力を求めると言う意味
春と同時に新年を迎え、ランは10歳になった。
誕生日と言う概念のないこの国では新年と同時に誰もが年を一つ取る事になって居る。
10歳と言う年は平均年齢三十数歳のこの生きるのに厳しい国では成人の歳となる。
成人したランは集落の女達に髪を短く綺麗に切りそろえられ、女達に頭から体まで隅々と綺麗に洗われ、成人の証でもある耳飾りを付けるために耳に針で穴をあけ、そしてこの日の為に新しく誂えられた服に身を包む。
ランはお祝いとしてもっちりとした甘い団子を食べ、やがてやって来た人買いの馬車にわずかな金と交換されて鉱山へと向かうのだった。
離れた所から見守っていたシュネル達は本当にこの国はどうなってると頭を痛めながら馬車が進む先へと着いて行き、いくつかの集落で子供を買い付けた後に鉱山へとやって来た。
鉱山の麓は女達があばら小屋で子供を育て、所々で昼間から堂々と胸を隠す事すらしてない娼婦が男達にしなだれていた。
馬車に乗せられた女児達は不安そうな顔で手を繋いでおり、その中で一番大きな家の前で降ろされ、人買いは金の詰まった袋を受け取って次の場所へとまた走り出すのだった。
山の中腹にも近いあばら小屋でラン達男児は総て降ろされた。
何気なくアウリールとアリシアがトカゲと蛇に姿を変えて様子を伺っていれば、どこか苦笑する子供を買った男は書類を書いていた。
「お前達は運が良かったな。
知らないと思うが今この国は隣国と戦争中でな。すばらしい事に我が国は勝ち、我が国の奴隷は総て解放された。
おめでとう。お前らは今日から奴隷階級から労働階級に昇格だ」
何が違うのかと思うも、暫くしてやって来た馬車には戦争敗戦国の捕虜が足に重しと鎖、そして手と首にも同様に鎖を前後の人間と繋げられてやって来たのだ。
「いいか、あれが正真正銘の奴隷だ。
お前達には先ず鉱山の仕事を覚えてもらうが、慣れたらあの奴隷の世話をさせてやる。
覚えておけ。
奴隷は鉱山で一番危険な仕事をさせる為の大切な労働力だ。
逃げ出さない様に、死なない様に飼わなくてはならない。
集落から来たのならそのさじ加減は判るだろ?
こんな反抗的な態度をしていても大切な家畜だ。
すぐに従順になるから怯える必要はないが気を付けて扱うように」
そう言いながら男はラン達子供を鉱石の仕分けの仕事から教えるようにと呼びだした男達に案内させた。
ラン達が労働階級に昇格しなければあの男の言葉はラン達に向けられた言葉となったのだろう。
人間とは本当に愚かな生き物だと改めて認識する所だったのだが
「シュネル聞いて!
