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マヤの解決策

「あそこにつかまってる兵士たちがいるの?」


「ええ、そのはずです。ほら、あそこで遊んでるのとかそうじゃないですか?」


 オリガの指さす先では、子供のオークたちとボールで遊んでいる人間たちの姿があった。


 マヤ以外は基本亜人のキサラギ亜人王国においては、人間というだけで少々目立つ存在立ったりする。


 おそらく新興国であるキサラギ亜人王国の国王の顔など、末端の兵士は知らないだろうし、一緒に遊んでいるオークの子供たちもまだマヤの顔は知らないだろう、その上都合よく見張りもいない。


 マヤはこの状況を最大限利用して、ただの少女としてバニスター兵に話しかけることにした。


「こんにちは、バニスター兵のお兄さん」


「おう、こんにちは嬢ちゃん。珍しいなこの国に人間の子供がいるなんて」


「私はこの国に来てる商人の娘なの。ねえねえ、お父さんからお兄さんたちはバニスターって国の兵隊さんだって聞いたけど、どうして兵隊さんがこんなところで子供たちと遊んでるの?」


「ああ、実はお兄さんたちな、この国の兵隊さんに負けちまってよ。それで捕まって暇だからここで子供たちと遊んでたのよ」


 あくまでも一人の少女として話しているマヤの質問に、兵士たちは和やかな雰囲気だ。


 


「そうなんだー。でもさあ、今お兄さんたちって誰かに見張られてたりするの? 誰もいないみたいだし逃げちゃえばいいんじゃない?」


 マヤの質問に、バニスター兵たちは顔を見合わせる。


「お兄さん達な、バニスターでも捕虜ってやつでな。家族を人質にされて無理やり戦わされてたんだ」


「そうなんだ……大変だね、お兄さん達」


「ははははっ、そうでもねえさ。ここにいれば家族も安全だろうしな」


「どうして?」


「そりゃあ、バニスターの奴らには俺たちがキサラギに捕まってることなんてわからねえからさ。バニスターはまだ俺たちが戦ってると思ってるだろうさ」


「そうそう、だからここにいる間はバニスターの命令に従ってるってことになる」


「バニスターの命令を聞いてるうちは、家族の安全は約束してくれるって話だしな」


「なるほど、なら安心なんだ」


「あー、まあ、安心、とまではいかねえかな? な?」


「ああ、バニスターの奴らのことだ、約束を守ってんのかはなんとも言えねえな」


「そうだな、俺たちが死んだと思って用済みになった家族も殺されてるかもしれねえし」


「ええっ!? 大変じゃん!」


「まあ、あくまでそうかもしれねえってだけだよ。あーあ、いっそ家族と一緒にここに来ちまえばよかったかもな」


「全くだ。エルフもオークも優しいしよ。誰だよ亜人は人間を見たら襲いかかってくるとか言ったやつ」


 バニスター兵たちの言葉に、マヤはあることをひらめいた。


「ねえお兄さんたち、もし家族とここで住めるなら住みたい?」


「ん? そうだな、もしそれができるならそれが理想だな。急にどうしたんだ嬢ちゃん?」


「ううん、なんでも。ありがとね色々教えてくれて」


 マヤはバニスター兵たちに大きくて手を振ると、オリガたちのところに戻っていった。


「結局、何だったんだ、あの嬢ちゃん」


「「さあ?」」


 後には手を振りながら去っていくマヤに手を振り返しながら首を傾げるバニスター兵達が残されていたのだった。


***


「なるほど、あの兵たちは無理やり参加させられた捕虜たちだったわけですか」


「それなら、やる気ないの、納得」


 マヤからバニスター兵の話を聞いたオリガとカーサは、バニスター兵の戦いぶりを見て感じていた違和感の正体を知り、納得した様子だった。


「それで、ちょっと思ったんだけどさ――」


「どうせ、バニスター兵の家族を助けに行こう


 、とか言い出すんでしょう?」


 自分が言おうとしたことをそのまま先に言われたマヤは、オリガに驚愕の表情を向ける。


「ちょっ、なんでわかったの? 心を読む魔法まで使えるの?」


「魔法じゃないですよ。私がエルフなの忘れたんですか? マヤさんがバニスター兵達と話しているのが聞こえてただけです。マヤさん、最後に家族と一緒にこの国に住みたいか、みたいなこと聞いてたじゃないですか。流石にこれから何しようとしてるのかくらい予想できます」


「オリガさん、すごい。私だったら、聞こえてても、そんなこと、予想できない。国王が、敵国の捕虜の、人質の家族を、乗り込んでいって、助けるとか、普通、しない、し」


「その普通しないことをするのがマヤさんなんですよ。まあそのおかげで私も助けてもらえたわけですが」


「いやー、それほどでも」


「褒めてないですからね?」


 オリガはマヤにジト目を向ける。


「あれ、そうなの?」


「そうですよ、まったく……。それで、助けに行くって言っても具体的にはどうするんです?」


「どうって、普通にシロちゃんに乗って行こうかと……」


「いやそれはわかってますけど……そういうことじゃなくてですね、バニスター国内でどこにその兵士さんたちの家族がいるとか、そういうことはわかってるんですか?」


「あー、それは……」


「はあ、やっぱり無計画じゃないですか」


「マヤさん、無計画でも、自信満々、だった。すごい」


「カーサさんも感心してどうするんです」


「うーん、困ったね。何か情報収集も手段があれば……あっ!」


「何か思いついたんですか?」


「うん、上手くいくかわからないけど。ちょっとマッシュのところに行って来るよ! 2人はここで待っててー!」


 マヤは言うやいなや、シロちゃんに跳び乗って走り去ってしまう。


「ここで待ってて、ってこんななにもないところで待っとくんですか?」


「せめて、椅子くらい、ほしい……」


 何も考えずにマヤが走り去ったあとには、何もない道端で待つしかなくなってしまったオリガとカーサの姿があったのだった。


***


「それでどうかなマッシュ、できそう?」


「ああ、おそらく可能だろう。それで、どうしてお前はさっきから私を膝に乗せて撫で回しているのだ?」


「え? もふもふで気持ちいいからだけど?」


「はあ、もう今さら注意する気も起きんな。それで魔物の話だが材料さえあれば今すぐにでも作れるだろう。魔物使いのお前なら視覚共有もできるだろうし、いいアイデアだな」


「でしょ? でも、それならもっと早く誰かがやってそうだけどね?」


「実際やっている者もいるのではないか? ただ、魔物使いは絶対数が少ない上、普通は数匹しか操れない魔物のうちの1匹を情報収集専用にするやつはそう多くないだろう」


「まあそうかもね。それじゃあサクッと捕まえてくるよ。生きてても死んでてもいいんだっけ?」


「いや、できれば生きている方が助かる。その方が早く終わるしな」


「了解、それじゃあ行ってくる」


 マヤはマッシュの家を飛び出すと、腕輪を使って数十匹の魔物を一気に呼び出した。


 数十分後、マヤの周りにはくわえたり、寮前足で挟んだりといった思い思いの持ち方で、バサバサ暴れるカラスを持った魔物たちが帰ってきたのだった。


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