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第四話

 そして、話は今日に至る。三嶋の家の前にいるあたしと美恵。

 思いつめたあたしは、なんとしても三嶋の口から事実を聞こうと三嶋の家まで来たってわけ。

 電話やメールなんかじゃ駄目。直接確かめてやるんだから。


「加奈子、悪いこと言わないからもう帰ろう? そうしたほうがいいよ。ね?」


 美恵がまだ青い顔してあたしの服の裾を引っ張ってる。

 まぁね、三嶋の家だって、パソコン部の佐々木君に勝手に聞いたんだし、あたしもそう思わないこともないけど……。


「美恵が言ったんだよ? 自分から確かめろって」

「言ったけどさぁ、何もここまで……。学校でもいいじゃん」

「だめ。三嶋が恥ずかしいって言うし、月曜日まで待てないから。ここまで来ちゃったんだし、もう後には引けないのよ」


 そう、あいつにもっとあたしを好きになってもらうためだもん。もうなりふり構ってらんない、何だってするよ。


 思い切ってチャイムを鳴らすと、美恵のため息と同時に、は〜いって間の抜けた声がした。三嶋の声だ。家の中からの足音がだんだん大きくなって、ドアが開くと同時に、見慣れたあいつが顔を出した。


「えっ! 木原さん!?」


 三嶋は、あたしの顔を見るなり目を見開いた。突然来たから、やっぱり驚いたんだろう。

 うん、でも美恵じゃなくてあたしの名前呼んだ。そんなことが、何だかすごく嬉しい。


「遊びに来た」


 そう言って照れ笑いを浮かべるあたしに対して、三嶋は明らかに困惑した顔になった。……ショック。そんな顔することないじゃん。


「……突然どうしたんですか?」


 三嶋がそう言った時、家の奥の方から、こっちに近づいてくる足音と一緒に声がした。


「英次、お客さん?」

「いや、母さん……部屋にいていいから」


 三嶋が止めようとするのも気にせず、ドアから顔を出したのは女優みたいに綺麗な女の人。


 ひとつ、新たな発見。三嶋って家じゃ英次って呼ばれてるんだ。知ってはいたけどそんなに聞き慣れない、三嶋の下の名前。あたしの中じゃ三嶋は三嶋だけど、いつか、名前を呼べる日があたしにも来るのかな。


「あら、英次に女の子のお客さんなんて。しかも二人も!」


 女の人はそう言って、驚きつつも感激したように両手を頬に当てている。

 三嶋が母さんって呼んだからお母さんなんだろうけど……。はっきり言ってあんまり似てない。遺伝子ってどうなってるんだろう。


 それにしても、三嶋もさすがにお母さんに対しては敬語じゃないんだ。当たり前だけど。いつも敬語で話してるのしか見たこと無いから、なんかすごく違和感がある。

 彼女のはずなのにあたしには敬語でしか話してくれないのはやっぱり、距離を感じてるから……? なんて、そんなことを考えてるとまた気分が落ち込んできた。


「母さん、ちょっと外に出て話してくるから」


 三嶋は早口でそう言った。何だか三嶋、焦ってるみたいに見える。やっぱり親に見られるのは恥ずかしいのかもしれない。三嶋は靴を履こうとしたけど、三嶋のお母さんがそれを許さなかった。


「何言ってるの、上がってもらいなさいよ。寒い中せっかく来てくれたんだから」

「えっ!」


 三嶋のお母さんがそう言ってくれたのに三嶋ときたら、動揺してまた声を上げた。

 あたしは少しムッとした。そんなに嫌がることないのに。


「ごめんなさいね、この子、女の子の友達なんて家に来たことないものだから、照れちゃってるのよ」

「か、母さん!」

「英次の言うことなんて気にしなくていいからね。さぁ、どうぞ。温かい紅茶を出すわね」


 なんて言うか、三嶋のお母さんってすごい。

 三嶋は嫌がってるみたいだけど、あたし達は三嶋の家に上がることになった。


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