表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ドレスは蹴飛ばせっ! & ニャアに完敗したお話♪

作者: ソウ マチ

ドレスは蹴飛ばしてくださいっ! 


ウェディングドレスやカラードレスなどをお召しになった際に、美しく着こなすためでございます!


ああいったドレスは固いパニエを何枚か重ねて装着して、その上に床をズルズル引きずる(← この言い方もどうかと思う)ドレスを着ます。重量は数kgあって、なかなかの重量感です。

ドレスを着て歩くのは、たいていフカフカの絨毯の上です。フカフカしているのと絨毯の素材がウールだったりするので、摩擦抵抗はかなり大きいです。


重たいドレスで摩擦抵抗のデカイ絨毯の上を歩くと、ドレスが絨毯にこすれて足を取られてしまいます。結果、重たい足を前に出すために猫背になってチョコチョコと歩いてしまう。これ、すごく残念な見た目になります! せっかくのドレスですから堂々と着こなしていただきたい!


背筋をピンと伸ばして、ドレスを蹴飛ばしてください! つま先でドレスに穴を開ける勢いで蹴りを繰り出すのです!! 蹴った瞬間にできる空間に足を下ろす。右、左、右、左! 目的地につくまで蹴り続けるのです!! 蹴るのを忘れた瞬間、ドレスを踏んずけてコケそうになりますから、集中して蹴り続けてください!

そして立ち止まったら堂々と胸を張って、優雅に微笑んでください! これで世界はあなたのものです! あなたが世界の中心です!! 


どうしてこんなことを知っているかと言いますと、以前に結婚式場で働いていたからです。何人もの美しい花嫁さんを見ていたから。そしてドレスを引きずって歩くお姿をみて「あぁ! 残念!」そう思っていたから。

その上ワタシ、結婚披露宴を2回しています。バツ2です。


着る物にはまったくこだわりがないので、1回目はお姑さんと母に衣装選びを丸投げしました。二人が大喜びで話し合ってドレスと和装を選んでくれたのですけれど、和装はしんどかった! 準備も後始末もタイヘンだし、重くて身動きできない! もう和装はコリゴリ!!


二回目の結婚で披露宴はナシでと考えていましたけれど、初婚の夫とそのご家族がぜひにと言ってくださったので、ありがたくお受けしました。二回目なのでウェディングドレス一着でと希望しましたが、お色直しはしてほしいと言われたので(重くてメンドクサイ)和装じゃないならと答えたところ、カラードレスを着ることになった。

この時は私の母が遠方で来られなかったため、お姑さんにドレス選びを丸投げしました。お姑さんは嬉々として選んでくださったので、そこだけは喜んでもらえたかな……。


そして一度目も二度目も、それは見事にドレスを着こなしました! ドレスの裾を蹴飛ばしまくりました!! 借りるだけでン十万円のドレスといっても容赦はせん! 渾身の力を込めて蹴飛ばして堂々とバージンロードを闊歩しました!!


そういうわけで、ドレスを着るときは思い出してください♪ 「ドレスは蹴飛ばせっ!!」


お話は代わりまして、ニャアから贈り物をもらったお話です。

今までのエッセイで「人様からやたらと物をもらう」話を書いていますけれど、ニャアからも、ちゃっかり頂いております! 令和の今は少数派になってしまいましたけれど、平成の時代は大部分のニャアたちが自由に道を歩いていました。


平成の頃に住んでいたアパートは、すぐ横に大家さんのおうちがありました。80代のおばあさん大家さんが猫を飼っていて、その猫の名前はプリンちゃん(オス・5歳)でした。

このプリンちゃん、世界で一番プリンちゃんという可愛い名前が似合わないニャアでした! ガタイはデカイわ目つきは悪いわ、その辺一帯を取り仕切るボス猫でした。猫は言うにおよばず、大きな犬が吠えかかっても逃げることなく知らん顔しています。一度など本気を出した大きな犬が彼に噛みつこうとした結果、彼は電光石火の早業はやわざで猫パンチを繰り出し、犬は一瞬で敗北者になってしまいました。ワタシはそんな彼をどうしてもプリンちゃんと呼ぶことができず、犬のようにデカイという理由から彼を「犬並いぬなみ」と呼んでいました。


犬並はサバ柄の筋肉ムキムキのマッチョな猫で、体重は7kgくらいあったと思います。そして毛がツヤツヤ!! どこの毛もツヤツヤと光り輝いて、背中は鏡のようにピカピカしていました!

ドレスを蹴飛ばして華燭の典を終えた私が新妻として真新しいアパートに引っ越してきた時、犬並は新しい住人を見分するため私の前に姿をあらわしたのです。


部屋の庭(アパートなのに庭があった)にやってきた犬並をワタシは大歓迎しました。


ソウ:はじめまして! あなたはどこの子?


犬並は人殺しのような厳しい目つきでワタシを見つめます。そして部屋が気になるらしく、ベランダから部屋の中をのぞきこむ。


ソウ:お部屋の中が気になるの? 見てみる?


