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精霊騎士である為に  作者: 雪那 由多
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友達100体できるかな?

晴れた穏やかな春の陽気の中フリュゲール国フリュゲール王立学院の入学式典が厳かに始まった。

ブレッドのお下がりの統一された制服に身を包んだランの姿にどこか懐かしいものを感じ、ブレッドとジルベールを連れて式典に参加した。

相変わらず少ない新入生の中でランの低い身長はどこにいてもすぐ見つけられ便利だったが、主席に座するはちみつ色の淡い髪をなびかせる少女の背を眺めた。


「おい、あれがいるなんて聞いてなかったぞ」


ブレッドが小声でアルトゥールに話しかけるのを同じ気分で聞いていた。


「噂で聞いていたがほんとに入学しているとは俺も思わなかったんだ」


アルトゥールのささやかな反攻に嘘おっしゃいと思いながら


「だからあんなにも一生懸命にランの支援をしたんでしょ?」


聞けばばれたかと小さく笑ってみせる。


「これだけの人数だ。

 あのお姫様の取り巻きもいるようだが、あくまでも家同士の関係だからな。

 ランにはぜひともそんな垣根を越えて友達になってもらいたい」


うそんくさそうなブレッドと同様の視線をアルトゥールに送ればこれは本当だと笑う。そして


「彼女の祖父レオンハルト家の当主がそろそろやばいらしい。

 その息子がウェルキィにいまだ選ばれていない所を見ると継ぐのは彼女オリヴィア・レオンハルトだ。直系の孫は二人しかいないからな。

 兄のラフェールもいるがアイツにはすでに妖精ウェルキィが付いているからウェルキィはまず彼を選ばないだろう」


苦い思い出として二つ下の後輩を思い出す。

ただでさえレオンハルト家の嫡子嫡男で後継者として育てられ、何度もウェルキィと心通わせようとしたものの最後にはウェルキィは俺達と同じ片翼のウェルキィを連れてきて父親と同じようにウェルキィをラフェールに与えたのだ。

彼のプライドはズタズタで学校をやめてしまいそうになったもののなんとか周囲の説得に最後は応じて領主として相応しい成績で卒業したと後に聞いた。


「ランを権力争いに巻き込むな」


一応くぎを刺して置くもアルトゥールはふんと鼻で笑い飛ばす。


「オリヴィアのプライドはラフェールより同等、いや、まだウェルキィのチャンスがある以上彼よりも強いかもしれない。

 そんな彼女が自分同様飛び級で来たやつがいるっていうだけで目の下の瘤だ。

 さらに言えば飛び級したとはいえまだ彼女には妖精がいない。

 妖精がいるランの方が上位なのは学院の生活の中では絶対だ」


言って腕を組み溜息をこぼす。


「だがウェルキィが彼女を選ばなかったら?

 もともとウェルキィはレオンハルト家が管理する聖獣だが俺の目から見ればウェルキィは仕方なく契約しているように見える」


一層声を潜めた声に私同様ブレッドもそれは同意で小さく頷く。


「この一年何があるかわからん。

 たとえランが苛められようとも彼女はウェルキィを繋いでおくための贄だ。

 取り巻きなんぞにウェルキィを奪われるわけにはいかん」


この国の領主の一人として、ウェルキィの森の半分を預かる一族の顔で朗々と新入の宣言を紡ぐ彼女の背中を睨みつけていた。




式が終わって懐かしい教師の面々にも挨拶をしていれば軽やかな足音が名前を呼んで駆け寄ってくる。


「アルト!ジル先生!ブレッド!」


教師の面々も驚いたふうにランを見れば、ランは丁寧に名前もまだ憶えてないだろう教師たちに頭を下げる。


「見に来てくれてたの?」


嬉しそうに俺達に笑顔を振りまくが


「アルトとジル先生か」


いつの間に仲が良くなったのかそんな呼び方に小さな嫉妬を覚えて苦笑をしてしまえば気持ち悪そうな顔で教師達が俺を見る。


「なんだ?」


疑問はそのまま口につけば


「いや、アクセルも笑うのだなと」


思わず苦い顔になってしまうのは仕方がないだろう。

自分でも理解してるが愛想笑いすらしなかったかわいげのないガキだったのだから。

それを知るアルトゥールやジルベールも教師の言いたいことを理解して頷きながら


「なんとこのランをあのブレッド・アクセルが面倒を見ている。奇跡みたいな話だろう」


仰々しく言うアルトゥールに感嘆のため息をつく教師。


「いったいお前らは俺をどんな目で見てたんだよ」


睨みつけてしまえば


「こんな目です」


とジルベールのどこか微笑ましく見るまばゆい視線。

もう俺にかかわらないでくれとぷいと背を向けてしまえば


「こんな所で八家ノヴァエス卿ではありませんか」


背後に4人の男子生徒を従えて現れたのはオリヴィア・レオンハルト。

陶器のような白い肌と萌る若緑の澄んだ瞳。小さな唇の艶やかなピンク色はまだ化粧さえ必要のない愛らしい色の彼女を不思議そうに小首かしげて「八家?」とランが疑問を俺に訴えるも少し待てと視線を送る。


