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サハラ・セレクタブル  作者: 長岡壱月
Episode-66.Because/貴女への小夜曲(セレナード)
504/526

66-(0) 前哨地にて

 ガネットにも力を借りた、広域走査から一夜。

 淡雪が捕らわれていたと思しき作業場跡の内外に、冴島隊を含む対策チームの一部リアナ

イザ隊士らが集まっていた。準備に要する時間を稼ぐ為、一晩輪番で守りをしてくれていた

仲間達と交代し、司令室コンソールから持ち込んだ計測機器でもって、アウターの痕跡──エネルギー

の残滓を採取する。

「次、南南西に三十度。ゆっくりな」

「おう。任せろ」

 淡雪を攫った敵の本体が、どれほどの規模か? その数は? そして黒斗ことユートピア

は、何処へ行ったのか?

 散開し、手分けして計測を続ける隊士達が目下欲していたのは、等しくそんな情報に他な

らない。少しでも今は、手掛かりとなり得るものが要る。

「反応自体は、あちこちから採れてるみたいだが……。俺ら素人には判らんな」

「仕方ねえよ。詳しくは持ち帰って、萬波班長達に見てもらわなきゃあ」

「ああ……」

 少なくとも、再び淡雪を追っていったのは間違いない。だが一晩経って、その足取りを辿

るのは難しかった。

 なまじ此処は集積都市の一つ。街全体を網羅するには、それこそ改めてがっつりと広域走

査でもしなければならないが……もしそんな真似をすれば、十中八九敵側も勘付く。

「そう言えば。今朝のニュース見たか?」

「ん? それって、例の東京の?」

「ああ。何だか向こうで、クーデター? が起きたらしいぞ」

 ただその最中、切り替わった話題によって空気が変貌した。スピードガン型の観測器から

延びる、蛇腹のホースのような配管と自身のデバイスを繋げてデータを観ていた隊士の一人

が、そう傍らで作業中の相方に振られる。

 スピードガン型の先端を地面に向け、ゆっくりと左右に振らせつつ歩いている当人。周囲

でそれぞれにローラー作戦をしていた他の隊士達のコンビも、彼の台詞フレーズを聞いてピクリとつ

い反応。思わず眉間に皺を寄せ、或いはじっと肩越しに視線を遣っていた。

「……こっちに来る途中に、ちらっとな。その時はまだ、何処も情報が出揃っていない感が

あったけど……」

 観測器のデータ、波長の変化を視界に捉えたまま、直接話題を振られた側の隊士が言う。

 各社報道によれば、首都集積都市で昨夜、官邸及び“三巨頭”の自宅へ、武装した一団に

よる襲撃があったらしい。しかもそれがアウター、電脳生命体の軍勢による犯行だとの情報

も一部先行。狙われた先がいずれも現政権の中枢であることから、実質のクーデターだと大

見出しを打つ社も少なくなかった。

 任務へ向かう前であったなら、自分達ももっと酷く動揺していたことだろう。下手をすれ

ば、満足に動くこともできなかったかもしれない。

「司令が、特に何も言わなかったってことは……こっちに影響はないのかなあ?」

「どうだろう? 本当に“三巨頭”が狙われたんなら、少なくとも睦月君にとっちゃあ爺さ

んの一大事の筈だろ?」

「混乱させない為に、黙ってたのかもな……。こっちまでブレて、やらなきゃならないこと

を放り出そうものなら、それこそ敵の思う壺なのかもしれん」

 現地の面々は大丈夫なのか? 自分達が、こんなことをやっている暇はあるのか?

 隊士達の間に、不安が広がる。それでも任務は任務だ。作業の手が止まりがちになり、ざ

わつく皆を、冴島がぴしゃりと声を掛けて諭した。それとこれとは話が違う。淡雪が攫われ

たことや、セントラルヤードへの奇襲は、何も進んじゃあいない──。

『……』

 尤も、当の冴島も含めて、面々はきっと嫌な符合を覚えていた。

 少なくとも、今回の飛鳥崎こちらでの動きと、全くの無関係とは思えない。

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