今日ね、鉱石の仕分けって言う仕事をしたんだけど、僕見つけるのがうまくて親方達に褒められたんだ」
夜、ランは嬉しそうに新しい仕事をお土産の食事を片手に下僕達に語るのだった。
初めての仕事、そして集落ではもらえなかった暖かな食事、水っぽい粥でもない柔らかな握り飯を隠し持ってきたランは割り当てられた大人サイズの穴倉を新たな住処としてシュネルと一緒に食事をしながら今日一日の出来事を楽しそうに教えるのをただ黙って耳を傾けるのだった。
仕分けの仕事で坑道で掘り出す物が何か覚えたら坑道に行き、奴隷が掘りだした石から鉱石が多い部分を運びだす。
やがてある程度の作業のしやすい安全な場所で岩を切り出すように穴を掘る作業を学び、好きな所を掘るようにと自分の坑道を与えられた。
ランは仲の良い仲間数人と共に新たな道を掘り出す事になった。
他の鉱夫達が掘った穴とは別の穴を掘れと言う事らしい。
掘らなければ新しい鉱脈は見つけられない。つまりお金にならない、食べる物がないと言う負の連鎖に繋がり、最低限は奴隷の面倒で食事はもらえるもその時の食事は奴隷と一緒なので誰もが懸命の掘る事になるのだが、運がいい事にランが指示した場所は想像以上に良質の鉄が採れたり金まで掘り当てる始末。
早々に奴隷の世話から解放されて数人の専属の奴隷まで分け与えられ、親方達もラン達の掘る穴で分け前をもらいに来る始末。
すぐに穴は拡大されてやがて奴隷の生活環境まで影響を与えるほどだった。
賑やかにも騒がしく、瞬く間に一年が過ぎた。
ランは同期の子供達の出世頭として親方の家へと引き取られていった。
ランは器用なのか岩を上手く切りだしたり、良い鉱脈を何度も掘り当てたり、揚句には金の鉱脈もまた見つけて見せた。
成人もしたしお祝いと言って男達はランを娼館にまで連れて行かれるぐらいに愛でられ、鉱山の男達からこの子供は石に愛されてると大切にされ、それを気に入らない子供達は不運な事故に巻き込まれていき、自然とシュネル達が何をするわけでもなく安全な方へと向かうのだった。
幸運値が高いんだろうな……とぼやくフェルスだが、だったらあんな生活しなくても良かったでしょとアリシアは言う。
我々と契約した事でそうなったのかもと考える中、新たな年を迎えてやって来た子供達をランが教育すると言う、鉱山の中からついに解放されるまでになった。
当人は鉱山を掘ると時折綺麗な石とか見つけられて楽しかったんだけどなと少しだけ残念な顔をするが、親方達は子供達が仕事を覚えたらまた一緒に石を掘ろうなと約束してくれた。
バカだ。
バカとは判っていたが素直すぎると不安になるも、奴隷の世話もしているランを見ると素直で優しい少年と言う顔はどこにもない。
奴隷の心を砕くために食事は地面にぶちまけ手を使って食べろと言ったり、水も欲しかったら湧水を飲めと岩から染み出るわずかな水を岩を舐めるように飲めとも平気で言う。
もっとも集落ではそれ以下の暮らしをして居た為にランは甘いなと周囲の子供達は評価するが……決して誉められた行動ではない事をシュネル達は黙って見守っていた。
親方の家に引き取られたランは屋根裏に部屋を貰い、隙間風や寒さからは縁が切れた挙句に一枚の毛布までもらえ、時々その家の子供達とも一緒に眠ったりしていた。
毛布にくるまりながら寝る事を許されたランはここに来てよかったと幸せそうに仕事に出かけるのを微妙な心持でシュネル達は見守るものの、そんな幸せはいつまでも続かなかった。
また戦争が始まった。
戦争が終わって一年を過ぎて戦争が始まって。
誰もがまたかと呟く中、鉄を作る為に鉱石を頻繁に運び出す事になって慌ただしくなる。
そんな中、敵国の兵士がついにこの鉱山まで乗り込んできた。
瞬く間に麓の集落から占領されて遂に鉱山にも姿を現した所で、迎えに来たかつての仲間に奴隷達は暴走しようとした所で親方達は鉱山の入り口をくずして閉じ込め、ちりじりに逃げるのだったが、そこでランは見てしまった。
親方達が家族を迎えに行き、家族を逃がした所で殺される所を。
捕まった家族が兵士に掴まり一人、また一人と殺されていく所を。
捕まった娘はその場で服をはぎ取られて犯され、泣きじゃくる子供は慈悲もなく一突きで殺されてしまった。
たすけて!
逃げろ!