「これは四公のオリヴィア様。ご入学おめでとうございます」


同様に「四公?」とこの国独自の言葉に小首をかしげる。

貴族の様式に従い深々と頭を下げるもこれが様になるのだから嫌味な男だと視線だけその様子に向ければ、花が咲くような明るい笑顔でオリヴィアは俺を見た。


「このような所であのブレッド・アクセル博士にお会いできるなんてなんてすばらしいのでしょう!」


舞台役者にでも出会ったかのような楽しげな声ののち俺の正面までやってきて制服のスカートをチョンとつまみ


「初めてお目にかかりますオリヴィア・レオンハルトです。お見知りおきを」


誰にでも愛される自信のある笑みを俺に向ける。

まあ、これは確かにかわいらしいなと一般的な評価を下し


「ブレッド・アクセルだ。すでに卒業してるから同じ時に学舎で会う事はないが」


と区切り、ランを引き寄せ肩を組む。


「同じ新入生のランの保護者だ。

 何かの折につけて学院には顔を出すかもしれないからその時はよろしく」


貴族様様に向ける挨拶の仕方じゃないが、これでも俺は上機嫌に挨拶をして見せた。

たとえ俺の素を知っている教師がどんびきしてても、背後で頭痛そうにこめかみを抑えているジルベールがいても、それを楽しそうに見ているアルトゥールがいたとしてもだ。


「こちらの方はブレッドの親戚か何かで?」


いきなりブレッドかと気づかれないような人の悪い笑みをこぼしながら


「赤の他人だが、俺の愛弟子になる予定」


ぱちんと魅惑的なウインクを添えて紹介すれば一瞬だが彼女の笑みが歪むのが分かった。


「そうですか……

 確かラン・センでしたね?あなたの妖精を紹介していただけなかったのは残念でしたが同じ飛び級同士よろしく」


にっこりと魅惑的な笑みを向けるも手を差し伸べない所を見るとすっかり彼女に嫌われてしまったようだ。

勢力争いとかに巻き込まれるつもりはないがすっかり巻き込まれたなと、俺が原因なのを棚上げして


「さっそく友達ができてよかったな」


ランの綺麗に切りそろえたばかりの頭をかき混ぜるように撫でればやめてと喚くランにさらに気分がよくなる。

やっぱりこういった打てば響く反応はいいよな。かわいいよな、と上機嫌でランをかまっていればつまらなそうにオリヴィアはかかとを鳴らす。


「お会いできたのは光栄ですが、向こうで家の者が待ってますの。失礼します」


淑女らしくまたスカートをチョンとつまんで膝を折って挨拶すれば颯爽と彼女は去って行ってしまった。

黙って彼女に従う四人の護衛という名の取り巻きを見送れば気の合う教師だったガレット・イエーサーが溜息をこぼす。


「さすが四公。すごい迫力だ」


お前達はもっとひどかったけどなと明るい笑みに苦笑を隠せないでいたが


「で、あれは優秀なのか?」


アルトゥールの心配はもっぱらこの辺だろう。

馬鹿な領主と付き合うのは大変だという意味で聞けば


「彼女は優秀だよ」


短い在籍期間だったがそれでも何かと俺をかまってきたエーヴァルト・ベッカーがそれでもランを見る。


「彼には劣るけどね」


珍しく吐いた毒にもう一人の教師スコット・ドレフェスも苦笑を隠せない。


「彼女は確かに優秀で才能もある。だが妖精達は言うのだ。

 私と契約してなければ彼としたかったと」


言葉を話さない妖精だが、長年のパートナーの言う事は言葉がなくても通じ合うと言うが…

ちょっとだけ困ったような、でもどこか嬉しそうな顔でどこからか現れたドレフェス教授の妖精エミリアがチョンとランの目の前に現れ、オリヴィアのようにスカートのすそをつまみ挨拶をした。


「こちらこそよろしく」


手を差し伸べたランの指先にエミリアはキスを一つ落とし、その後ドレフェス教授の肩で羽を休めた。


「な?」


苦笑交じりに状況を説明すれば


「確かに珍しい現象だ。初対面でこんなにも友好的になれるなんて」

「道理で妖精達がざわめいているはずだ」


ぐるりと見回せばいたるところで妖精達がランの様子を眺めていた。

その光景に


「僕初めてこんなにも妖精を見たよ」


ランは頬を赤らめ興奮しながら周囲の妖精に笑いかけるが、それは俺のセリフだと呻く。


「確かに教授の言うとおりですね。これでは彼はまるで」

「妖精に愛されている。すばらしい素質だな」


素質か?体質じゃないのかと疑問はよぎるも判断材料がない今はそうとしか言いようがない。


「皆よろしくね!よかったら友達になってね!」

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