表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

俺は断じて望んでない

「これから俺の言う言葉を書き留めて欲しい」

 俺は目の前にいる友達に重く真剣なトーンで告げた。

「なになに。なんか始まるの?」

 俺とのやり取りを見ていたじゃじゃ馬が寄ってきたがまぁいい。俺の言葉はこの後、後世に語り継がれる名言となるのだから。

 じゃじゃ馬に状況を説明する前の男。こいつは俺の唯一の友達だ。たぶん。最近なんか棘がある気もするがもういい。

 俺は気にせず口を開く。

「明日俺は神になる」

「解散」

 前のやつが去っていく。じゃじゃ馬も消えていく。

「おい、ちょっとまて」

「待たない。じゃあな」

「待ってって」

 俺は去っていく男の腕を掴む。

「もうネタ切れだろ。俺は察した」

「まだ終わってねえ。いいから聞けって」

 俺が必死に抗弁しているとじゃじゃ馬が帰ってきた。

「なになに。なんかあるの?」

 このじゃじゃ馬会話入ってくる時は絶対この言葉になる。機械かよ。

 俺は気をとり直し一息つく。

 その間に男が去っていく。

「ちょっ、おま、待てって」

 なんだよこいつ。どんだけ逃げていくんだよ。まだ俺の渾身の言葉が言えてない。勝手に逃げんな。

「俺トイレ行きたいんだけど」

 ここにきてそいつの発言が最高に笑えた。

 行かせるわけねえだろ。

「ダメ」

「まじでトイレ行きたい」

「俺も行く」

「んじゃ、私も」

「お前はいいからもう帰れ」

「ちょっ、二人だけで何するつもりよ!」

「お前何考えてんだよ」

「なにって……あれでしょ……?」

「その考え完全に違うから帰れ」

「私今遊ばれてる?」

 なんか照れ始めたぞ。どういう心境だよ。

 と、男の方を見ると様子がおかしい。なんだよ。もうやばいのか。

「早く行くぞ」

 俺がそう告げると途端に挙動がおかしくなる男。

「え、そういうこと? 俺まだ心の準備が」

「は? もうやばいんだろ。早くいくぞ」

「ちょっ、待てって。俺そんな趣味ねえし」

 なんかおかしいぞ。何考えてんだこいつ。

「私応援してるからね」

「違うつってんだろ」

「しっかり記録しとけよ」

 男が開き直った。いやまて。何に開き直ってんだよ。

「後で鑑賞会しよ」

 女が携帯を掲げる。しねえから。

「自分の見られるなんて興奮するな」

 こいつやばいわ。こんなやつだったっけか。

「大丈夫。私ちゃんと見てるから」

「見なくていい。てかいい加減このノリやめろ」

 俺がそう言い放つと男の形相に変化が。

「お前そんな簡単に俺を捨てるのかよ!」

 ちょっと何言ってんのか分かんない。

「俺はそんな価値しかないのかよ。やってみなきゃわかんないだろ」

「やらねえよ。ちょっと黙ってろ」

「エスとエムの役割重要だもんね」

 女がおかしな事を言い出す。

「俺がエムか。よし分かった」

 こいつ絶対分かってねえ。さらに追い討ちをかける男の言葉に俺は耳を疑った。

「俺、実は憧れてたんだ。毎晩練習してた」

 ばかだこいつ。嘘か本当か分かんねえけどこいつもうやばい。

 女がおおーとか言い出す始末。感心すんな。

「準備万端だね」

 そう言い俺らの背中を押していく。

 まじか。この流れはまずいぞ。嘘だよな。嘘って言ってくれ。こいつら目が本気なんだが。

 俺は逃げようとした。しかし、何故か二人にがっしりと掴まれる。何この力。取り憑かれたように恐ろしく力が強いんだが。

 そのまま俺は押されトイレへと到着。

「いこいこー」

 女が男子トイレに自らも押し込んでいく。

「お前女だろ。なにしてんだよ」

「私女装だから」

「嘘つけ」

「なら大丈夫だな」

「どう見てもこいつ女だろ」

「女装だから」

 相変わらずこの謎の言葉押しはなんなんだ。どこにそんな自信あんだよ。

 めっちゃ見られてるんだけど。

 こいつら一切気にせず俺を押していく。

 この後どうすんだよ。変な噂絶対たつぞ。お前ら平気なのかよ。と言おうと二人の顔を見ると何か悍ましいものを感じた。まじで取り憑かれてるんじゃね。

 そのまま引きづり込まれ個室部屋に三人。

 まじ?! 嘘だよな。

 俺そんなことしたことねえぞ。じゃねえ。何考えてんだ。

 じわじわ寄ってくる男。女は録画しようとカメラを向ける。

 やべえ。これはまじでやべえ。もう目が本気だ。このままいけば確実に俺はこいつのものになってしまう。こいつもう自我忘れてんだろ。何かに操られてる。女の方も。

 男の掴む力で強すぎて身動きが取れない。

 片手でどんだけ力強いんだよ。女がどこから取り出したのか俺の口をガムテで塞ぐ。

 そして男の手が俺の衣服に触れる。

 嘘だろ。やめろやめろ。

 必死にもがくがビクともしない。

 じわじわと脱がされる俺の衣服。

 手が忍び寄り肌に触れる。

 恐怖でしかねえ。なんでだよ。なんでこんなことに。嫌だ嫌だ嫌だ――


「やめろおおおおおおおおおお」

「お兄ちゃん何叫んでんの?」

 気がつくと俺はベッドにいた。目の前に妹が乗っかってる。重い。こいつまた体重増えたか。

「お兄ちゃん遅い。早く起きてよ」

「夢か……」

「めっちゃうなされてたね。私が乗った時からもう必死だったよ。面白くてずっと乗ってたけど」

「さっさと降りろよ」

「面白いからいいじゃん」

「俺には分かんねえだろ」

「私には分かったよ。めっちゃ暴れるんだもん。楽しかった」

 そう言って俺に向けてピースしてくる。

「いや。早く降りろよ」

「はーい」

「もう絶対するな。わかったな」

「やだ」

「鍵かける」

「鍵開ける」

「鍵ねえだろ」

「鍵作ったからあるよ」

「まじか」

「うん」

「何で作ったの」

「侵入するため」

「最低だわ」

「最高の間違いじゃない?」

「んなわけあるか」

「明日もぐっすり寝てね」

「乗る気だろ」

「当たり前じゃん。あ、もうこんな時間」

「お兄ちゃん朝ご飯食べて学校いくよ」

「最悪の朝だ」

 俺は重い体を起こし、背伸びする。

 すると、部屋のドアが開いた。

「おい。早くこい」

 母親だ。なんて野蛮なやつだ。

「今行く」

「今行きますだろ」

「今行きます」

「はよ」

「はい」

 母親には逆らえない。妹には遊ばれる。もうさんざんだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