表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サハラ・セレクタブル  作者: 長岡壱月
Episode-58.Target/拗らせた者達の連鎖
442/526

58-(0) 幹部の矜持(プライド)

 水面下、その接触は人知れず行われていた。

 ポートランドないし飛鳥崎市街全域をも見渡せる、とある高層ビル内のいちフロアで、リ

チャード・ビクターは優雅な食事を摂っていた。控える側近や給仕係らを除き、たった一人

で囲むテーブルと料理。暫くそうして、ナイフとフォークを手に舌鼓を打っていた彼だった

が、ややあってこの来客──闖入者の方をちらりと見遣る。

「……何故あの男に、力を与えた?」

 白鳥こと人間態のプライドだった。相も変わらず横柄な態度で、そうじっとリチャード達

を見下ろしている。控えていた線の細い黒眼鏡の男とガタイの良い強面の男、彼の秘書及び

ボディーガードを務める側近二人も、あからさまにこちらを警戒して睨み返してきている。

それでも尚、当のプライドは追及を止めない。

「主流派でなくとも、この国の中枢に関わる人間の一人だぞ? 足がついたらどうする?」

「だからこそサ。それに今はもう、私達の側に管轄が移っている筈なんだガネ?」

 気色ばむ部下達を、サッと静かに制してやりながら、リチャードは悪びれる様子もなく言

った。寧ろプライドに対し、当てつけのような言い方すら使う。ぴくりと、眉間の皺を深く

する彼の反応すらも、何処か楽しんでいるかのように。

「それニ……こうして事後処理の為に私達が来日したのモ、元を辿れば君がしくじったから

じゃないカ。此方にも都合があるンダ。念には念を……だヨ」

 リチャード曰く、もっと深い部分を掌握ないし破壊しなければ、根本的な“地均し”には

ならない。当初は守護騎士ヴァンガードの正体を、人々の間に引き摺り出す心算だったが……それもすん

での所で相手側に掠め取られた。

「正直、意外だったヨ。まさか、自ら正体を明かしてしまうとは思わなかっタ」

「ああ。私も驚いた。自分達にとって不利しかなかろうものを……。やはり人間とは、何を

やらかすか分かったものじゃない」

「ははっ」

 プライドも思い出したのだろう。それまでとはまた別に、眉間の皺が静かに深くなった。

 にも拘らず、一方のリチャードはと言えば、寧ろ笑っていた。側近二人や給仕係が、暫し

手を止めて事のなりゆきを見守っているのも気に留めず、にこやかだった表情それは次の瞬間不

穏なものへと様変わりを見せる。

「それでモ──やり様なら幾らでもある。まあ、見ておくとイイ。引き続きこちらに任せて

おいて貰おウ」

 佐原睦月かれらが透明度を上げたのなら、こちらはその傷痕を更に抉るだけ。

「守るものが多くなればなるほど、ヒーローとは思うように動けなくなるものサ。この国で

合衆国(US)でも、今やそこに大差は無いだろウ?」

「……」

 テーブルに片肘を置き、リチャードは不敵に笑っていた。見下ろした格好のまま黙り込む

プライドとは対照的な態度だ。乗り込んだはいいものの、結局彼は終始“言い負かされた”

体であることも手伝っていたのだろう。


『──』

 そんな二人、或いは場に控えていた側近達を含めたやり取りを、人間態のグリードが更に

物陰からこっそりと覗いていて……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