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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第7章:情熱で始まる2学期
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88.姫様御用達の庭師

ひと休み。

夏休み前には出すことが決まっていたのに、物凄い忙しいタイミングで出る羽目になってしまった。


翌日の昼休み。

いつものようにいつものメンバーで集まるが、やはりハルと魚沼さんがぎこちない。

別に喧嘩をしてるって訳じゃないし嫌いになった訳でもないから一緒に居る事に問題は無いけど、何を話したらいいのか分からないって所か。

それについては週末の結果次第でどう転ぶかが決まる。

あとそれ以上に今気になることと言えば。


「ここっていつも集まっていた裏庭だよな?」

「はい。造って頂いた東屋もありますし」

「俺てっきり夏休み中に放置してた結果、元の雑草だらけの状態に戻ってるんじゃないかって思ってたんだよ」


夏に1月も放置すれば、もう目も当てられない惨状になるのが普通だ。

残念ながら俺も藤白も他のメンツも夏休み中にここの維持管理が出来る程、時間に余裕のある人は居なかった。

だから夏休み明けからまた雑草抜きを頑張らないといけないだろうなと覚悟していたんだけど。

実際には「どこの庭園ガーデンですか?」と問いかけたくなる程に立派に整備されていた。

花壇はきちんとレンガで縁取りされて中には季節の花が力強く咲き誇っているし、歩道もしっかり踏み固められていて雑草も生えていない。

当初計画していた乗馬コースまできちんと用意されているところを見れば、俺達が企画した計画書と設計図を知っている人の仕業だとは思うのだけど。

そう首を傾げていると花壇の向こうから男子が1人やってきた。


「やあ姫様御一行様じゃありませんか」

「あなたは確か2年の」

庭石にわいし 耕作こうさくです」

「これはあなたがやったんですか?」

「はい。あ、もちろん俺一人じゃなくて皆にも手伝って貰いましたが」


日焼けで黒くなった顔にニカッと笑みを浮かべて答える庭石先輩。

手伝って貰ったとは言ってるけど、それでもこの広さの裏庭をどこかのテーマパーク以上に綺麗に整えるのは並大抵の技術力では無理だし、プロの会社に頼んでも同じクオリティが出せるかも怪しい。

姫乃もそれが分かるからこそ真っすぐに頭を下げてお礼を言った。


「こんなに素晴らしい庭園をありがとうございます」

「いやぁ姫様に喜んで貰えてこちらこそ嬉しいです。

実家が庭師なもんで、俺に出来る事なんていったらこれくらいですからねぇ」

「いえそんな。謙遜する必要はないんじゃないですか?

私これほどの庭園は他に見たことがありませんから」

「いやぁ、はははっ」


姫乃に褒められて照れる先輩は褒められ慣れていないのか顔を赤く染めている。

そこへ少しは元気を取り戻したハルが携帯のカメラで庭園と先輩を撮影していた。

その写真をみんなに見せながらこう提案した。


「この写真、学内の掲示板に登校しても良いですか?

タイトルは『姫様御用達の庭師現る』みたいな感じで」


それを聞いて目を見張る先輩は嫌そうというよりもただただ驚いているようだ。

そして俺もハルの提案に頷いた。


「良いんじゃないか?

上手く行けば先輩も学園でのあだ名が付いて今よりも評価されるだろうし。

これがお礼になるかは微妙だけどな」

「いやいや俺なんかがそんな評価されて良いんだろうか。

それに姫様のお名前までお借りする形になってしまってるし」

「私はそれで構わないですよ。それで先輩に少しでも恩返しになるのであれば」

「よし、じゃあ決まりだな」


姫乃がOKを出したことでハルがその場で手早く文章を纏めて掲示板へと投稿した。

それを見た生徒から学園中に話が広まり学園公認の『庭師』が誕生するのに1日と掛からなかったらしい。

後日先輩の元に学園から正式な依頼という形で裏庭以外も整備する仕事が舞い込んだとか。



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