④左門式小太刀流第三の型
④左門式小太刀流第三の型
〈左門〉
左門が扮している大樽小兵衛は美濃から来た同心で田宮流抜刀術の使い手。
だからこそ左門が差しているのは長鞘の刀。
中身は小太刀。一本鞘二本太刀だ。
「どうした創蔵いや、服部裏同心。」
「はっ、番所に怪しい奴がいます。」
「怪しい奴?」
「おそらく月次組の手の物かと。」
「何?おぬし、気づかれておらぬだろうな。」
「おそらく。ですが月次の者です。どれほどの腕のものかわかりません。」
「なぜわかった。」
「拙者が聞いた大樽小兵衛とはだいぶ違いますし、大太刀の鞘に入っていた刀が小太刀だったのです。」
「小太刀使い?奴しかおらぬな。」
「はい。 私はお目にかかったことはございませんが、伊東一刀斎の師で富田勢源の弟子・・・・」
「忍名・左門。本名・鐘巻自斎。創蔵よ。自斎を斬って参れ。この多田成次の名にかけて。」
「いや、左門と戦うのなら、多田航兵衛でしょう。」
「そうだな。」
服部の犬がいる。
おそらく服部裏同心だ。
それなら多田航兵衛にばれているだろう。
服部裏同心は相当な使い手。
左門が勝てるかもわからない。
火ノ助よ。お前に第三の型と極の型を教えておけばよかったな。
その日の夜、報告の時間だった。
普通に歩き、裏路地に何気無く入る。
そこには翔狐の代わりに報告を聞きに来た泪がいた。
「服部裏同心がいる。」
「服部の犬か。」
「おそらくばれている。」
「あくまでも鐘巻自斎としてではなく左門として動け。」
「服部裏同心は斬る。」
「何の為に貴様に青龍と黒龍を預けているか、覚えておけ。」
「ああ。」
柄を握り締め、さっさと歩く。
角を曲がったあたりで。
「隠れてないで出て来やがれ。」
「ばれてたか。」
中身の男。顔元は隠してある。
絞り込めた。
武田勝兵衛、武田久兵衛、岡田創蔵、鳥和万吉、藤田鋤亘と言った所か。
「お主を斬りに参った。」
「服部裏同心か。名を申せ。」
「岡田創蔵。」
「岡田か。多田のような屑の犬とは、阿呆な男よ。」
左門は刀を抜いた。
「左門式小太刀流・第一の型・門」
「小太刀一刀か。」
創蔵は抜刀する。
左門は上段で斬りかかる。
創蔵は剣先で左門の青龍を弾き、蹴り上げる。
左門は後退するが青龍を左手に持ち変える。
創蔵が普通に斬りかかって来たので
青龍で防御し、創蔵の鳩尾に拳を叩き込む。
「左門式小太刀流・第二の型・翔」
「ぐあっ!」
創蔵は後退する。
左門はさらに青龍を右手に持直し、勢い良く攻め込む。
創蔵はよけつつ納刀する。
「ていやっ!」
創蔵は抜刀術を使って左門の胸をえぐった。反動で青龍が飛んでいく。
「ぐあっ!」
左門は膝を付く。
「服部裏同心よ。はあ、まだ、鞘が。まだ鞘が。」
「鞘一本で何ができようか。」
「左門式は万能剣。小太刀に優れた流派であるだけで人を活かす剣も兼ね備える。」
そう言って左門は左手で鞘の先端部分を持った。
右手では中心部分を持つ。
「何をしても無駄だ。」
「でいやあ!左門式・鞘龍攻」
鞘を突き出す。創蔵は難なくよけ、峰で軽く左門の肩を叩き、挑発する。
左門はもう一度同じ構えをする。
「何度やっても同じだ。」
左門は創蔵との距離をつめ、鞘の先端部分に隠してある小太刀黒龍を勢い良く抜刀し、創蔵の喉元をえぐる。
「ぐあぁぁ!」
「左門式小太刀流・第三の型・小太刀抜刀術・槌」
「謀ったな。」
「逆手で来るとは思わなかったか。わしは忍びだ。お主が浅はかなだけであろう。さらばだ。」
左門は創蔵の喉元に黒龍を突き刺した。
「多田航兵衛。待っておれ。月次は服部には負けん。」