表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サハラ・セレクタブル  作者: 長岡壱月
Episode-50.Madness/捻じ伏せる、力
380/526

50-(0) 幕間・冴島隊

 時は少し前、七波沙也香の告別式が行われた日の昼間に遡る。

 冴島及び同隊A班──由香への刺客騒ぎのため、一旦司令室コンソールに戻っていた面々は、ようや

く異変の現状を発見していた。自分達が留守の間、筧の監視・警護を任せていたB班の隊士

達が、変わり果てた姿でそこに在ったのだ。

『ヴぁ~……』

 場所は飛鳥崎の郊外、北西の外縁部。当初連絡の途絶えた地点から、大きく離れた路地裏

の一角だった。そんな人目の付かない物陰に押し込められ、彼らは酷く“ゆっくり”な動き

のまま、ろくに会話も出来ずにいたのだった。

「……何なんだ、これは」

「じ、自分にも分かりません」

「右に同じく……」

 故に冴島達も、大いに困惑する。呟く彼に、傍らのA班隊士達も答えが見つからない。

 確かにB班かれらは、筧刑事の動向をチェックしていた筈だ。なのに当の本人の姿は此処にはな

い。一体何処に行ってしまったというのか? 隊士達が「と、とりあえず運び出そう」「い

くぞ。いっせーのーせっ!」と、数人がかりで彼らを動かそうとしたのだが……罹っている

“ゆっくり”の影響なのか、妙に重くて苦戦している。

 加えて彼らのデバイスは、その調律リアナイザごと破壊されていた。辺りに残骸が捨てら

れたままになっている。

 十中八九、時間稼ぎを意図しての行為だろう。これでは記録ログを確かめる事も出来ない。

司令室コンソールに持ち帰ってサルベージを試みたとして、はたしてどれほど復旧させられるだろうか。

(何がどうなっているんだ……? 皆に一体、何があった?)

 普段温厚な冴島も、流石に険しい表情かおをしていた。辺りに転がっていた人・物、異変の様

子を注意深く眺めながらも、その一挙に流れ込んできた情報量に困惑している自覚があった。

 努めて冷静に。

 少なくとも犯人は、こちらの装備なり内情を、相当程度知っていると思われる。

「落ち着くんだ、皆」

 “ゆっくり”化した同胞達を、わちゃわちゃと運び出そうとする隊士らに振り向きつつ。

 冴島は告げた。まだ彼らに何が起こり、自分達が何を見落としているのかも分からない。

それでも尚自分達に出来ることは、今考え得る最善手──もつれた事実の糸を一つ一つ解い

てゆく作業を怠らないこと。ただそれだけだ。

「彼らの搬送は、人手があれば何とかなる。僕から司令室コンソールに連絡して、寄越して貰うよう頼

んでみるよ。その間に皆は、彼らの足跡を可能な限り調べてくれ。向こうにも、定期報告の

記録は残ってるだろうけど……もっと線と線を詰める作業が必要だ」

『了解!』

 それまで狼狽えていた隊士達の目が、明らかに力強さを取り戻した。自身のデバイスを取

り出す冴島を視界に、それぞれが何人かのグループに分かれ、聞き込みや捜索の割り振りを

その場で話し合ってゆく。

「……」

 通話の向こう、拠点へとコールされる効果音を耳にしながら、冴島は直感していた。

 少なくとも只事ではない。これはアウターに起因する、何らかの力だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