表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
斬雪   作者: de@co
第一幕夜乃英雄 第二章抜刀期
4/8

②月の影

②月の影

〈紅蓮〉

築山の坊ちゃんを殺してからと言うもの、仕事が来ない。

風は家のちゃぶ台の前にある座布団に座りながら言う。

「炎。この前築山の坊ちゃんに聞き捨てならぬこと言われたんだ。」

「なんでござるか?」

炎は茶を風の前に置き、向かえに自分は座る。

「月次組の精鋭部隊・風林火山がこの伊賀にいると。」

「なにっ?」

「それに反応すると奴はやはりなと言った。奴は月次と通じておったらしいしのう。」

「紅蓮は風と火ノ助だと月次組にはばれていると?」

「ああ。仕事が回ってこんのもその影響かもしれん。くれぐれも気をつけろ。」

「わしを誰だと思っとるんじゃ。伝説の炎様じゃぞ。」

「七の男に言われたくない。」

「九の男は良いのう!」


〈斬衛門〉

半右衛門は雷神道場からの帰り道、三人の男に襲われた。

「お主が郎二郎様と樹兵衛様を殺した者か!」

「奴、郎二郎と申したか。殺してはおらん。喉元を棒で突いただけじゃ。」

「偽りを申すな!郎二郎様と樹兵衛様は惨殺されておったわい!」

「なに?」

一人の男がやりを突き出して来る。

よけ、槍を持ち、引き寄せた。

その男を蹴り、気絶させる。

槍を取り上げ、残りの2人を気絶させる。


翌日、商談を成功させ、上機嫌で店へ帰った。

物音がしない。襖を開け、控え室に入る。

そこには丁稚の松助、梅助がいた。

血だらけだ。

急いで横の部屋の襖を開ける。

番頭の幸之助と手代の竹之助はもうすでに青白くなっている。

奥で火が上がった。

敵はまだこの建物の中にいる。

この部屋にあった長包丁を持ち、走って火の方へ行く。

「貴様らぁっ!」

半右衛門は怒鳴る。

忍者らしき者三人が驚いたようにこちらを向く。

長包丁を一人の小男に刺す。

「蘇羽左衛門!」

中肉中背の男に向かって長包丁を振り下ろそうとする。

苦無で止められる。

「あの苦無使いと比べたら屁でもないわぁ!」

そのまま振り下ろした。

もう一人の男は腰から忍者刀を抜いた。

斬りかかってくる。止め、弾く。

「消えろぉっ!」

その男は倒れる。

その男の懐を探る。

そこには月次組・燈と書いてある手帳があった。

「わしの人生はどうも月次組に狂わされる。」

火が激しくなった。

店の外へ逃げる。

店は完全に跡形もなくなった。

「陽靜様。すみませぬ。」

半右衛門は涙を流した。


〈雷神〉

慎之介はいつものように英雄・雷神の姿に着替えた。

裏戸から出る。

(今日は冷えるなぁ、)

そんなことを思いつつ、歩いていると変な物音がした。

恐らく、刀で人を斬った音。

塀を登り、叫ぶ。

「何をしている!」

そこには惨殺死体があった。

四人の忍びがその周りにいる。

「貴様らぁっ!」

慎之介は一番弱そうな者を殴った。

呆気なく吹っ飛ぶ。

「おっ?こやつ、最近話題の雷神とか言うやつでねぇですか?」

「これが雷神か。」

その男が慎之介を殴った。

慎之介は後退する。

もう一人の男が腰から刀を抜いた。

振り下ろそうとする。

早すぎてよける暇がない。

両腕をバツ印にして受け止める。

「ぐっ!」

血が流れ出て来る。

右足で蹴る。

股間に当たり、男はよろめく。

首を回し蹴りし、残りの2人を見る。

先ほどの男が右足で蹴って来るので自分も右足で蹴る。

ぶつかり合い、力で押し合う。

力で負け、尻餅を付く。

「死んでもらおうかのう。」

男は踵を振り上げた。

「翔狐様。殺してもよいですか?」

「良い。」

この声は、くノ一か?

