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第4話:君のために頑張った日。


「いってきまーす。」


バイトを受ける為お昼頃、家を出てひだまり珈琲店へと向かった。




そして到着。


私はいつにも増して汗をかいており緊張した様子でお店の扉を開けた。


カランッカランッ


「いらっしゃいませ。」


昨日の青年が挨拶しながらこちらを見ると少しヒョッとした顔をしていた。


そんな青年を横目にテーブル席ではなく近くのカウンター席に座り、どうやってバイトの件を頼もうか考えていると店長がこちらにやって来て注文を聞いてきた。


ここで私の第一声発言・・・


「ココデ……ハカラタセテクダサイ。」


がっ・・・失敗・・・!


緊張のせいで棒読みな上噛んでしまった。

やっぱ…来るんじゃあなかった…


「働かせてください……かな?」


「!?………はい!」


言葉の意味を汲み取ってくれた店長は私に優しくそう言ってくれた。


助かった…察しの良い人でとても助かった…


「良いですよ。」


やった!


「ただし…」


!?


「私にゲームで勝ったらです。」


ゲーム…?スマブラとかマリカーとかか?

私はその手のゲームは苦手だ。昔友達の家でやった事はあるが……惨敗だった…


「私は年寄りなのでテレビゲーム等ではありませんよ。」


「今からするのはトランプカードを使ったゲームです。」


トランプか…ならシンプルにババ抜きやポーカーと言ったところか…


「名は……トランプサムバトル……です。」


トランプサムバトル?聞いた事の無いゲームだ。


「これは私の考えたゲームです。ルールは分からなくて当然……でも安心してください。ルールは教えますよ。朱美(すみ)君…トランプを持ってきてくれます?」


「はい!」


朱美(すみ)と呼ばれた青年は元気良く返事をし奥の部屋に急ぎ足で入っていった。


「この店にはあまり人が来ないので良く常連さんとポーカーやチンチロをしたりして遊んでるんですよ。」


朱美がトランプを取りに行っている間店長は自分の事について話し始めた。


「そして勝負をする時は毎回何かを賭けてるんですよ…お金を賭けたら犯罪なので私はコーヒーを。常連さんは持ってきたお菓子を賭け勝負をするんです。」


「まぁ…何が言いたいのかと言うと私は賭け事が好きなんです。ですので今からやるゲームであなたは何か賭けて貰います。」


店長は話を続けながら日当たりの良いテーブル席に移動し座った。


「私は先程ゲームで勝ったら雇ってあげると言いましたがそれは撤廃です。働く事を許可します。」


やった!なんか受かった!

特に何もしてないけど雇って貰えた私は内心ほっとしていた。


「その代わりに賭けて貰うものは…」


「給料。」


!?……給料だとっ!


「安心してください。法に触れないように細心の注意を払います。」


「私のお店ではその日の内に給料を払います。して…その肝心の値段は五千円。」


五千円……バイトした事ないから高いのか安いのか、はたまた普通なのかが分からない……


「ですがゲームをするにあたって特別に六千円とします。理由を説明しますと、」


「もし勝負で負けたらマイナス千をして五千円の給料。勝ったらプラス千をして七千円となります。よいでしょう…」


確かに良い条件だ…負けてもマイナスにならないなんて……


私は自分に好都合過ぎる為店長に質問をした。


「それだと店長さんにメリットが無いように聞こえますが…」


「確かに私が勝ってもあなたの給料が元に戻るだけ…」


「ただ…私が欲しいのは目に見える報酬ではありません…真に求めているのは高揚感……私が私にとって不利な条件を設けたのはその為です。」


ほえーと思っている所、トランプを取りに行った朱美が帰ってきた。


「ふむ…ありがとう………そう言えば自己紹介がまだでしたね…私はひだまり珈琲店店長、高井使(たかいし) (せん)そしてこの子が…」


「俺は五箇(ごか) 朱美(すみ)。よろしくね!」


この青年が私の先輩となる朱美…なんか優しそうで安心した。


「あっ私は水城 乃愛です。」


「乃愛…よい名ですね。自己紹介を終えたところで早速ルールの説明をしたいと思います。そこにお座り下さい。」


言われるがまま席に付き私と店長でテーブルを挟む形になった。


そして朱美がトランプカードを取り出し器用にシャッフルし始める。


「ではルールの説明を始めます。」


シャッフルし終えたカードをテーブルに1枚、1枚並べ始めた。


「ありがとう………ここにジョーカーを入れた計54枚のカードがあります。これらをお互い交互に引き最終的にカードの数字の合計点が多い方が勝ち……そしてジョーカーは少し特殊でしてね。」