真逆の言葉達がランを混乱させて、狼狽えてる合間に岩場から足を滑らせて岩場の隙間に転げ落ちてしまった。
普段なら間違っても犯さないドジっぷりだが、今回に限っては身を隠すには絶好の場所に潜り込んでしまった事は幸運としか言いようがない。
戦争が日常的に起きてる事は大人達から聞かされて知っていた。
人を人が殺すのも知っていた。
奴隷に食事を与えていた時のように人はどこまでも残虐になれる事も知っていた。
だけどそれを目の前で、しかも受け身になるのは全く世界が違っていた事をランは今知った。
怖い。
だけどここで泣いたら見つかって、昔岩場の近くで魔物に食い殺された子供みたいに殺されるのだろうと思うと足がすくんで身動きが出来なくなる。
岩の隙間にもぐりこむ音の中によく聞いた家族の助けを求める声が聞こえてくるのだった。
助けなくちゃ……
斧もハンマーも何もないけど岩の隙間から脱出しようとした所でシュネルが呼び止める念話がランの頭に響いた。
振り向けばいつの間にだろう。
小さな赤い鳥は厳しい視線でランを睨んでいた。
『今行けばランが死ぬだけだぞ』
「判ってるよ。だけど僕が助けなくちゃ……・」
『本当に助けられると思ってるのか?』
「そんなの……」
助けられるわけがない。
判っている。
屈強な鉱山で働く男達の中で働いていたラン達子供が一番貧弱な存在なのは誰に教えられることなくとも知っている。
『なぜ我らを頼らない。
我らはランの下僕だぞ』
「違う!シュネル達は僕の家族だ!
大切な家族に僕の我が儘で人を殺せなんて言えないよ!」
『本当にお前はおろかな子供だ。
お前にはそれを言う権利がある。
我々に名を与えた代償として我々を好きに使う自由がある』
「そんなのは自由じゃない!
そんな事して貰う為に家族になったんじゃない!」
ボロボロと泣き出したその涙はいつ以来かとシュネルは眺めながら
『だったら私と盟約を結ぼう』
「盟約?」
『ランは私の力を手に入れてランの意志でラン自身が戦う事が出来るようになる』
「僕自身がみんなを助けに行ける力を……」
『その代りランは私の願いを叶える為に死ぬ事も叶わず、生涯その目的の為に生きる事になる』
「つまりシュネルとずっと一緒に居るって事?」
『まあ、そうはなるが……
代償にその力を使う間お前は私と混じり合った姿になって人から化け物と呼ばれる事になるだろう。
さらに成功するかどうかも分からない。失敗すれば死ぬ事になるが?』
「化け物……死ぬ事……」
『嫌われ、怯えられ、避けられ、一人ぼっちになるだろうが、それでもよければ力を貸してやろう』
「シュネルと一緒だからシュネルになら僕は構わないよ」
本当にそうなのかとシュネルは物を知らない子供の返事を真に受けない。
ランはシュネルにとって都合のいい人間だった。
人が良く、全面的にシュネルを疑う事を知らないほど信頼してくれて、どうしようもないほど御しやすい馬鹿で愚かな人間なのだ。
上手く扱えばランは念願を成就させる為の駒にも十分なれる。
だますような真似は心苦しいが、成功率がほぼゼロに近い行為だ。
これを持って新しい名前のままランと別れてもシュネルに困った事は何もなく、寧ろ世界とまた繋がった事の方が収穫としては多い。
十分ランの気持ちに応えたはずだと、盟約に持ち込んだ。
血を持っての盟約だからとお互いにの体から血が浮き出るくらい傷をつけ
『だったら私の精霊騎士として盟約を結ぼう。
我が願いを叶える為に……』
「僕はシュネルの力を受け入れる」
そうだと頷き
『我、シュネル・フリューゲルは鸞旋との血を持って、我の願いを叶える為、鸞旋の望みをかなえる為、ここに精霊騎士の盟約を果たす』
言いながらお互いの血が流れ出す所をこすり付けるも何も変化はなかった。
シュネルはふと小首かしげ
『ラン、ひょっとしてお前は私に隠し事をしてないか?
