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斬雪   作者: de@co
第一幕夜乃英雄 第二章抜刀期
5/8

③運命交差

③運命交差

〈斬衛門〉

半右衛門は夜にいつものように月次探しをしていた。

裏路地に入ると二人いた。

月次じゃないかもしれないが忍びだ。

「そこの忍びら、月次か?」

「おう。」

「そうか。」

一人を斬った。血が吹き出る。

くるりと回り、もう一人の男を斬った。

「そもそも自分から月次だということ自体が弱い証拠じゃ。」

そう呟き、少し進んだ。

刀のぶつかる音がする。

見ると一人の小太刀使いが五人の月次に袋叩きにされていた。

全員、6.5はあるだろう。

小刀使いの顔を見る。

見たことがある、決して忘れない顔、 火ノ助だ!

勝手に体が動いていた。

走りながら血刀を抜いた。

一人の男を血刀を突き、背の高い男を肩から斜めにに斬ると、横にでかい男が槍で突いて来た。

跳び上がってやりの上に乗り、首を斬った。その後二人を斬る。

半右衛門が火ノ助の方を向くと

火ノ助は、驚いた顔で

「兄者か?」

とボロボロの体で言う。

頷こうとしたその時、後ろから声がかかった。

「炎!大丈夫か!」

振り向くと何処かで見た顔がある。

その男は顔をしかめ、

「その目、斬衛門か?炎に何をしている!」


〈紅蓮〉

風は炎を探して歩いていると因縁の敵、斬衛門にあった。

炎の前を血刀を持って立っている。

間違いない。こいつが炎を殺そうとした。

「この男は火ノ助ではないのか?風。」

「今は炎じゃ!」

「そうか。やはり火ノ助か。」

「貴様、炎をそこまでにしやがって!わしと相打ちした後、牢に入れられたと聞いたが、全く懲りておらぬのう!」

風が龍聖を抜いた。

「わしは火ノ助を斬ってはおらぬ。」

「ふっ、前までは殺しについては正直なところだけが良いところで有ったのにもはやそれさえも無くなってしまったか。悲しいものよ。時代は移り変わるというのにのう。」

「わしが火ノ助を斬るはずがなかろう。だって、」

風は斬衛門が言い終わる前に飛びかかった。

斬衛門は慌てて血刀を横にして龍聖を受け止める。

「腕は落ちたか?」

「何度言ったらわかるのじゃ!わしは火ノ助を!」

「黙れっ!」

風は足で斬衛門の腹を蹴った。

「一気に殺してやる!」

風は力を入れ、龍聖から黄龍出す。

苦無を斬衛門の方へ向ける。

「たあっ!」

斬衛門は膝を曲げ、負け時と血刀から血魔を出す。

ぶつかり合い、龍と魔物が殴り合う。そこに来たのはふらふらになった炎。

「風と兄者を助けてくれぃ!」

炎は龍朱を二人の方へ向けた。

朱龍が出て仲裁した。

三つの生物は静かに消える。

三人は寝転び、息を切らした。

「風!この人は拙者の本当の兄じゃ!わしが月次の連中に袋叩きにされたところを助けてくれたんじゃ!」

「え?お主の兄というのは斬衛門だったのか。」

「ところで火ノ助と風の関係は!」

斬衛門が叫ぶ。

「滝谷所屋敷の相棒だ。本当の兄のようにしたっている。」

「斬衛門!」

「斬衛門と呼ぶな。わしは商人じゃ!山樫屋半右衛門、半右衛門と呼べ!」

「はあ、はあ、はあ、半右衛門!」

「な、なんじゃ!」

「炎のこと、気にしてやっといてくれ!」

「当たり前じゃ!お主とは馬が合わんがのう!」

「兄者が斬衛門だったとは。ところで兄者!何故商人風情がその服装で刀を差して歩いているのじゃ?」

「わしの店が月次組に燃やされ、奉公人を皆殺しにされた。その復讐じゃ。」

「月次か。わしら、手を組まんか?」

風が言う。

「え?」

「お主がいれば八半の者と九のものに襲われてもなんとかなる。」

「そんなものに襲われるのか?月次のくせに。」

「わしらは月次ではもうない。わしらは紅蓮じゃ。」

「紅蓮?あの殺し屋の?的しか狙わないという殺し屋のか?」

「ああ」

「つまり月次の者に狙われていると?共に月次狩りをしてくれるということじゃな?」

