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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第7章:情熱で始まる2学期
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86.何が起きているのか

2学期初日は始業式と簡単なホームルームのみで午前中に終わった。

なので朝からずっとお通夜モードのハルを昼飯にでも誘うか。

ただその為にはだ。

俺はさっとメモ帳から1ページ切り出してサッとメモを書いて姫乃に渡した。


『魚沼さんの方を頼んでも良いか?』

『うん』


短い言葉のやり取りと横目でアイコンタクトを取り合う。

直接話しかけるとまたクラスの連中が騒ぎだして面倒な事になりそうだけど、これくらいなら……あっちの目敏い女子に見られたな。にっこり笑って人差し指を立てるあれは『内緒にしてあげる』というより『貸し1つね』みたいな意味だろうか。

まあ周りに言い触らさないでくれるならいっか。

荷物をササっと纏めて教室を出ていく姫乃を見送りつつ俺は庸一と共にハルの下へと向かった。


「ハル~。昼飯でも食いに行こうぜ」

「……はい」


うーん、重傷だな。

今のハルがここまでになるとしたら魚沼さん絡みか妹絡みかのどちらかくらいだとは思うんだが。

兎も角、俺達は死にかけた感じのハルの背中を押していつもの喫茶店に行くことにした。

店内に入れば三つ編み眼鏡の店員、というか姫乃は当然居る訳がなく、代わりにボックス席に座ってる女子3人組が居た。

幸いこちらに背を向けていた魚沼さんには気付かれずに済んだ。

ハルは、それどころじゃなくて勿論気付いていない。

俺達は少し離れた席を確保しつつ料理を適当に注文してドリンクバーから飲み物を用意して、ようやく事情を聞くことにした。


「それでハル。魚沼さんに告白して振られたのか?」

「え、あ、いえ。そういうわけでは、ないです」


単刀直入に聞いてみたが、外れだったか。

ならもう一つの方かな。


「という事は妹の橘音きつねちゃんに『お兄ちゃん嫌い!』とでも言われたか?」

「そこまではっきりと言われてはいないです」


これも違うのか。

でもこの言い方ならそれに近い事はあったみたいだな。

ちなみにハルの家は両親共働きでふたりとも帰りが遅いから実質兄妹2人で家事のほぼ全てを分担しながら生活している。

だから兄妹仲はすこぶる良好で、そのせいで小学生時代は周囲から揶揄われたこともあった。

それを見てつい揶揄う馬鹿どもを蹴散らしてしまったんだが。

まあ若気の至りというものだな。……今同じ状況になっても同じ行動を取る自信があるが。

そんな感じなのでハルは妹の事を両親以上に大事に想っているし、妹も2歳しか違わないのに甘え上手というか兄貴にべったりだ。

なので、世間一般で良くある兄妹間の壁みたいなものは全くないし、余程のことが無ければあの妹がハルを嫌うとは思えない。

余程の事か。待てよ?


「魚沼さんと橘音ちゃんが出会ってしまった。いや、違うな。ハルが橘音ちゃんに魚沼さんを紹介した。これかな」

「………………はい」


重苦しく頷くハル。

なるほど。それなら納得がいく。

と、俺だけ納得がいっても仕方ないな。

隣に座ってる庸一はまだ分かってなさそうだ。


「すまん。魚沼さんと橘音ちゃんが会うと何かあるのか?」

「単純に会っただけなら問題ないさ。

2人の性格からしてすぐに仲良しになるかと言われたらきっかけが無いと難しそうだけど、別に喧嘩になったりはしないだろう」


大人しい性格の魚沼さんと元気系妹キャラの橘音ちゃんだ。

魚沼さんが年上の包容力を出せば橘音ちゃんも安心して甘えるだろう。


「だけどそこに大好きなお兄ちゃんが間に居る事が問題なんだ」

「あー、つまりライバル登場ってことか?」

「ちょっと違うな」


ライバル、この場合は恋のライバルっていう意味で言えば橘音ちゃんは別にハルに恋愛感情は持っていない……と思う。だから魚沼さんとは土俵が違うことになる。


「どっちかというと大事なお兄ちゃんが他の人に取られてしまう。

もしくは大事なお兄ちゃんを誑かす悪い女が現れたって感じだろう。

で、紹介した瞬間、険悪ムードが流れて取り付く島もなく、もしかしたら魚沼さんに悪口を言いながら追い返したんじゃないかな」

「大体そんな感じです。

それ以来、橘音も僕に対して距離を置くようになってしまいましたし、謡子さんに対しても今後どんな顔をして会えば良いのか。

もしかしたらもう嫌われてしまったかもしれません」


つまり大事な妹と人生で初めて好きになった女の子両方から嫌われてしまったから、こんな人生もう終わりだみたいな状況になってたのか。

まったく仕方ない奴だ。



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