表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サハラ・セレクタブル  作者: 長岡壱月
Episode-24.Heroism/君がいるから憧れた
179/526

24-(0) 錆緑の竜

「……さようなら。先輩」

 失望し、一転して冷たく見下した眼と共に、スーツ姿の男が呟いた。それを合図として、

金色の騎士甲冑──セイバー・アウターがその剣を振り下ろす。

 睦月は、動けなかった。同じくセイバーの能力でコンシェルを掻き消された冴島達が叫ぶ

も、吸い取られたエネルギーはすぐには戻って来ない。

(くうっ。身体が……)

 力が入らず、項垂れる首元へと迫る刃。

 これまでになかった事態に、守護騎士ヴァンガード姿の睦月は正直もう、ここまでかと思って──。

「ぬっ!?」

 だがイメージした切断は来なかった。一向に刃が触れないことに異変を感じ、恐る恐る顔

を上げると、そこにはセイバーの剣をがしりと片手で受け止める別の怪人の姿があった。

 全身錆鉄色のトカゲ型──いや、ドラゴンのアウター。隆々とした巨躯はつい先程まで睦月らを

圧倒していた剣を容易く受け止め、口からフシュウ……と、熱を帯びた息を漏らしている。

「な、何だ、こいつ……?」

『アウターです! しかも、もの凄いエネルギー量……。一体何者……?』

「……何のつもりだ? 何故我々の邪魔をする?」

「おい、セイバー、何をやってる!? そんなデカブツさっさと倒しちまえ!」

 まるで庇われる──乱入されたかのように。驚いて見上げる睦月やパンドラを余所に、当

のセイバーやこの召喚主の男は怪訝に、そして苛立ちを隠せないでいた。

 しかし対するこのドラゴンのアウターは、低い唸り声こそ上げど応えない。その膂力に任せて

ぐいぐいと、セイバーを剣ごと押し返すばかりで意思疎通が取れているようには見えない。

もしかしたら見た目の凶悪さに相応しく、かつてのボマーなどのように狂化されているタイプ

の個体なのかもしれない。

 オォォ……! そして次の瞬間、ドラゴンのアウターはセイバーを押し飛ばした。思わずふらつ

き、剣を構え直す暇も与えずに襲い掛かってくるこの同胞に、セイバーは守勢に回らざるを

得ない。

「あ、あれ? もしかして仲間割れ?」

『少なくとも、加勢に来た訳じゃなさそうですね。とりあえず助かったみたいです』

『そのようだな。睦月、今の内だ。撤退しろ。このままじゃジリ貧だ。それに、当初の目的

ならもう果たしている』

 図太い鉤爪の豪腕を振り回し、セイバーに火花を散らせるドラゴン

 いきなりの展開についていけない睦月達に、通信越しから皆人が指示を出した。コクリと

頷き、物陰の向こうにいた冴島達もこちらを見遣って首肯を返してくる。

 ドラゴンとセイバーが戦っている隙をみて、睦月達は急いでその場を後にした。男がそれに気付

いて止めさせようともするも、狂気のままに襲い掛かってくるドラゴンに頼みのセイバーは終始押

されっ放しだった。

「くそっ! 逃げられ……。っていうか、何であいつ、セイバーの剣が効いてないんだ」

 十数度目かの火花。だがふと睦月達が逃げていったのをまるで確認するかのようにちらっ

と横目を遣ると、ドラゴンのアウターは突然大きく背中の翼を広げて舞い上がった。轟と舞う風圧

にセイバーやスーツの男が思わず仰け反る中、この錆鉄色の闖入者はまたしても理由わけも告げ

ぬまま飛び去っていってしまう。

「……一体、何だったんだ?」

 ぽかんと、その場に取り残された男とセイバー。実際に刃を交えたセイバーに至っては、

自分の力が通じなかった事実と共に、剣を地面に差して杖代わりにしながら少なからず肩で

息をしている。

「……」

 そんな二人、事の一部始終を、工場の物陰から見つめている人影があった。

 背格好からしてまだ少年だろうか。影になった暗がりに潜み、その手には間違いなく引き

金をひいたリアナイザをぶら下げている。

「この程度か……。同じ候補者だったと聞いていたんだが、大したことないな」

 もう放っておくか。静かに呟き、そっと引き金を離す。場に取り残された格好になった男

とセイバーを暫く観察していたものの、この少年はやがて興味を失ったのかそのまま人知れ

ず踵を返して物陰の奥へと消えて行った。

「奴は──俺の得物だ」

 ギロリ。暗がりの中でも映える血走った眼。

 はたしてその少年は、佐原睦月と因縁のある人物だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