「違う。共に月次組を潰そうと言っておるのじゃ。」

「何?」

「できぬことではあるまい。月梶と林之助さえ潰せば敵はない。月次はもう歩けんしな。」

「幕府側の忍者が黙ってはおらぬだろう。」

「大丈夫じゃ。服部半蔵は月次と関わりたくないはずじゃ。」

「ふぅ、分かった。手を組もう。」

「毎日同じ場所で三人集まろう。誰かが集まらなかったらそれぞれの家に行き、助ける。」

「ここで良いな。」

「家は後で教えよう。」

風は半右衛門に家を教えた。


〈雷神〉

久し振りに雷神として裏路地を歩いていた。

角を曲がったその時、横から殴られた。

吹っ飛ぶが必死に仮面を抑える。

「何者じゃ!」

「雷神様が私等に手を出したさかもんでのう!」

そこには尻上に忍者刀を差した顔の薄い男がいた。

「月次組か?」

「おお、よく知っておるのう。」

その男が忍者刀を抜いた。

飛びかかって来る。

慌ててよけ、男の背中を蹴る。

男は体を一回転させて着地した。

「さすが雷神様じゃ。」

男は忍者刀を振り上げて仮面を斬った。

「ほうほう。男前じゃのう!」

膝で慎之介のみぞおちを蹴る。

「雷神様も終わっておるのう!」

「許されると思うな。今に殺してやる。う、う。」


〈斬衛門〉

半右衛門はいつものように風と炎との集合場所に向かっていた。

その場所である角に着いた時、変な声が聞こえた。

「雷神様も終わっておるのう!」

雷神とは今伊賀の街を騒がせている英雄のことだ。

鞘を抑え、角から見る。

するとマントをつけた慎之介が忍者に半殺しにされていた。

雷神は慎之介?不思議ではないか。

まあいい、助けるか。

そんなことを考え、忍者に近づく。

「そこの忍者!何をしている?」

その忍者が振り返って驚いた顔をした。がすぐにしたり顔に戻り、

「林之助!相手をしろ!」

と言った。すると大太刀を腰に差した長身の男が出て来た。

「最近月次狩りをしておる斬衛門の模倣者か?」

「さあどうかな。」

「その様子、本当の斬衛門らしいな。」

半右衛門はすぐに決着をつけようと思い、血刀を抜いた。

足の筋肉に力を込め、飛びかかり、血刀を突き出した。

林之助は大太刀を抜き、血刀をしたからすくい上げた。

半右衛門は後ろに飛ぶ。

「その大太刀、妖刀龍紫か?」

「ふふっ、貴様こそ、血刀を使っているくせに。」

「面白くなって来た。」

半右衛門は血刀の背をしたに向け、柄頭を持ち、一刀流の構えをした。

その構えをやめ、左下から右上に血刀を振り上げる。

すると林之助はよけ、龍紫を連続で突き出して来た。槍のようだ。

「ほほう。まるで槍のようだ。」

「わしは槍使いじゃ。」

先程より声が低い。この槍に慣れて来た時、林之助が龍紫を引いた。

今だ!血刀を突き出す。

すると林之助はそれをよけ、俺が拍子抜けした時に斬って来た。

「貴様、拍を変える事がうまいな。わしには通用せんぞ。」

血刀で龍紫を抑え込み、右足で林之助の顔面を蹴った。

「ぐぅっ!」

林之助が後退した隙をついて血刀を突き出した。

すると林之助は仰向けに倒れこんだ。

ふらついた半右衛門の股間を蹴り上げる。

「ぐおぅっ!」

半右衛門は倒れこむ。

「来い!紫龍」

林之助が体勢をなおして龍紫を上に向けた時、苦無が林之助の足元を通った。

「半右衛門!」風だ。


〈紅蓮〉

「風、か?」

「林之助、まだこんなことを続けておったのか。懲りんやつじゃ。月梶などの配下に加わるとは。」

「お主こそ、殺し屋などというふざけた仕事をしておるではないか。」

「戯けが。そういえばお主とは一度も決着をつけておらんかったな。」

林之助は龍紫を構えなおし、風と半右衛門に向き直った。


炎は風が林之助の気を引いているうちに月梶にやられている少年の元に駆け寄った。

「月梶。やめろ。」

「おお、火ノ助か。」

「炎と呼べ。」

炎は龍朱を背中から抜き、身構えた。

「少年。戦えるかい?

