49-(0) 加害者X
中央署の一件の後、その姿は瞬く間に拡散されることとなった。巷の人々に、その存在が
広く知れ渡ることになった。
守護騎士である。白亜から黒鉄色のパワードスーツへ。一見して主なき等身大のコンシェ
ル達と共に、電脳生命体こと越境種らの頭目が一人・プライド一派と対峙している。署内か
ら飛び出し、手前の広場にて繰り広げられた先の戦いだ。
『……』
そんなネット上の映像の一つを、彼は観ていた。暗がりの室内、デスクトップPCの画面
からの明かりだけを、少年はじっと見つめている。
ただ、その眼差しは──驚愕と呼ぶにはどうにも噛み合わない。
(……なん、で?)
姿形こそ人間ではなかったものの、声で分かる。多少記憶にあるそれよりもくぐもって聞
こえはしたが、確かに引っ掛かる。何より見覚えのある個体達が、この非日常を現実に引っ
張って来たような面子の中に交っていたからだ。
やっぱり間違いない──あいつらだ。
(何でだよ……?)
あの時俺達を叩きのめした、変てこでデタラメな奴だ。確か守護騎士といったか。詳しい
情報はこっちに来てから知ったが……自分にはもう憎い気持ちしか湧いて来ない。少なくと
も己にとっては“理不尽”の象徴だったから。
いや、何より疑問なのはあいつらだった。怒りが込み上げてくる理由は、そこに奴らが居
たからに他ならない。
……大江の野郎、いつの間にか連中の仲間になってたのか。こっちはそいつらにボコボコ
にされたっていうのに。元は同じ、電脳研のメンバーだっていうのに。
ふざけるな。ふざけるな! 何でお前らが?
てめぇら、何をしれっと「海沙さん」と仲良くなってやがる……??
(許せねえ……)
かくして少年は、恨みを募らせる。思いは日々深くなる。
画面の向こうでは、プライドらを追い払って勝利を収め、まさに“英雄”となった睦月こ
と守護騎士と対策チームの仲間達が映っていた。あの日あの場所で巻き起こった人々の歓声
が、映像の中で轟いていた。
(許せねえ……!!)
俺をダシにしてお近付きになりやがって。俺一人を除け者にしやがって。
ギリッと、彼は強く強く歯を噛み締めていた。独り暗がりの部屋の中、再生される映像を
睨みつつ、やがてその瞳に赤く暗い炎を宿して。




