15円増しのポニーテール
今日は安心安全のしろかえでです(#^.^#)
4回目の引っ越しの荷物整理で古い年賀状の束が出て来た。
そう言えば2025年の年賀状はいったい何枚来たんだっけ?
今はスマホで『あけおめ』の時代とは言うけれど……
僕宛に来る年賀状は会社へ送られて来る仕事関係の物ばかり。
マンションの郵便受けに収まる束はめっきり薄くなった。
無理も無い。
平均すれば4年に1回は引っ越ししているんだ。
昔の知り合いからは……きっと僕は行方不明だ。
もっとも……愛と別れてからは
僕は意識して、それをやっている節があるけど。
愛とは大学で同じゼミだった。
お互い同じ目標を抱いていて
切磋琢磨から育まれた愛だった。
同じ業種のライバル企業へ各々内定が決まった時
「僕たちの関係はこんな事で壊れやしない」
と婚約をした。
けれど、結婚式の時は困ったなあ……
仲人はゼミの教授夫妻にお願い出来たけど……
結婚式にはライバル企業同士が鉢合わせ。
だから僕は……自分の会社の上司や先輩に「妻はゆくゆくは退職する予定」と根回ししたっけ。
新婚時代は二人共忙しくも充実した日々を過ごしていたから……
結愛を身籠った時の愛は戸惑いを隠す事ができなかった。
それでも話し合いを重ね、結愛を産もうと決心した時の愛の涙を……
僕は忘れる事ができない。
けれど、今まで抜きつ抜かれつしていた“双六”で……愛は『1回休み』を引いてしまった。
そんな愛が本格的な復職を果たしたのは結愛が三歳の頃。
僕は昇進レースの真っただ中。愛はキャリアを取り戻すのに必死だった。
それでもお互いに気遣ったつもりだったけど……
次の年の年賀状は家族写真では無く、四歳になった結愛が……満面の笑みでロッキングポニーに乗っている写真だった。
年賀状の束の中から12年ぶりに出て来たこのディズニーキャラクターの年賀状は未使用の年賀状に挟まれて、この1枚だけが残っていた。
結愛という名前は僕が考えた。
僕の『優』と妻の『愛』から『ゆあ』という読みを、二人の愛を結ぶ者としての『結愛』を……
こんな願いを込めて付けた名前だったのに……
僕は優しくなくなり、妻は愛を見失った。
『お互い“鈴木”だから離婚しても名前だけは困らないね』
こんな冗談が本当になってしまった。
ごめんよ、結愛!
愛、申し訳なかった……
あの頃の僕は……あまりにも幼過ぎた。
いや、今、不覚にも涙を零してしまった僕も
大して成長していないのかもしれない。
そうだな……
この年賀はがきは僕が持つべきものでは無い。
彼女達が……僕の様に引っ越ししていない事を祈りつつ、僕はこの年賀状を折れない様にと未使用の年賀はがきでサンドイッチにして封筒へ収め、彼女達の住所を認めた。
そして12年ぶりの午年がやって来た。
元旦の朝、
マンションのメールボックスへ辿り着くまでに
もう、僕には縁の無いお雑煮の匂いを嗅いだ。
元旦早々、自分の浅ましさを見せつけられた思いで苦笑いし
僕はメモを見ながらメールボックスのダイアルを回す。
右へ2回回して『6』そして左へ戻って『2』
メールボックスを開けると年賀状の束が顔を覗かせた。
今年はまた一段と薄くなったな……
部屋に戻った僕は正月休み中には荷解きをしようと積んである“段ボール塚”をくぐり抜け、コタツの中へ下半身を突っ込んだ。
天板の上に散らばっているビールの空き缶と蓋がくっ付いたまま中身を飲み込まれたどん兵■天ぷらそばの抜け殻を押しやり、ティッシュで吹き清める。
留めている輪ゴムを外し、年賀状を1枚ずつテーブルへディールしていると、どこか違和感と……見覚えのあるディズニーキャラクターデザインの宛名面に手が止まった。
差出人は書かれていない。
ひっくり返して見た通信面は……
セーラー服を着たとびきり笑顔のポニーテールの美少女
その写真の下には
鈴木 愛
鈴木 結愛
の名前と
このあいだ、僕が認めたのと同じ住所が印刷されていた。
ああ、これは……『サンドイッチのパンだ』!
だってその証拠に宛名面には
『2014年賀』の印刷とオシドリの柄の50円切手が貼られていたから……
おしまい♡
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