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最強の魔物使い、その片鱗

 マヤが何もできないでいる間にも、兵士と魔物たちは、マヤたちへと迫ってくる。


(ああ、これでおしまいか)


 迫りくる脅威をぼんやりと眺めながら、マヤはそんなことを考えていた。


 世界がスローモーションに見え始めるが、だからといって今のマヤに何ができるわけでもない。


 覚悟を決めて、あるいは何もかも諦めて、マヤはそっと目を閉じる。


 その時マヤの目の前に浮かんできたのは、動かなくなったうさぎとそれを撫でる自分の手だった。


 それは前の世界の記憶。


 結局大したことをしてあげられず、死んでいった|向こうの世界のマッシュ《・・・・》とそれを撫でる自分の手だった。


 次に浮かんできたのは|こっちの世界のマッシュ《・・・・》との思い出だった。


 たまに喧嘩をすることもあったが、マッシュと過ごしたこの1ヶ月の冒険の日々は本当に楽しかった。


 マッシュに助けられることもあった、マッシュを助けたこともあった。


 最後に浮かんできたのは、つい最近の記憶。


 マヤと一緒にいたいと泣いてくれたオリガの姿だった。


 まだ会ってから日は浅いが、オリガは本当にマヤを慕ってくれていると感じる。


(そんな2人を見捨てて、私が諦めていいの?)


 ドクンッ、とマヤの鼓動が大きくなる。


 マヤ自身のことは、正直どうでも良かった。


 この世界に来てしまった時点で、おそらく向こうの自分は無事ではないだろうから。


 だから、マヤ自身のことなんて、どうでも良かったが―――。


「2人に触るなあああああああ!」


 大きく目を開いたマヤは、気がつくとそう叫んでいた。


 その瞬間、マヤの全身からまばゆい光が溢れ出す。


 マヤから溢れる光をよく見ると、マヤが強化(ブースト)を使うときに手から溢れている光の粒子だったが、その輝きも量もいつものそれとは比べ物にならない。


 地上に現れた太陽の如き輝きに、兵士たちは目をやられたのか足を止めていた。


「くっ! 何だというのだ、いったい」


 マヤたちの遥か上方にいるジョン王子も、手でマヤからの光を遮りながら、戸惑っている。


 しかしそこは一国の王子、マヤの光の正体を理解すると、途端に強気の笑みを浮かべた


「ははははっ! 魔物使いの娘、さてはお前、この魔物たちを操ろうとしているな? 愚かなやつだ。魔石の制御は絶対、これを(くつがえ)せた魔物使いは神話まで(さかのぼ)ってもいないのだからな!」


 勝ちを確信して笑うジョン王子だったが、マヤはその言葉を無視した。


(やれるかどうかなんてわからないし、やれる気もしない……でも、2人を守るためには、今、私が、やるしかないんだ!)


「はあああああああああああ!」


 マヤが気合いの声を上げると、光の粒子が勢いを増し、魔物たちを包んでいく。


 光が魔物に集中した事で、光が弱まり視界が戻った兵士が、魔物に集中しているマヤの背後から斬りかかってくる。


「全く、危なっかしいやつだ」


「マッシュ!」


 マヤの危機を救ったのはマッシュだった。


 その背には呆然としているオリガを乗せている。


「こっちは私に任せろ!」


「わかった!!」


 マッシュに背中を預けたマヤは、再び魔物の群れに意識を集中させる。


「まさか、本当に魔石の制御に抗うというのか!? ありえん、ありえんはずだが……」


 ジョン王子は、マヤの気迫とみたこともないマヤの桁外れの魔力の輝きに、胸騒ぎを覚えた。


「おい、うさぎ! 制御を強めろ。全力で構わん!」


 ジョン王子は足元のマッシュの奥さんをつま先で小突いて指示を出す。


 次の瞬間、魔石から黒い波動が溢れ出し、魔物たちに流れ込んだ。


 魔石からの黒い波動とマヤの光の粒子、白と黒の波動が、魔物たちをめぐりせめぎ合う。


「まだまだあああ! 強化(ブースト)オオオオォォォ!!」


 魔石から流れる黒い波動にマヤの光の粒子は一歩も譲らず、それどころかすぐに押し返してしまった。


「ば、馬鹿な! ありえない! そんなことがあり得るというのか!?」


 ジョン王子がその顔を驚愕に染めて見つめる先では、黒い波動を完全に押しのけた光の粒子に包まれた魔物たちの魔石が漆黒から白銀へと(・・・・・・・・)少しずつその色を変えていたのだ。


 魔物たちの変化はどんどんと広がっていき、あっという間にすべて魔物がみたこともない白銀の魔石を持った魔物に変わってしまった。


「やっ、た……」


 どうやらうまくいったらしいことに安堵した途端、全身から力が抜け、後ろに倒れ込んだマヤをもふもふとして大きななにかが受け止める。


「なんかマッシュ大きくなってない?」


 それは、マヤの背丈ほどに大きくなったマッシュだった。


「お前の強化の影響だろうな。そんなことより、今はあの魔物たちをどうにかするのが先だ。できるのだろう?」


「さあ?」


「安心しろ、あんな魔石は見たことがないが、あれをやったのはお前だ。きっと奴らはもう―――ほら」


 マッシュが前足で指差す方を見ると、魔物たちがマヤたちを守るように外を向いてぐるりとマヤたちを囲んでいた。


「そうみたい。それじゃあ、反撃開始だね」


「任せろ!」


 マヤにオリガを預けたマッシュは、マヤの味方になった魔物たちの先頭に躍り出ると、


「いくぞ! お前たちも続け!」


 そこからはあっという間の出来事だった。


 マッシュ率いる魔物軍団は、難なく兵士を無力化すると、いつの間にかマッシュが向かわせていた別働隊が無力化されたジョン王子とマッシュの奥さん、そして3匹の子うさぎたちを連れてきていた。


 マヤは、マッシュが妻子の無事を確認している間に、魔物たちに拘束されているジョン王子のところへと向かった。

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