例えば名前を偽っては?』
聞けば案の定顔を曇らせ黙り込んでしまう。
『名前とはとても重要な事だ。
私にだけでいい。ランの正しい名前を教えてくれ』
「えー、だけど……」
しぶしぶとランは言う。
集落に来る前に居た所できつく言われたんだ。
絶対口に出しちゃいけない事だって、と恨みながらもランは一度しか言わないからと断って
「僕の本当の名前は鸞旋。
ランセン・レッセラート・フリューゲル。
家名どころか名前が三つもあるんだ。
知られたら生意気だっていじめられるから誰にも言わないでよ!」
なるほどと納得しつつも驚きはそんな事ではない。
レッセラート・フリューゲル
随分と懐かしい名前を聞いて一瞬呼吸を忘れた。
かれこれ千年近く昔の、初めての愛した人間の友の名前……
思わずまじまじとランを見上げればなんだよと睨み返されてしまう。
そうではないと断り、アリシア達がランとの出会いを運命づけるような話をしているのを思い出す。
確かにこれは運命だ!
人間の世界に来て、地図に書かれる自分の名を持つ国を得る権利を貰った時に出会い、共に国を得るために戦った、精霊の間でも初めて成功した精霊騎士の末裔にこんな所で再会するとは!
我らが世界の王、精霊王ですら想像の付かなかった再会だろう。
シュネルはその体を大きな鳥の姿に変え、狭い岩場の間でランと密接し、翼で抱きかかえ
『我、精霊シュネル・フリューゲルはランセン・レッセラート・フリューゲルとの血を持って、我の願いを叶える為、ランセンの力となり共に生きる為、我が半身となる精霊騎士と任ずる事を盟約する』
さっきよりも丁寧に、そして少しだけ強欲になった心を表すように盟約に加えて血を交える。
変化はランとシュネルがとろりと光が交わるように溶け合って、精霊騎士が誕生した。
ほぼゼロに近い成功率の中、二人目の精霊騎士を産みだしたシュネルは頭から生える翼、首筋から延びた飾り羽、ズボンの中に潜り込んでしまったしっぽ、そして精霊の視界はこの世界の魔の法則すら読みあかし、この世界に漂う不可視の魔力がこの小さな体に集まるのを理解した。
「シュネル、これって、成功したの?」
ランのどこか驚く声に
『ああ、怯える事はない。これが私の見ている世界だ。美しいだろ』
「うん。でもキラキラしすぎててちょっと怖いかも……」
『すぐ慣れる。我らはこの世界を統べる者だ。
世界が我らにどうしてほしいか願っているのが今のランにも判るはずだ』
「うん。世界が教えてくれる。この力をどう扱えばいいか何も知らないのに目を瞑ってても何かわかるんだ」
『そうだ。ランが望めば世界の方から使い方を教えてくれる。
好きなように世界に命ずればいい』
シュネルの言葉に後押しされて岩場から姿を出した。
目の前には炎に呑まれた鉱山で働く者達の集落の燃え盛る光景と、狂乱の宴。
快楽の為に女を犯しては殺し、恨みによって逃げ惑う者を物のように壊していく地獄の光景。
初めて見る戦場に圧倒されていれば、誰かが叫んだ。
化け物だーっ!!!
