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第五章 末路

刹那から貰った百合の髪飾りと同じ溶けない氷に覆われた屋敷は村の恐怖の象徴となった。

真の冬の巫女を虐げ続けたことにより冬神の怒りに触れた結果、村の拠り所として親しまれていたというのに誰も寄り付かなくなったそうだ。

中で働いていた使用人達も今だに屋敷の中で氷漬けのまま。助けに入ろうとした者も例外ではなく刹那の術によって氷に覆われてしまう。

誰も寄り付かなくなった屋敷は荒れ果ててゆき最後は崩れ去ってしまうだろう。中にいる者を道連れにして。

瑠璃奈を冬の巫女として崇めていた村も例外ではなかった。

私が住んでいた村は四季神の加護を受けていたから、作物も豊作で、魚等もよく獲れる土地だった。

けど、私への悪行と冬神の逆鱗に触れた事が他の四季神に知れ渡ったことでその加護が受けれなくなった。

加護を失った村は全てが枯れてゆき何も育たない不毛の地と化した。

そして、瑠璃奈が冬の巫女として村中を練り歩き、私の異能を利用して村人の傷や病を癒していたが、私と瑠璃奈がいなくなった後は施しを受けれなくなり重篤化する者や命を落とす者が一気に増えたらしかった。

そこに来て疫病が蔓延し、村人の多くが亡くなったともちゆきくんから聞いている。

あの村には良い思い出はない。

あるとしたら父さんと母さんが生きていた頃の記憶だけ。懐かしく楽しい家族の思い出だけだったから村がどうなろうと関係なかった。

だから、馬鹿みたいに結託していた村人同士が食料等を取り合い、最期は殺し合いになって滅んだと聞いても全く響かなかった。村がどうなろうと私にはどうでもよかったと言った方がいいだろう。

村から四季神の加護を消したのは春神・(ほむら)だった。刹那と同じ四季神の一人で春を司る神様。

どうやら彼もこの村と叔母達に恨みを持っていたらしい。

突如現れた春神に村の皆は固唾を飲む。


「刹那さんからの頼み事でもあるけど、個人的にもこの村にはいろいろ許せない所があるからね」


許せない。村長が慌ててどうゆう事ですと聞くと焔は包み隠さずこう告げたらしい。


「自分達の道具として一生使いたいが為に"お義姉様"を此処から逃さない為に"僕の妻"を娼館に売るとか言って脅してたんでしょ?そんな奴らが住む村に僕らの加護を持つ資格なんてないよね?」

「そ、そんな、あれは偽の巫女の家族が…!!」

「そうだとしても、妻の家族を焼き殺した愚行をアンタらは加担してた。妻とお義姉様は助けを求めたのに貴様らは無視した。残念だけどそんな人殺しばかりのこの村は死んで当然。氷漬けのあの屋敷と一緒にね。此処で生まれたばかりの子は可哀想だけど」


焔は加護を消さないでほしいと懇願する村人に構う事なく実行させた。

そして、村は枯れ果て、屋敷も崩れ去った。中にいた氷漬けになった使用人を巻き込んで。

殆ど屋敷の瓦礫で覆われていたらしいけど、元は使用人だったガラスの様な破片が飛び散っていたという。

後から刹那から聞いたことだが、焔の言う妻とは私の妹の絵梨のことだった。

あの火事で離れ離れになりしばらく連絡が取れないままだったがようやく絵梨の無事を知ることができて安心したが、まさか春神の花嫁になっていたなんて予想外過ぎてとても驚いてしまった。

絵梨もきっとすごく驚いているに違いない。

近々絵梨に会えるだろう。巫女でも四季神の妻としてではなく、家族として姉妹として再会したいと私はその時を楽しみに待つことにした。


そして、瑠璃奈と叔母の末路だ。

今の村と同じ不毛の地で極寒の地でもある場所に送られた2人は必死になって暮らしてきたそうだった。

だが、醜い老婆となった瑠璃奈は見た目だけではなく頭も壊れてゆき痴呆が始まってしまったそう。日に日に痴呆は酷くなる等、叔母は常に疲労が絶えなかったらしい。

朝は何処かへ行こうとするのも必死に止め、夜は幻覚が見えているのと妄想が激しいせいで叫ばれる為眠れず、瑠璃奈が垂れ流した排泄物等を処理する毎日。

母親の事も忘れて、徘徊癖と暴力的になり手が負えなくなってきた頃に叔母の心がついに折れてしまった様だった。

叔母は瑠璃奈を道連れに住んでいたボロ屋に火を放ったそうだ。私達家族にした事が自分達に返ってきた形で心中したのだそう。

父さんと母さんの言葉通りだった。どんなに苦しくても必ず報われる。

見た目がどうあっても、村の誰からも愛されなくても、叔母や瑠璃奈達に道具として扱われても生きることをやめなければ必ず報われる。

もちゆきくんが紡いでくれた刹那との出会いが私を導いてくれたのだ。







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