「先に引いた人はマイナス20され。後に引いた人はプラス20される。ただジョーカーを2枚引いた場合のみプラス50される………とゆうシンプルなゲームです。」


なるほど・・・とてもシンプルだ。頭を使う駆け引きが無く完全な運否天賦・・・ただの運任せ・・・


私にも、勝機がある・・・!


「理解した様ですね。そうだ始める前に少し練習でもしましょうか?それともいきなり本番でも構いませんが…」


私はこの質問にすぐさま答えた。


「ぶっつけ本番の本命勝負でお願いします・・・!」


練習してからの方が勝ちやすいと普通思うがこのゲームに練習もクソもない。運任せなのだから。


「……そうですか。ではさっそく始めましょう。」


「改めてよろしくお願い申し上げます。」


店長は手を膝に置き目を閉じ深く礼をした。


「まずはあなたが引いてください。特別に先行をあげます。」


私は頷き目の前にあるカードに手を伸ばす。


その数字は・・・


『K』!つまり・・・!


13・・・!


「ほう…幸先がよろしいようで…」


店長の横に立っている。朱美は驚いた顔をしていた。


「では私の番です。」


店長は左の方に手を伸ばしカードをめくった。その数字は、


『6』・・・なんとも言えない数字だ


「6ですか…まぁ悪くは無いですね。」


店長は表情を崩さず淡々としていた。


次は私の番・・・!2枚目・・・引く!


私は直ぐさま右方向にあるカードへと手を伸ばした。


このテーブルに置かれてるカードは均等に並べられてるものの何枚か斜めって置かれてるカードがある。それはカードを並べたのが人間なのだから多少のズレは生じてしまうものだ・・・


ただそれがわざとだったら話は別だ・・・

私が1枚目に引いた『K』のカードは斜めって置かれていた。そしてその後の朱美の反応、明らかに驚いていた。それは・・・


『イカサマがバレたのか?』そーゆー表情をしていた。


それらの情報から考えるにこの斜めって置いてあるカードは恐らく高い数字のカードだKやQ、J、そのあたりだ。


このチャンス逃す訳にはいかない・・・!


ペラリとめくる。


ビンゴ!


「Kだ!乃愛ちゃん……もってるね…!」


朱美のこの表情明らかに動揺している。


「では…引きますね。」


店長は表情1つ変えずカードをめくった。


「1………今日はついてませんねぇ…」


次は私・・・


今度はどうしよう・・・もう一度高めの数字を引くか・・・いや、やめておこう。


向こうは驚いていたがただKを2連続で出したから驚いてる可能性も充分ある。ここで低い数字を出せば、イカサマがバレてると言う不安を取り除き警戒心を減らせるかもしれない。それに店長もまだこのイカサマに気づいていない様子だ。だから今回は普通にカードを引く。


そして斜めってるカードは現在店長の近くに4枚、私から見て右側に2枚左に2枚真ん中に2枚そして私の近くに2枚がある。さっきは忘れていたがこの中にジョーカーが入ってる可能性も充分ある。


・・・


ひとまず1枚引こう・・・


ペラッ


出た数字は


「2か・・・」


この結果に朱美は少し安堵したように見えた。


「次は私ですね…」


そこからお互いカードを引き続け残りが半分を過ぎてゆき枚数が少なくなって来た。


現在店長の合計点は160。

私は153。


序盤は私の方が圧倒的有利だったのに終盤へと近づくにつれどんどんと差が縮まっていき現在はもう抜かれてしまっている。


そして残る枚数は8枚・・・ここまで来るのに私と店長・・・どちらもジョーカーを引いていない・・・!


