


呻くように言うも


「院生とは言えもう立場は騎士団の見習いだ。

 要請があればそれに応えるのが務め。

 忘れたわけじゃないだろう」


ゼゼットの言葉にブレッドは苦虫を潰した顔になるが


「でしたら最低限彼の安全を考慮してブレッドと同じ指揮班に組み込む事を提案します」


ジルが手を上げて意見を述べる。


「最悪を知ってるブレッドの側ならまず間違いは起きないだろう。

 俺もその案に一票」


アルトゥールまで手を上げれば賛成と言うように次々手が上がっていき


「あのな。お前ら当たり前の事を言うな」


ゼゼットは呆れたような溜息を零しながらわしわしとランの頭をもみくちゃにしていく。


「院生に危険な目に遭わすわけにはさせん。

 若手ナンバーワンのブレッドが護衛に着くから大船に乗ったつもりで安心してついてきてほしい」


その手から逃げていいのかいけないのか迷ってる間に頭を取りの巣にされて遊ばれていたランが救出されて椅子に座りなおすと同時に扉が開いた。


「レオンハルト当主からの返答です!

 ウェルキィを守ってほしいとの事。その為の戦闘行為に関しての被害はレオンハルト家は責任を問わない。です」

「よし!グラナダ隊はここを拠点にレオンハルト、軍との連絡、指示を。

 ノヴァエス隊はゼゼット隊と共にシェムエルの森からウェルキィの森への案内を。

 ブレッドと院生は俺達と一緒に行動しろ。

 アリシア隊はウェルキィの森に先回りして防衛ラインだ。

 ヴァレンドルフはノヴァエス隊の半数を連れてレオンハルト家の警備隊と合流の後にすでに待機している騎士団とアリシア隊と合流。

 挟み撃ちにするぞ」


地の利があるならでわの戦法に室内は一気に動き出す。

全員が手早く出動の体制をとる中ランは1人取り残されるが


「すまない。俺がシュネルの能力を頼ったばかりに迷惑をかけた」


暗い目をしたブレッドの、何処か青ざめた顔にランは不安を覚えながらも


「大丈夫。戦争は慣れてるから」


あまりの顔色の悪さに空回りした元気な声を上げるも


「大丈夫。怖い目には合わせない」


何故か抱きしめられて「大丈夫、大丈夫」とその言葉を呪文のように繰り返す。

暫くしたのちブレッドが離れ、その顔を見ればブレッドの顔もいつもの通りの顔色に戻っていた。


「さて、行くか」


休憩から仕事へと戻るような気楽な掛け声と共にランを外へと案内して、既に出発の準備が整っていた場所へと連れて行く。

どこかアルトゥールとジルベールが不安そうな顔をしていたがブレッドはいつものこの世に面白い物なんてないと言う顔で声を上げる。


「ゼゼット隊、ノヴァエス隊はこれから目的地まで最短距離で向かう!俺に続け!」


頼もしいまでの勇ましい鬨の声にこれから戦いが始まる事にランは小さく震えるのだった。


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