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浅葱色の縁(えにし)  作者: 高嶺 あやな
壱章・陰(いん)の花 陽(よう)の花
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見られた秘め心

「そうですか・・・ありがとうございました。」


次の日、美緒は再び職員室を訪れていた。

肩を落とした美緒が職員室から出て来ると、廊下で待っていた葵が歩み寄ってきた。


「美緒、どうだった?」


無言で首を横に振った美緒に、葵はそっかと眉尻を落とす。


「本当に落としたの?生徒手帳。家にあったり鞄の奥に入り込んでたりしない?」

「ううん。家は探したし、鞄の中も全部ひっくり返して見たから無いよ。それに、昨日ここら辺で男子とぶつかって転んだからその時落としちゃったのかもしれない。もしかしたら職員室に届いてるかと思ったんだけど・・・。」


二人はそのまま歩きながら昨日男子生徒と激突した場所に向かう。


「誰とぶつかったの?知ってる人?」


葵が訊ねると美緒は(かぶり)を振る。


「知らない人。ネクタイが青色だったから多分高等科の人だよ。」


誠蘭は中等科と高等科が同じ敷地内に建っている。中には共同で使用している建物や部屋も有る為、身に付ける物で中等科と高等科が区別出来るようになっているのだ。


美緒が落とした生徒手帳もその1つだが、上履きを始め、男子はブレザーのネクタイ、女子はリボンの色などが高等科は青、中等科は赤に指定されている。


「高等科かぁ。じゃあその人見つけて聞くのも難しそうだね。」

「うん・・・。」


一言頷いた美緒はそのまま顔を上げない。


「み、美緒。いくら落としたからってそんな落ち込まなくても・・・。最悪再発行してもらえばいいんだし、ねっ?」


ーそう、そうなんだよね。再発行してもらえば全然問題ない!問題ない・・・んだけど・・・それじゃあ困るんだよぉ。だって・・・あれには・・・。ー








高等科東棟の屋上。

上月遡夜は座ってフェンスに(もた)れながら、コーヒーを飲んでいた。そして昨日拾った生徒手帳を手持ちぶさたな片手でペラペラとめくっている。


「おい、遡夜。何だよ、またお前その手帳見てるのか?別に何も書いてなかっただろ?」


「うるさい。」


そこに遅れてやって来た陽介に相変わらず視線すらもくれず一言で答える無愛想な遡夜に陽介は溜め息をつく。


「大体、学校発行の生徒手帳を重用してる奴なんてそんないないだろ。身分証明として持ってる様なもんだって、殆ど。何回見たって同じ。いい加減返してあげたら?本人に。」


話を続ける陽介の言葉をまるで耳に入れていないかの様に遡夜は無視したまま何も書かれていない手帳をながめている。


ー?ー


と、ふと手帳の表紙とカバーの間の下の方から少しはみ出した紙切れを見つけた。


遡夜はカバーを表紙から片側外すと、紙切れを間から取り出した。


ー写真?ー


そこには一枚の写真が小さく切り取られた物が入っていた。





ー佐倉美緒とー





ー高梨日向・・・ね。ー





美緒と日向。その写真は部活で撮られた時の物だろう。二人とも胴着姿で仲良くこちらに笑顔でピースを向けていた。



ーこんな顔する時もあるんだな。日向(あいつ)も。ー




「どうした?遡夜。」


急に手帳を捲る手を止めた遡夜の手元を覗き込む陽介。


「何でもない。」


そう言うと遡夜は手帳を閉じ、さっさと自分の胸ポケットにしまった。

そして自分の横に置いてあったコンビニ袋の中からコーヒーを取り出すと、陽介に差し出しながら言った。


「そんな事より陽介、練習試合しないか?」

「練習試合?」

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