「押忍」

少年は暮露のようになった服の袖をぶち破り、立ち上がった。

月梶は少年に向かって蒼奏を突き出した。少年はよけたので炎が龍朱を突き出す。月梶は華麗によける。

炎は龍朱の棟を月梶の鳩尾に当てた。

「安心しろ。峰打ちだ。」

「具ぅ」 月梶は気絶した。


「林之助、お主に勝ち目はないのではないか?」

「馬鹿なことを申すな。」

風は龍聖を握り締めた。

林之助は両手で龍紫を握り直したが後ろを向き、ハッとしたような顔になり、龍紫を鞘に収めた。

「斬衛門、風、また会おう。」

林之助は月梶を持ち上げ、逃げた。

「何をしておるか。」

風は悲しそうな顔をした。


〈雷神〉

「おい!待て!」

忍びはあっちで別の男達と戦っていた長身、大太刀を持った男にだかれ、何処かへ行った。

「はあ、はあ、」

慎之介は倒れこんでしまった。

「小僧。立て。」

先ほど苦無を持って戦っていた異様に背の高い男が睨んで来た。

「小僧ではない。雷神慎之介だ。」

「ふっ。そこだけは一丁前か。あの月梶程度の男にやすやと負けるとは、よく雷の神と名乗

れたものだ。」

「お主、なんともうした!」

慎之介は勢い良く立ち上がる。

「今の貴様では拙者に傷もつけられんよ。取り敢えずその傷を手当てしてやる。着いてこい。」

「断る。そんな惨めな真似はせん。」

「慎之介殿、甘えるべきではござらぬか?」

「ん?は、半右衛門か?」

「へぇ、」

「何故商人なのに刀を差しておる。」

「今言えることではありません。」

「まあ、いい。うっ。」

慎之介は倒れてしまった。


「う、うう。」

「起きたな。」

半右衛門が座っていた。

「月梶も手加減すれば良いのに。」

「拙者が弱いからいけないのだ。」

「そうだな。」

「クマがひどいな。」

「ちょっと昨晩あってな。」


〈斬衛門〉

「倒れちまったな、」

炎が溜息をつく。

「良いのだ。お主らの家に運ぶぞ。」


「結構重かったな。」

「そりゃあそうだろう。」

慎之介を布団に寝かせ、あぐらを掻く。

「そうだ風。あの龍紫を持った男は何者なのだ。」

「ああ、あいつは抜刀鬼四面相と呼ばれる忍び、林之助だ。四つの人格が宿っている不思議なやつだ。それより、こいつが言いたいことあるらしいぞ。」

風が炎の方を見る。

「なあ、兄者。兄者はいつまで血刀で人を斬るんだ?」

「・・・・・・・・月次が消えるまで。」

「もう、やめないか?」

「何を申す。」

「今の兄者は血刀を持ってはいけないと思う。」

「ふざけるな!」

半右衛門は立ち上がる。

「血刀を持ったままだと、兄者はいつまでも人斬りとして生きていくしかなくなってしまう!」

「血刀をわしが抑えられるの言うのか!」

「そうだ!兄者が使うべき刀は一つしかないと思う!」

「?」

炎がおくから刀を取り出して来た。

少し抜く。

「ま、まさか。」

「わかるよな。三大名刀・斬鉄だ。」

「宗右衛門の刀を使えと?」

「兄者は自分の中の斬衛門と刄ノ助に向き合わなくちゃいけないと思う。」

「、、俺は、血刀を捨てられない。」

「そこなんだよ!お前のダメなところは。」

「・・・・・」

「てめぇの斬衛門時代は黄金期じゃねえ!闇に葬りたいような時代じゃないと行けねぇんだ!」

「だが、斬鉄でも人は斬れる。」

「斬鉄も人は斬れることぐらいわしもわかっておる。だが、斬鉄を使って斬る人を見極めて戦うことが兄者が斬衛門に勝てるただ一つの方法だと思う。」

「炎・・・」

「納得、いかぬか?」

「この血刀は、拙者の能力を最大限に引き出してくれるものだと勘違いしておった。今気づいたよ。わしはまだ斬衛門だったんじゃな。これからは山樫屋半右衛門として行きて行くため、斬鉄を所持する。」