そう言って彼を抱き上げて、ヨイショと部屋の中に入れた。彼はおそれたようすもなく、悠然と部屋の中を歩き回ります。気になるところがあるとフンフンにおいをかぐ。彼といっしょに部屋をまわっていると玄関につきました。そして彼は新品のピンヒールに…………、











ジョオオオオオ……。オシッコをしたんです!!


ビンボーな今のワタシなら発狂します! そのピンヒール3万円もしたんです!! 今のワタシに3万円のクツは買えない!! でも当時はセレヴだったので3万円は痛くなかった。


ソウ:あらあら、ダメよぉ~♪


そう言ってワタシは笑いながらピンヒールを捨てました(!!)。今なら絶対に捨てない! 絶対に履き続ける!! でも当時は、なんの迷いもなく捨てた。すげぇな、オレ!!

そして玄関を水洗いするワタシを見て、犬並はちょっと反省したようすでした。彼なりにワルイコトをしたと思ったらしい。


それからワタシたちは仲良くなり、犬並が庭へパトロールに来ると話しかけたり撫でたりするようになりました。


ある日、アパートの前の道で犬並と出会いました。「ちょっと抱っこさせてよぉ~!」そう言って犬並を抱っこしていると、大家さんのおばあさんが通りがかった。そして目をまん丸にした!!


大家:プリンちゃん、なにしてるの!? その子、抱っこできないのよ!!

ソウ:え?

大家:プリンちゃんは抱っこが大嫌いなの! どうして抱っこできたの!?

ソウ:え……。抱っこさせてってお願いしたら、イヤじゃなかったみたいなんで……。


言ってるうちに犬並は身をよじって地面に降りて、悠然とどこかへ歩いていきました。大家さんに抱っこされて姿を見られるのがイヤだったらしい。


新妻だった私は当時、張り切って夫のお弁当を作っていました。ある朝、卵焼きを焼いているといつものように犬並がパトロールに来た。


ソウ:犬並、卵焼きは好き?

犬並:…………。

ソウ:食べてみる?


彼の前の前に冷ました卵焼きを一かけら置いてみた。犬並はフンフンとニオイをかぐと、お義理で一口だけ食べてどこかへ行ってしまった。卵焼きは好きじゃないのかしら?


またある日は、手羽先の煮物を作っているところへ犬並がやってきた。お肉なら好きかな? 手羽先は素敵に美味しいから、きっと気に入るよね♪

ワタシが差しだした手羽先を彼はフンフンとかいだ。そして一瞬、申し訳なさそうな顔をすると一口も食べずどこかへ行ってしまった。あらら? せっかくのお肉もキライなの??


その翌日から、不思議なことが起きるようになりました。朝になってカーテンを開けると、庭先のベランダにいろいろと置いてあるようになったのです。最初のバッタは偶然そこでしんだと思って埋めました。けれど毎日のようにコオロギやトカゲ、セミなどが同じ場所に置かれてあります。おかしいなと思いつつ埋めていたのですけれど、バッタがキレイに三匹並んでいる場所から犬並が立ち去るのを見たとき、遅ればせながらやっと気づきました。


これ、犬並がわざと置いてるんだ!


たぶん犬並がワタシに食べろと持ってきてくれたんだ! 卵焼きとか手羽先なんて貧相な食べ物じゃなくて、もっと栄養のある物を食べろと……!! でも犬並、ワタシはバッタもコオロギもトカゲも好きじゃないよ! 食べられないよ! 気持ちは嬉しいですけれど食べられないので、犬並に見つからないようそっと土へ埋める日々が続きました。


ワタシは良い物を食べていると犬並に知ってもらおう! そして犬並にも美味しい食べ物をごちそうしてあげよう! そう考えた私はスーパーでタイのお刺身を買ってきました! これなら文句なかろう! ニャアの大好きなお魚!! しかも高級魚のタイ!! さあ、食べるがいい! そしてワタシが良い物を食べていると思い知るがいい!!


犬並、一口も食べませんでした(涙)。きっと喜んでくれると思ったのに(涙)。

数日後、道で大家さんと出会いました。この頃には大家さんとも仲良しになっていたので、犬並の話をしてみた。


ソウ:プリンちゃん(犬並)に卵焼きをあげてみたんですけど、食べてくれませんでした。

大家:あらぁ! ごめんなさいねぇ! プリンちゃんは卵は食べないのよぉ!

ソウ:それに手羽先も食べてくれませんでした。

大家:お肉は種類と部位によるわねぇ……。手羽先は食べないかも……。


どんだけ贅沢なニャアなんだ!? 高級な食材しか食べないのか? それなら満を持して……!!


ソウ:タイのお刺身もあげたのに、食べてくれませんでした。


大家さんが驚いた顔をしました。


大家:えっ!? プリンちゃんはタイは大好物よ! どうして食べなかったのかしら?

ソウ:わかりません。ぜんぜん食べませんでした。


大家さんはしばらく考えていましたけれど思い当たることがあったようで、言いにくそうに口を開きました。


大家:もしかしたらそのタイ、養殖だった? プリンちゃんは天然物しか食べないの……。いつもプリンちゃん用のお魚はデパート(!)で買っているのよ。


ギャフン!! そこまで贅沢とは知りませんでした! 参りました!!


セレヴを気取っていたワタシが、ニャアに完敗したお話でございました!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