世界
マンガやアニメを見ると、その影響か、ふと書きたいもののイメージが浮かぶことがありまして、それを文章にしてみるのですが、やはりなかなか難しいものですね。(内容を読んでいただければお分かりいただけると信じているのですが、二次創作物ではありません。念のため)
でもなんとか文字にしてみました。
読んでいただけるとうれしいです。
彼はふと目を覚ました。まるでいつもの朝、自然と目が開くように。
何気なく体を起こそうとして、不意に頭が何かにぶつかる。ゴツンという鈍い音。彼は半端に起こした上半身を支えるように片手をつき、もう片手で強かにぶつけた頭をさする。
寝ぼけていて気づかなかったようだが、そこにはガラスの壁のようなものがあった。
彼は彼の右手脇にあるスイッチを手探りで押す。ガラスの壁が持ち上がる。
彼はカプセルのようなものに入っておりそのガラス戸をあけたのだった。
体を起こし、座った状態で辺りを見る。その部屋には彼の入っているカプセル以外にもいくつものカプセルがあった。
カプセルが並べられているその部屋は、そこそこに広さがあった。おおよそ陸上のトラック二つ分ほどであろうか。その部屋には、扉がある一方を除き、三方にコンピュータがある。最も近い壁を見ると、コンピュータにはまったく灯りがついておらず、電源は切れているようだった。
彼はカプセルの中にあった靴を履き、外に出、カプセルの外側に設置してあるパネルを覗き込む。パネルには“WAKE”と表示されている。
カプセルの電源は独立しており、部屋のコンピュータの電源が切れている場合でも、その機能を維持できるようになっていた。
彼は再度あたりを見渡した。いくつかのカプセルが開いている。
そのひとつに近付き中を覗き込む。そこには誰もいなかった。カプセルのパネルは彼のものと同様“WAKE”の文字が表示されている。
今度は閉じているカプセルをガラス越しに覗く。そこにはかつて人間であったものが横たわっていた。カプセルの外からでもその人が死んでいることがわかる。
こみ上げる吐き気を抑えながら、かれはカプセルのパネルを見る。そこには何も表示されていなかった。
彼は空を見上げた。そのカプセルがある場所の天井には大きな穴が開いており、まぶしいほどの太陽がみえた。少量の砂が、天井の穴からさらさらと零れ落ちていた。
これより向こう側には天井の残骸だろう瓦礫と大量の砂があった。そこにあったはずのカプセルは埋もれてしまっていた。
彼は振り返り、天井があるほうのカプセルを一瞥する。先にも確認したようにいくつかは開いているが、半数以上が閉じたままであった。
彼はそれらを確認するよりも先に部屋の外に出てみることにして、扉に向かい歩き出す。
扉に向かう途中、ちらちらと脇のカプセルを見る。が、カプセルは電源が切れてしまっているものばかりだった。中身は先ほど見たものと同じになっているだろうことが容易に想像できたので、中を覗き込むのはやめた。
扉までたどり着く。引き戸に手をかける。鍵はかかっていないようだった。
そこには、彼が眠りにつく前に見た、研究所のような施設の廊下があった。人の気配はない。彼は建物の外に出るべく、先ず、地上階へ上がる階段を上った。
彼は一階にたどり着いたが、人の気配はない。彼は出入口へ向かうが、その足取りはひどく重かった。
施設の出入り口は、ガラス戸だったが、ガラスはすべて割れてしまっていた。当然、空けるまでもなく外が見えた。研究所の玄関先、駐車場のようになったそこにはいくつかの瓦礫が落ちていることがわかった。目隠し用に植えられた木々の数本が折れているのも見えた。
彼は外の状況を知るべく、玄関を出て、さらに研究所の敷地より外に出た。
そこには、以前見た、都心の美しい町並みは、広がってはいなかった。あたり一面瓦礫と砂が広がっている。
ふと振り返ると、研究所自体も廃墟のようになっていた。ところどころ壁は崩れ、ガラスはほとんどが割れてあたりに散らばっていた。
彼は呆然とした。
彼はしばらくぼうっとその光景を見ていた。が、ふと何かに思い至ったようにはっと顔を上げる。あの地下にはいくつか開いていたカプセルがあったことを思い出していた。
彼はこの廃墟のような世界に、もはや自分以外の人間がいないような錯覚を覚えたようであった。が、まだ先に起きた人たちが、どこかで生きているかもしれないのだ。
彼はわずかな希望を胸に、その終わってしまったように思える世界に、一歩踏み出したのだった。
私がイメージした“世界”はいかがだったでしょうか。
今回は短編ということで投稿しましたが、またこの世界に思いを馳せることがあるかもしれません。そのときはまた書いてみようかと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
感想などいただけるととてもうれしいです。
他作品も読んでいただけたら幸いです。
以上。