「たぁっ!」

その刹那、一本の線が男の胸を刺した。

いや、とてつもなく速く投げられた苦無だ。

男は倒れる。

慎之介は飛び上がって身構えた。

後ろから足音が聞こえる。

「翔狐、久しぶりじゃのう。」

背が六尺くらいある男が来た。

「風か?」

「どうかのう。」

風と呼ばれた男が膝を曲げた。

一瞬で翔狐の前へ行く。

目にも留まらぬ速さで翔狐を苦無で斬った。

「雷神よ、おぬし、雷神道場のものか?」

「えっ?あ、あゝ」

「そうか。言ってやりたいものだ。」

風はそう呟き、何処かへ行った。


〈紅蓮〉

「ちょっと涼みに行って来るわ、」

風は炎に言った。

「おう!」

風は外に出た。

炎は腕の筋肉をつける訓練を始めた。

障子が破れた。

炎は身構える。低姿勢で龍朱を取る。

襖が壊れ、そこから人が出て来る。

「よう、火ノ助。」

「月梶様、なぜ。」

月梶は月次組の頭取・月次の甥で、現場のナンバーワンだ。

「おぬしらを殺しに来たのじゃ。紅蓮のせいで私等の仕事に支障が生じているからのう。ん?風はどうしたのじゃ?」

「なぜ、知っておるのですか、」

「潜入官が築山の家を調べて、その殺し方が龍聖と龍朱だったのじゃ。」

「その潜入官とは?」

「左門じゃよ。」

「ふざけるなぁっ」

龍朱を抜いた。斬りかかる。

月梶は腰から忍者刀を抜き、目にも留まらぬ早業で龍朱を弾く。

炎は後退するが姿勢を低くし、また質問を始める。

「月梶殿、太陽様から蒼奏を貰い受けたのか?」

「太陽さまはあの戦いの後、死んだわい。」

「えっ?」

「貴様らのせいじゃっ!」

月梶は蒼奏を振り上げた。

炎は龍朱で抑え込む。

力で負けてひっくり返る。

「死ねぇっ!」

月梶は蒼奏を振り下ろした。

炎は慌てて転がる。

左腕に蒼奏が突き刺さる。

「ぐっ!」

月梶は炎の腕から蒼奏を抜き、もう一度振り下ろした。

右腕に持った龍朱で受け止める。

『キーンッ!!!』

刀の棟が首に当たる。

「このまま行けば己の剣が己を蝕むことになるのう」

「くっ、くそう。」

「七の男は死ぬのじゃ!」

月梶が手に力を入れた。

「八半のものが良く言えるのう!」

月梶が横から蹴られる。

月梶は転ぶ。

「ふ、風!」

「月梶よ、こんな下品な戦い方をする男だったとはのう。」

腰から奏度を抜いた。

突き出す。月梶は蒼奏で受け止める。

風は素早く蒼奏から奏度を抜き、飛び上がって右足で月梶の顎を蹴り上げる。月梶は上半身だけ倒れ、すぐに体勢をもどした。

蒼奏を突き出され、奏度で受け止めると月梶は、

「龍聖を使えばどうだ。すぐにわしを倒せるだろう。築山のように!」

「戯けがっ!」

手首のを上げて逆から蒼奏を抑え込み、左に回す。

左手で龍聖を抜き、首筋に当てた。

「無駄な殺しはしとうない。逃げるなら今じゃぞ。」

「ふんっ!天下の風林火山が落ちぶれたものよっ!」

月梶はその場を離れた。

風は炎の元に駆け寄り、声をかけた。

「大丈夫だな。腕を刺されたか。」

風は包帯を巻き始める。

「ふっ大丈夫だ。このままではおれぬな。林之助と月梶が二人同時に来たら私等は勝てるかどうかわからん。」

「まあ取り敢えず屋敷を移そう。当分は大丈夫じゃ。」

炎は立ち上がり、荷物をまとめた。

風もそれを手伝い、自分の荷物もまとめた。

「行くぞ。」

「へぇ、」

「商人か。」

「ふふっ」


〈雷神〉

慎之介はあの風という忍びらしき男に助けられてから一週間。雷神活動を自粛している。

太成に頼まれた買い出しから帰って来ると太成が部屋に来いと言っていたとお達に言われた。

「一体なんのようなのでしょう」

「私にもわかりゃしないわよ。」

「姉様、これ、野菜と肉です。」

「お、ありがとう。」

慎之介は太成の部屋に入った。

「慎之介です。」

「慎之介よ・・・」

神妙な雰囲気になった。

「雷神をやっておるのだろう?」

「え?」

「はははははっ!ひひひひひっ、ふふっ!ははははははっ!」

「え?じいや、どうしたのですか?」

「若い頃わしも鬼面を被って雷神という英雄をやっておったのじゃ。」

「え?だから私が雷神と呼ばれたのですか?」

「ろうじんであっただろう?」

「は、はあ、」

「へへへへへはつ!ごほほん!真面目な話に入る。今やくざ者がうちに来た。慎之介はいるかと聞いて何処かへ行った。忍びを退治しなかったか?」

「忍びなら。」

「あやつら、月次組と言っておった。」

「えっ?あいつら月次組だったのか。」

「そう言えば半右衛門が斬衛門の事を月次組が探していると言っておりました。」

「半右衛門?」

「鍛冶屋を営む山樫屋半右衛門にございます。姉様を助けた男です。」

「山樫屋?この前火事で全焼した鍛冶屋ではないか!」

「えっ?」

「大丈夫なのか?」

「わかりませぬ。」


〈斬衛門〉

半右衛門は陽瀞の隠居屋敷に移り住み、山樫屋再建の目処を立てていた。

「奴らが焼死してしまっては働けるのは私等二人だけじゃ。」

「へえ、あの土地に仮設の店を建てるしかねぇですね」

「そうじゃのう。」


大事な奉公人達が死に、半右衛門は月次組への復讐を企てていた。

神社の奥にこっそりしまった血刀を取り、夜武士の服装で月次組の男達を探した。

見つけては殺した。

人を斬らないと誓ったが、もうそんなものどうでもよかった。

月次組には実の弟がいる。

彼がどんな人生を送っているか、気にならなかった。

もしかしたら今まで自分が斬った中に火ノ助はいたかもしれない。

顔は忘れないが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