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サハラ・セレクタブル  作者: 長岡壱月
Episode-38.Fakes/想い、交錯する先に
287/526

38-(0) 激写

「……ッ?! 由良!」

 目覚めた廃屋の広間で、筧はようやく行方を眩ませていた相棒の姿を目の当たりにした。

逆光の日差しの中、窓際の位置に倒れている──血に汚れ、仰向けになっているのを見つけ

て、咄嗟に駆け寄ろうとする。

 ──やっと見つけた。

 ──すぐに助けなければ。

 だがしかし、そんな身体の衝動的な反応とは裏腹に、その思考は辛うじて冷静だった。

 切欠は、彼の周りに広がる血だまりを、ぐちゅっと踏み締めたその直後だ。

(これは……血糊?)

 逆流するように溢れてきたのは、違和感。筧は思わず足を止め、そのすぐ真下に転がる由

良の姿を見つめ直す。

 ……そもそも、この状況はおかしい。

 こいつは何日も行方知れずになっていたのに、これじゃあまるで「今し方」殺されたかの

ようじゃないか。それも自分が連中に捕まって、また知らない場所まで移された──目を覚

ましたのと、ぴったりタイミングを合わせるように。

 いくら何でも、出来過ぎている。

 筧はそう直感していた。しかし実際目の前で眠っている、死んだように倒れたまま微動だ

にしない由良の顔は、やはり当の本人にしか見えなくて……。

「──!?」

 ちょうど、そんな時だった。思考の中の違和感と、目の前に映っているものとの齟齬にじ

っと眉間に皺を寄せていた筧の背後から、パシャリとある意味で場違いな音が聞こえてきた

のである。

 筧は半ば反射的に振り向く。だが時既に遅かった。いつの間にかこの広間の出入口の壁際

に、自分以外の第三者の姿があり、こちらにデバイスのカメラレンズを向けて静かに嗤って

いたのだった。

「……」

 にいっと、憎悪とねちっこい嗤いを浮かべてしたり顔をしている杉浦、もといライアー。

 故に筧は次の瞬間、自らの身に起きた状況の拙さを悟る。青褪める。

 由良の死体。血だまり。その前で古びてはいても、ナイフを片手に突っ立っていた自分。

その三つのさまが、今奴に撮られた……。

「っ、てめえ!」

 嵌められた。そう理解して思わず叫んだ直後、背後で更にあり得ないことが起きた。

 由良がむくりと立ち上がったのだ。まるでゾンビ映画のワンシーンにでも遭遇したかのよ

うに、杉浦に向き直った筧の背後を、この血に汚れた由良の姿をした何か──偽物が、逆再

生を掛けられたかの如く取ったのだった。

「!? そうか、やっぱりお前は──」

 完全に前後を挟まれた、退路を塞がれた格好。

 肩越しに全てが仕組まれたものだったのだと理解し、この由良の皮を被ったアウターらし

き化け物を睨もうとしたその時、ふと杉浦は何かをこちらに投げて寄越してきた。筧は反射

的に顔にぶち当たる寸前に掴み取ると、怪訝な眼でそっと確かめてみる。

「……これは」

 それは短銃型をした独特なツール。いわゆるリアナイザだった。

 不快──今までの経緯から蓄積してきた悪感情と、目の前に次々と投入される出来事に未

だ頭がついて来れないが故の混乱。

 ニヤリと、杉浦はそんな戸惑う筧の表情を見て哂っていた。先程よりも、彼に向ける憎し

みの類は、一層顕著になっているようにもみえる。

「もう逃げられねえぜ? 此処でお前を殺っちまうのは簡単だが、そうはしねえ。たっぷり

と……“利用”してやるよ」

 限界まで張り詰めるように緊迫する、見知らぬ廃屋の中。

 罠に嵌められ為す術なく身構える筧に、ライアーはその姿を撮ったデバイスをひらひら片

手にちらつかせたまま、言う。

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