「それがいいよ。」


「いろいろってなんだよ。」

「聞かない方がいいのではないですか?」

「そうか。斬衛門」

「慎之介どの、他言無用でござる。」

「道理で強いはずだ。信用できるやつなのになんだか信用できなかった意味が分かったさ。もう姉様には近づくな。分かったな!」

慎之介が立ち上がろうとする。が、しかめ面になり、倒れこむ。

「今動いてはなりませぬ。安静です。」

その時、襖が破れた。

男が入って来る。

顔の整った男だ。

風と炎が部屋に入って来る。

「何事じゃ。」

「わからぬ。」

「分からぬではない。わしは本松東之助。人呼んで、桃太郎だ。」

「も、桃太郎?」

「月次組の剣客だ。」

「風、炎。慎之介殿を連れて逃げろ。」

「半右衛門・・・」

「なあに、負けはせん。斬鉄が此奴を倒す。」

「頼んだ。」

風は慎之介に肩を貸し、出て行った。

「時間がない。さっさと決着をつけるぞ。」

桃太郎が柄に手を掛けた。

「西洋刀・沙琶嚠」

「ん?」

桃太郎が刀を抜いて飛びかかって来た。

桃太郎の刀は諸刃の西洋刀だ。

半右衛門は勢い良く抜刀し、空中にいる桃太郎の喉元を狙う。

桃太郎は柄頭でそれを退け、刃を半右衛門の首筋に当てた。

「斬衛門もこの程度か。」

「せからしかぁ!」

峰で桃太郎の背中を叩き、膝蹴りをした。

桃太郎は峰で半右衛門の手首を叩き、斬鉄を落とす。

収刀した。

「月次組にはいらぬか?」

「戯けたことを。」

「考えておけ。」

鞘ごと引き抜き、柄頭を半右衛門の鳩尾突き出した。


〈紅蓮〉

風と炎と慎之介は雷神道場に入った。

「慎之介君、どこに入ればいい。」

「裏店に・・・・」

裏店に入り、何もない床に慎之介を寝かせた。

「風殿、炎。ここから逃げた方がいい。爺様はまだいいが、姉様には見つかると面倒臭い。」

「いや、わしは挨拶する。太成様に。」

「なぜ、爺様の名を。」

「・・・・・・」

「何故だ」

「夜が明けたら・・・」


〈雷神〉

「慎之介!慎之介!」

「爺様、どうしたのですか?」

「ああ、お達、慎之介に仕事を頼もうと思うのだが、いないのじゃよ。」

「太成殿。」

「ん?なにやつ。」

太成は出てきた長身で小顔の男の顔に向かって足を振り上げた。

「あの時の、少年か。」

男は太成の蹴りをまともに食らった。

「慎之介殿は預かっております。」

すると、うまく筋肉のついた男が慎之介を担いで現れた。背中に小太刀を差している。

「さっさと慎之介を返せ!さもないと!」

太成は拳を握る。

「言われずとも、そういたします。炎!」

炎と呼ばれた男は慎之介をお達に渡した。

「太成殿・・・・・申し訳ございませんでしたっ!」

男は土下座をした。

「庵衛門様の時と言い、慎之介殿の時と言い、誠にっ!誠に申し訳ございませんでした!」

「風、と言ったかな。何をしに参った。」

「慎之介を連れて来た次第でございます!あの時の事をずっと悔やんでおりました!」

「今、宗之助は何をしておるのじゃ?」

「庵衛門様、いや、宗之助様はまだ月次組で活躍して居ると思います。」

「そこで活躍などしていても、ちっとも嬉しくないわい。おぬしは月次をやめた様子じゃのう。」

「某は、命からがら抜け出しました。」

「はあ、あの時のことは、もう思い出したくなど無いのだが・・・・」


「宗之助、おぬしは師範代じゃぞ!何を考えておるのじゃ!」

「はあ、ただ遊女の所に行っただけではないか!」

「お活は病で床に伏せておると言うのに・・・・・達のこともある!」

「わしは所詮養子。実父でない親父は何もわからぬのか!」

「・・・・・・何故、そのことを今出すのじゃ。お活が床に伏せておって寂しいのは分かる。だが、今はそれどころではないじゃろ。この地を、守らなければ、ならぬ時じゃろう。」