そしてだ。そして!斜めっているカードは残り4枚!このうち2つがジョーカー・・・!


斜めのカードを引いたら半分の確率でジョーカーが来る・・・


ここで・・・私は・・・賭けには・・・出ない!安定のカードを取る!


ペラッ!


「10…」


良し!これにより私の点数は163!


追い抜いた・・・追い抜いたよ!だが、高い数字のカードはまだ2枚残っている・・・自惚れるな・・・私・・・!


「では私は…これを」


そして店長が1枚をめくる・・・


『1』だ!


良し・・・良し・・・良し良し良し良し!


順調・・・順調・・・至って・・・順調!


勝利の女神は私に味方してくれている!このまま行けばお金が沢山・・・!


お金がいっぱい入ったら瑠愛に美味しい物いーーーっぱい食べさせてあげれる!


瑠愛の欲しい物いーーーっぱい買ってあげれる!


よぉし!この調子で高い数字をもう1枚引くぞぉ!


ペラッ


・・・


あれっ


・・・


これって


・・・


ジョーカーじゃん


あっ


あっ


あああ・・・


あああああああ!


これじゃあ瑠愛を幸せに出来ない!瑠愛をあのクソな父親から救い出せない!この勝負に勝てなきゃ瑠愛を・・・!!!




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



私の名は『高井使 千』 年齢は62。趣味は日記をつける事。妻と娘は遠の昔に出て行ってしまった。そんな私は今自分の店でこの乃愛と言う女の子と勝負をしている。


乃愛の第一印象は内気な子。この子の振る舞いはまるで本当の自分を隠す為、偽の仮面を付けて演技をしてるように見えた。


頑張って元気に振舞っているだろうが私にはバレバレだ。


そして今…勝負の終盤。一手見誤った者の敗北。そんな緊迫した冷たい空気に呑まれてしまった乃愛は…ジョーカーに顔を見られてしまった。


ここで勝つにはもう一度ジョーカーを引いてマイナス同士のジョーカーをかけプラスにするしかない!だがもう一度引けるとは到底思え無い………


勝利の女神に見捨てられてしまったのだから………そして…そんな乃愛の味方についたのは…ジョーカーだ。


乃愛は今敗北の向かい風が吹いてる。それに何となくで気づいた彼女は諦めた顔をしている。いや……していた!


今のこの子の顔は何だ?さっきまではジョーカーを引いたことにより絶望に打ちひしがれていた。もう駄目だと。そんな表情をしていた。だが今は違う。


何か……決心した?……そういう顔つきだ。


この子…私が引く時…何か…するな…


そして私がカードに手を伸ばした時乃愛が行き良いよく立ち上がり机に両手を伸ばしてきた。


「くぅっ!!」


ザザッ!


「なっ!?何を!?」


なんと残りのカードを行き良いよく混ぜ始めたのだ。


………


正直私は気づいていた。朱美がイカサマをしているのを。彼が持ってきたトランプには簡単な小細工がしてある。新品の様に見えて、中身のカードはある法則で並んである。つまり……どこに何があるのかが分かる。それにその後のシャッフル……混ざっているようで実は混ざっていない…!特殊な切り方…!


そしてトランプを並べる時高い数字のカードだけ斜めに置いてる事も気づいてた。朱美はきっと私なら直ぐに気づくだろうと、視線で合図のようなものを送ってきた。


だが私はイカサマをあまり好まない。それで勝っても高揚感は得られはしない。


だから私はそれを利用せず自分の勘に頼りカードを引いていた。ただ気がかりなのは私がイカサマを好まない事を知ってるはずの朱美がお金がかかってるこの場でイカサマをした事だ。


まぁそれは置いといて乃愛のこの行動おそらくイカサマに気づいてただろう。斜めのカードが高数字な事を。だから高数字またはジョーカーを引かれる事に恐れてカードを混ぜた………恐らくそうだろう。


混ぜればお互いどこにどのカードがあるか分からないからな………


………


気に入ったぞ!


