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サハラ・セレクタブル  作者: 長岡壱月
Episode-44.Gossip/悪意に差す灯を
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44-(4) 狙い定めて

「ナナミ、ユカ……コロス」

「ナナミ、ユカ……コロス!」

「だーっ!! 五月蠅いな、お前ら!?」

 七波宅の前に再び現れたミサイル型のアウターは、アウター“達”だった。家の中に居る

筈の彼女とその母親を連れ出そうとした國子・仁率いる隊の面々に、突如として降り注いで

来たのだった。

 周囲の警官達は既に軒並み倒され、野次馬や記者らも散り散りになって逃げ去ってしまっ

ている。現場に居合わせた二人は、半ばなし崩し的にこの押し寄せるアウター達と交戦せざ

るを得なかった。

「くそっ! 一体何がどうなってやがる!?」

「この前、佐原が倒した筈だよな……?」

「もしかして……量産型か?」

「考えるのは後です。今は倒し切ることに集中してください」

 壊れたレコードのように、繰り返し繰り返し例の台詞を呟いているミサイル達。

 予想外の出来事に──何より今度は何故か増えている相手に、仁達は少なからず慌ててい

た。そんな数の力で押されがちな彼らを、國子は自身の朧丸を操りながら叱咤する。「この

ままでは、彼女とお母さんが……」戦っているのは単に自衛の為ではない。護る為の戦いな

のだ。

「一匹だって中に入れるなよ! 横一列で壁を作れ!」

「取り漏らしに注意してください。なるべく時間を──陣形の維持を!」

 幸い個々の戦闘能力は、以前と変わりないようだ。國子と仁、二人を先頭に隊士達はヒッ

トアンドアウェイを心掛け、一体また一体とこれを撃破してゆく。

「ヴォオオオオッ!!」

「ナナミ、ユカ……コロス! コロス!!」

 しかしそれ以上に、ミサイル達は次から次へと降って来ていた。こちらが倒し切れたか切

れないかの間に、第二波・三波と同じ姿形の個体達が追加され、キリがない。故に國子や仁

達は、次第にその数の力に押し返され始めていた。

「ぐっ……!」

「このままでは──」

 だがちょうど、その時だった。苦戦を強いられる一行の背後、頭上から、聞き覚えのある

呼び声とつんざくような滑空音が聞こえた。「下がって!」ホーク・コンシェルに身を包ん

だ睦月である。一旦低空飛行の突進でミサイル達を引き離し、そのまま即座に二度、百八十

度に旋回。銃撃モードのEXリアナイザに、ペッカー・コンシェルの連射力を付与し、場の

これらを瞬く間に片付ける。

「大丈夫? 怪我はない?」

『七波さん達は無事ですか?』

「ああ。何とかな……」

「助かりました。感謝します。彼女達はまだ家の中です」

『國子、大江。ここは睦月に任せて、早く彼女達を。冴島隊長達にも連絡を飛ばしたが、距

離からしてすぐには合流出来そうにない』

 応よ! 司令室コンソールの皆人から、そう通信越しに指示が飛び、睦月達は手分けして動き出した。

尚も追加で降って来るミサイル達を睦月が迎え撃ち、その間に國子・仁隊が七海宅内へと

向かおうとする。

「──やはり、余計な邪魔が入ってやがるのか」

 しかしである。次の瞬間、また新たな人影が現れた。コツ、と靴音を鳴らして勇が場に姿

を見せたのだった。睦月達が、或いはミサイル型のアウター達が思わずこれを見遣る。既に

手にしていた黒いリアナイザを、トントンと軽く肩に担いで叩きながら、彼は不機嫌そうな

面構えで一同をざっと睨み回す。

「変、身」

『EXTENSION』

 コードを入力、銃口を掌に押し立て、黒いバブルボールのような光球が彼を包んだ。やや

あってその身は漆黒のパワードスーツに身を包んだ、龍咆騎士ヴァハムートへと姿を変える。

「瀬古さん!?」

『……拙いな。これ以上敵が増えては……』

 司令室コンソールにもこの一部始終が映ったディスプレイ群を見上げながら、そう皆人が通信越しに

呟いている。

 だが一方の仁、現場の仲間の一人は少し違った反応を示していた。じりっとこちらに近付

いて来る勇こと龍咆騎士ヴァハムートに警戒はしながら、されど口元には小さな嗤いが浮かんでいる。

「いや。あいつは佐原と戦いたがってるんだ。なら、その間に──ウッ!?」

 しかし彼のそれは、はたして油断だったらしい。通信越しにチラリと、渋い表情かおをする皆

人に、仁は追加の提案をしようとしたが……直後他ならぬ勇によって吹き飛ばされていた

のだ。

 銃底を回転させ、ツヴァイの一つ『ACCEL』の電子音。

 一瞬の隙を突き、霞むように加速した彼の拳がもろに、グレートデュークの土手っ腹にめ

り込んでいた。思わず目を見開く睦月達。制御の為に、ある程度同期していた仁自身も同じ

くダメージを受け、この鎧騎士のコンシェルは七波家の壁に大穴を空ける。

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