「あんなやくざ者、親父なら一発で倒せるだろう。」

「あやつは、ただのやくざ者では無いのじゃよ。」

「ふっ、知らんわ。何ならわしの風神流拳法で奴を冥土に送ってやろうか?」

「何が風神流じゃ。雷神流を少し危険にしただけではないか。」

「風神流こそ最強の拳法。それがわからぬか?」

「・・・・・・・・」


数ヶ月後

「じじ様!じじ様!」

「おお!お達!どうしたのじゃ?」

「どんぐりを拾いました。」

「おう!綺麗などんぐりじゃ!でかしたぞ!」

「うふふふ」

「お母様にも見せてやったらどうじゃ?」

「はい!」

お達は走って行った。

『ドン!ドン!』

「師範さん!太成さんー!」

「ちっ!」

太成は戸を開けた。

「何のようじゃ。」

「さっさと出て行かないと一家心中になっちゃいますよ?」

「貴様っ!」

太成は拳を振り上げたが、さっと我に帰り、拳を下げた。

「うちには月次様が着いてんだ。いくらあんたが強くても手に負える相手じゃあねえよ。」

「分かっている!」

「どうするかな。週末までに出て行かねぇと、あのお嬢さんは奈落の底に落ちるぜ。へへへ」


翌年。。宗之助に呼び出された。

「親父、わしは親父に注意された後、遊女の所には行かんかった。」

「それで良い。」

「でもあの夜、遊女が妊娠したらしい。」

「!」

「わしが責任を持ってお達と一緒に育てる。お活はもう長くはないだろう。わしは、この雷神道場を継いで、守り抜いて見せる。だから、その子供のことを、許して欲しい!」

「そこまでして、その子を見たいのか。甘ったれたことを抜かしおって。雷神の血を受け継いでいないとやはりこの程度か。」

言い過ぎた。

それでも宗之助は額を床に擦り付けている。

「分かった。下男として扱う。」

こんな時に優しい言葉をかけられない自分が忌々しい。


次の夜、お活が死んだ。

その次の夜、宗之助が赤ん坊を連れて来た。

次の昼、月次が来て脅しをかけた。

その夜、宗之助がいなくなった。

月次組に連れて行かれたらしい。

達がかわいそうだ。

その子供は慎之介と名付けた。

雷神道場の跡継ぎである。

・・・・・・・・・・・・・・・・


「じい様!じい様!」

「おお!どうした慎之介!」

「折り紙で鶴を折りました!」

「見せてくれ。じいにも見せてくれ。」

「あっ!くしゃくしゃだあ。」

「それは強く握ったらくしゃくしゃになるだろう。」

「んー」

「慎之介ぇ!」

「姉様!姉様!」

あれから四年。

達が八歳。慎之介が四歳である。

月次組に監視されている。何故か。

宗之助が今月次組でどんな扱いを受けているのか。


「駄目だ。月梶様。そんなことをしてはならぬ!」

「わしに歯向かうとはいい度胸じゃ。名を申せ!」

「滝谷所屋敷教官・庵衛門にございます」

「あの道場の男か。人質を殺しておこう。」

「それは!」

「風!やれ。」

「えっ?」

「まあ、驚くのも無理はない。まあ、女と子供は殺さぬ。太成とか言う師範の老人だけを殺してこい。」

「しかし、」

「お主もわしに意見するか。」

「えっ!それは・・・」

「腹を切るか其奴を殺すか。考える猶予を与える。」


「庵衛門様。」

「行け。わしは全力で止める。」

「庵衛門さ、ま。」

「いいな!」

「はい。」


それにしてもあの残忍な月梶が女子供を殺すなと言う所が引っかかる。

ずっと月次組が雷神道場を監視していることも、庵衛門を殺さないこともとても不思議だ。


風は雷神道場に忍び込んだ。

的は一人。師範 太成。

苦無を抜き、寝室の襖を開けた。

布団で何者かが寝ている。

忍び寄り、掛け布団をめくる。

まくらが連なり入れられている。

ばれているのか!

構え直したその時、

「そんなにわしの命が欲しいか少年!」

と背後から声がかかった。

振り向くと老人が立っている。

老人は片手で風を捻りあげる。

「ぐ、ぎあー!」

「月次の手の物か。宗之助が何かしでかしたな。」

「宗之助、そんな者知らぬ!」

「謀りおって!どこに仲間がおる!」

「おらぬ!」

「ふざけるなあ!」

『ボキボキッ!」

右手が折れる。

庵衛門が現れた。

「風、爺い一人に手こずるとは。」

庵衛門、風の頬を殴る。

「ぐはあ!」

『ざぁーっ!』

「お前は拙者に邪魔をされ、骨折したんだ。」

「は、はい。」

庵衛門は風の鳩尾に拳を叩き込んだ。


庵衛門は次の日、月梶に呼び出され衝撃の事実を告げられた。


「月次組に監視されておるこの場所に入るとは大丈夫なのか。」

「まあ。ここにいるものは始末します。」

「やめてくれ!わしたちが迷惑を受けるのだ!」

「はい・・・・・」

「帰れ。」


〈斬衛門〉

目を覚ますと、昼だった。

大丈夫だ。風たちの屋敷にいる。

斬鉄もある。

重い体を起こし、斬鉄を持って戸を開けた。

帯に斬鉄を差して歩いた。

「月次を潰すには究極奥義が必要になるかもしれないか。」


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