誰もがその手を止めて一斉にランを見た。
恐怖に歪んだ顔が嫌悪感を隠さずに絶叫と共に逃げ出していく。
「あ……」
見知った顔が決壊した恐怖に我先へと逃げていく後姿を眺めていれば
「魔物め!死体の匂いを嗅ぎつけてやって来たか!」
いきなり剣を持った男に襲い掛かられた。
それは敵国の兵士ではなく、一緒にご飯も食べた鉱山の男だった。
「ランだよ!やめてよ!」
怖さに腕で身体を守れば、振り下ろした剣とランの間に光の魔方陣が輝いてランの体を守る。
光輝く盾に男はランの言う事なぞ聞かずに悲鳴を上げ剣を捨てて逃げだして行った。
「待って!」
逃げる背中に手を伸ばすも次にやって来た敵国の兵士がずらりと並んで剣を構えていた。
膝が震え、ガチガチと歯を鳴らし、剣先も恐怖に震えランをとらえていない。
ランも恐怖に歪む兵士の顔と嫌悪の視線に心が悲鳴を上げていた。
戦争とは集落の女達を怒らしてしまった時に受けた折檻のような出来事の延長だと思っていた。
物凄い憤怒の形相で棒を振り下ろしてきた時のようなものとは全く違っていた。
『言っただろ。化け物と呼ばれる、と』
シュネルの声が頭に響いた。
確かに聞いた。
ただ、その意味をはき違えていた。
強者を罵る言葉だと思っていたが、存在を否定される言葉だとは思いもしなかった。
つ、と涙が落ちた。
人の枠からはじき出された事を知った。
人としての繋がりを失った事を知った。
孤独と言う意味を初めて知った。
力を与えられても無力な事を知った。
恐怖に底はない事を理解した。
『この状況でお前はどうしたい?
まだ、同胞を守りたいと思うか?
まだ、敵を退けたいと思うか?』
囁くように頭に響くシュネルの声にランの思考は真っ白で理解もできない。
一斉に襲い掛かってくる敵兵にランはただ反射で助けを求める。
「誰か助けて!
来るな!あっち行けよ!」
叫べば光のドームに守られ、そしてランを中心に暴風が吹き荒れる。
敵の兵は吹き飛ばされ、誰もが岩陰に隠れてランを魔物と呼んだ。
初めて見る魔法を発動させた衝撃にぺたりと座り込むランは自分の手を見て恐怖に顔を引きつらせ、もう自分自身を化け物とみて悲鳴を上げる。
悲鳴と同時にランを中心に暴風が竜巻を作り上げる。
竜巻が雷雲を呼んで鉱山の一角に土砂降りの雨と雷を降らした。
山々が連なる高山地帯の雷の恐怖は命がけだ。
音よりもその存在が先にやってくる。
雷とはこの場で発生する物。
産声を上げるよりも先にその存在を現し、総てを一瞬で奪っていく。
この場はもう阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
立って居た者は雷に打たれて焼け焦げて、身を伏せた者も雨に打たれた体に地を這う雷に感電して焼け焦げて。
瞬く間にこの場に立つ者がいなくなり、鉱山夫達もその生活を支える女達も敵国の兵士もこの場の総ての命が全滅した。
助けたかった者達にののしられ、助けようとした者達までも殺してしまい、正真正銘総ての命を奪ってしまった。
「あーらら、まだランにはこの力早かったんじゃない?」
ふらりと現れた暢気なアリシアの声に驚いて、それに反応する様に雷が落ちた。
思わずダメだと手を伸ばすも雷はアリシアに当る直前に弾かれた。
「安心しなさい。
感情で発動している程度の魔法じゃアタシ達はかすり傷一つ受けることないわ」
こう見えてもアタシたち強いんだからと目の前にしゃがみこんで大丈夫よとランの頭を撫でる。
視界が歪む。
まだ総てが失われたわけではなく、アリシアやアウリール、フェルスが目の前に立っていた。
「怖かったわね。初めての魔法は全然美しくも優しくもなかったでしょ?
魔法は世界に呼びかけて力を使わしてもらうお願いなの。
魔法は繊細で神経質で気難しい臆病な子なのよ」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!!」
ひょっとして鉱山の男達のように殺してしまう所だったアリシアの諭す声に何度も謝ってしまえばアリシアは涙ぐむランを抱き寄せれば存在を確かめるようにしがみついて狂ったような大きな声で泣いて、泣いて、泣いて。
夜の帳が訪れる頃には泣き疲れ、意識を手放すようにそのまま眠りに就いてしまった。