28-(0) 龍咆騎士(ヴァハムート)
「嘘、だろ……?」
まさにそんな皆の絶望感を代表するように、仁は呟いた。
西大場、日没後の雑木林。アウターの気配を察知した睦月達は、そこである意味最悪の形
でもって彼との再会を果たす。
『……』
瀬古勇だった。玄武台の事件、タウロスとの戦いの後、行方を眩ませていた今回の尋ね人
である。
しかし三度対峙した今、彼の姿は変貌していた。新たなアウター・ドラゴンをその闇色の
リアナイザに取り込み、一行の目の前で“変身”してみせたのだから。
黒を基調に統一された禍々しいパワードスーツ姿。ゆっくりと光った両眼はドラゴンのそ
れと同じ錆鉄色を宿し、まるで守護騎士を反転させたかのような意匠で立ちはだかっている。
「──ふむ。計算通り、装着は成功みたいだね」
そんな人知れぬ波乱の一部始終を、彼らは観ていた。
薄暗い地下のサーバールーム。“蝕卓”の面々である。
いつものように集まった面々、円卓に着いた六人とは別に立って、白衣の男はそっと眼鏡
のブリッジを押さえながら微笑った。一同が視線を向ける壁面には、勇らの様子を映し出す
大きなホログラム画面が展開されている。
「守護騎士に対抗する存在、ドラゴンを宿す者──もし名前をつけるのならば、差し詰め
“龍咆騎士”とでも呼ぼうか」
くくく。押し殺すように笑うシンは、そう心底愉快そうに呟く。
円卓の面々が、静かに瞳を光らせていた。彼の発言を記憶する者、この新たな戦力を警戒
する者。口にこそ出さないが、それぞれの思惑が暗がりの中で交錯する。
ミラージュに密命が下っていたのは、全てこの為だ。
彼の能力で守護騎士の詳細な構造を把握。その上でこれらを上回るシステムを開発する。
この白衣の男にはそれができた。勇用にドラゴンをチューニングし、かの天敵に対抗する
為の力として生まれ変わらせたのだった。
「さあ、お手並み拝見といこう。運用試験開始だ」
同時、画面の向こうで龍咆騎士──黒い鎧を纏った勇が咆えた。
シンの二つと、他の面々六人分、十二の揺らいで軌跡を描いた眼光。
延々と低く、駆動音を鳴らし続ける暗がりの中、彼の狂気を孕んだ喜色がこだまする。




