99.現在の生徒会
昼休みになり、俺達はいつものメンバーで早速生徒会室へと向かった。
もちろん推薦を取り下げてもらうためだ。
「失礼します」
ノックをして部屋に入れば、生徒会長を始め生徒会役員が勢ぞろいしていた。
俺達の来訪にも驚くことはなく、むしろ待ち構えられていたようにも見える。
「やあいらっしゃい。来ると思っていたよ」
どうやら本気で待ち構えていたらしい。
「さて、姫様御一行と呼べば良いか、それとも村人A御一行と呼んだ方が良いのかどちらだろうか」
「いやどっちでも……」
「もちろん村基くん御一行です」
「えぇ~」
どっちでもないと言おうとした俺を押しのけて姫乃が高らかと宣言する。
その姿に驚いているのは、あれ、俺だけ?
生徒会の人達もそうだけど、一緒に来てる庸一達もなぜかそれが当たり前だって顔をしていて、それを見た生徒会長が楽しそうに笑っていた。
「はははっ。やはり私の目に狂いは無かったようだ。
そうだろう、将軍。さすがにこれを見せられては彼の資質を疑うべくもない」
「……そうですね」
生徒会長に振られて憮然と答える将軍と呼ばれた男子。
そういえば生徒会長の美童先輩以外、名前も役職も分からないんだけど皆は分かるのかな。
普通に考えれば会長の他は副会長、会計、書記とかなんだろうけど。
将軍と呼ばれた男子は、すっと椅子から立ち上がり俺を睨みつけた。
「良いだろう。村人A。
貴様を我が敵のひとりとして認めてやろう」
ビシッと俺を指差して宣言してきた。
あ、このノリは黒部先輩と一緒だな。連れて来てたら仲良くなってたかもしれない。
「黒騎士ともども私が叩き潰してくれよう」
違った。これきっと強敵と書いて友じゃなくてライバルって読む人だ。
黒部先輩とじゃ火と油で熱いバトルが展開されてしまうな。
でもどうして突然敵認定されたんだろう。黒部先輩のあだ名が出てきたのも謎だし。
そこへ将軍の向かい側に座っていた女子から助け舟が入った。
「あらぁダメよ副会長。自分勝手に話を進めては。
私達は会長ほど矢面には立ってないのだから、一般生徒には顔も名前もあまり知られていないのよ?
こういう時はちゃんと自己紹介から始めないと。ね」
ゆったり話すその声はやんちゃした息子を優しくあやす母性のようなものが感じられ、更に机の上に半分乗ることで強調された胸が俺達男子の視線を釘づけにして反論する余裕を奪っていく。
「……一会くん?」
「いぎっ」
後ろ手に姫乃に脇腹を抓られた。
ちらりとこちらに向けた笑顔は、笑顔なのに凄い迫力があった。
あと後ろでもハル達が似たようなやり取りをしてるのが気配で分かった。
やはり女は怖いというのはいつの時代も変わらないらしい。
副会長とも呼ばれた将軍は、流石に同じ生徒会役員ということでいつも見ているからだろう。俺達よりも数段早く立ち直っている。
「ふっ、では改めて名乗ってやろう。
俺は現生徒会副会長の将軍こと織田 長政だ」
「会長補佐と庶務担当の伊那美 命です。
学園では女神なんて呼ばれてるけど、気軽にお姉ちゃんって呼んでくれて良いですよ~」
「会計の関 孝和。まあ私の事は覚える必要も無いでしょう」
「書記の多岐津 多紀理。略して多々ちゃんです♪」
「そして生徒会長の美童 獄津だ。
今後は何かと会う機会もあるだろう。是非覚えてくれたまえ」
副会長に続いて全員が挨拶してくれた。
その姿を見て分かったけど現生徒会は何とも個性的な集まりのようだ。
織田先輩はどこか偉そうな俺様キャラで、それを抑えつつ全体の空気を穏やかにする伊那美先輩。
小柄で眼鏡の関先輩は若干神経質そうで、大して多岐津先輩は明るい元気娘。
それらをまとめ上げて泰然としている美童先輩は流石の貫禄と言うべきか。
俺達もそれぞれ名乗りつつ、遅まきながらさっきの織田先輩の言葉の意味を理解した。
織田先輩と、ここには居ない黒部先輩も含めて次期生徒会長候補なんだ。