この子はさっきも言った通り内気な子だ。あまり他人に本当の自分を…醜い姿を見られたくない…そうゆう子だ…だから……だからこそ


乃愛の中に狂気的な執念を感じる…!その執念はまだ華やかでは無いが感じるぞ…!目的の為には手段を選ばない…なんだってする!そんな狂気的な意思を感じる。


ただそれはまだ芽の段階だ。咲いてはいない。まだ……普通の女の子だ。


長年生きてきたがこんな子は初めてだ………


「乃愛…ちゃん……いったい何を……?」


朱美が緊張した顔で乃愛に問いかけていた。


「ただ混ぜただけです。ただ…混ぜた…それだけです。」


朱美は何も言い返せない。何か指摘でもしたらイカサマがバレてしまうから…


「店長…あなたの番です。」


乃愛は淡々と私に声を掛けた。


私はゆっくりと目の前のカードに手を伸ばす。


ペラ…リ


『12』だ


私は少しだけ笑みをこぼしてしまった。


そんな私に目もくれず乃愛はカードをめくった。


ペラッ


『4』だ!


その結果に私はさらに笑みがこぼれてしまう。


もう一度私は高い数字を引いて見せる!


いやぁ…ジョーカー…を引いちゃうかなぁ…


ペラ…リ


『11』か……


まぁジョーカーでは無いが私が勝ちに変わりわない。


私の合計点は184。乃愛は147。これは勝ったな…


女神に見捨てられたらもうそこで終わりなのだから…1度波から落ちた者は不幸が続く…だが波に乗り続けてる私は幸福が続く。


世の中は幸福を味わう者と不幸を味わう者……この2つの人間がいるから成り立つ。光があるから影がある。全員幸福なのはありえない……!平等は残念ながら存在しない。女神がそう決めたのだから。


だから乃愛は負ける。例え確率が2分の1だったとしてもだ…!それがルール…!


………


………


………


朱美と乃愛、私、この空間に沈黙が続いた。


しばらくすると乃愛が少し口角が上がったように見えたがこの時の私はそれを気にしなかった。


そして乃愛がカードに手を伸ばした。


ペラッ


………


………


………?


嘘だ………


………


これは………


ジョーカーじゃあないか………


何故だ!?何故ジョーカーを引けた!?


勝利の女神は私についている………!だから何分の1だとか、運がついてるついてないとかそういう問題では無い!


はっ!今覚えば乃愛が引く前、彼女は…笑っていたぞ!


あの時の私は気にも留めなかった。勝負のゆくえが気になりすぎて……


あの笑みは勝利を確信していたということか!?


どう言う事なんだ!?思い出すんだ………


………


はっ!わかったぞ!


乃愛が混ぜた時、ただがむしゃらに混ぜた様に見えたが実はカードの配置を暗記していた!


だから混ぜた後もどこに斜めのカードがあるか直ぐにわかった!


私は咄嗟の事だったからカードの配置を覚える時間がなかった。


くそっ………


この子は………女神を捨てたのか………


私とは……目が違った……


………


そして私は1枚残ったカードをめくった。


数字は『4』だった。


「の…乃愛ちゃん197点。高井使店長188点。これにより勝ったのは………」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「乃愛ちゃんだ!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


勝った…!


私の勝ち…!私の勝利…!


この水城乃愛の勝ち!!!


………


瑠愛………やったよ!







「ただいまー」


「おかえりー!」


気分良く玄関ドアを開けると妹が出迎えてくれた。そんな妹はすぐ私の顔を見るなり

キョトンとした顔で何か問い掛けてきた。


「お姉ちゃん何かいい事あったの?」


さすが瑠愛だ。勘がいい。


「うん。ちょっとねー」


「ちょっとってなにー?」


「まぁそれはそれとして…」


「あっ!誤魔化さないでよー」


「今日はご馳走でーす!」


「え!ほんとー!?ヤターーー!!!」


さすが瑠愛、チョロメチャ可愛い。





~やりたい事と願い事リスト~

1、幸せの音を聴く。

2、妹の幸福。

3、一ノ瀬と過ごす。

4、父親の改心。

5、友達に本性を明かす。

6、お店で働く。←クリア!



続く--

ここまで読んでくださりありがとうございます。メイン!メインが進まない!一応あとちょっとではある……が……そのあとちょっとが!!

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