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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第7章:情熱で始まる2学期
85/208

85.新学期早々に爆弾を投下する姫

いつもありがとうございます。

新学期になったので色々加速して行きます。きっと

長いようで短い夏休みも終わり、今日から新学期だ。

家から一歩外に出れば焼けたアスファルトのせいで田舎よりもずっと暑い。

それと空気も不味いし水も不味いしなぜ人類が都会に住みたいと思うのか理解に苦しむ。

俺なんて将来はずっと田舎暮らしがいいなって思うんだけど。

なんてことを考えてる内に約1ヵ月ぶりの英伝学園に着いた。

この学園に通う事になったのも色々あったけど、今では通えてる事に感謝している。

何故ならば。


「よ、おはよ」


珍しく自分よりも先に席に座っていた姫乃に挨拶を送れば、ぱっと振り向き笑顔を見せてくれた。


「おはようございます。一会くん」

「「………………は?」」

「あ」

「おばか」


姫乃が返した挨拶を聞いて教室から音が消えた。

同時にこちらに突き刺さる視線。姫乃はともかく俺に対しては本気で刺したいと考えてそうな殺意混じりの視線だな。

俺の隣で姫乃が自分の失言に気がついてあたふたしてる。

うん、小動物みたいでちょっと可愛いな。


「えっと、皆落ち着いて。

別に彼と何かがあった訳じゃないから」

「「か、彼!!」」


姫乃の発言に凄い反応が返ってくる。

まぁそれも仕方ないか。

なにせ学園のアイドルとも言える姫様の姫乃が特定の男子を名前で呼んだんだから。

こういう時は本人が何を言っても火に油を注ぐ結果にしかならない。

現に姫乃の"彼"発言に教室の中どころか廊下の向こうにまで噂話は飛んでいってもう止まらないだろう。


「姫乃。もう手遅れだから」

「う、うん」

「姫様を名前呼び、だとっ!!」

「しかも姫様も満更じゃ無さそうだし」

「これはまさかひと夏の想い出と称して姫様に手を……」

「いや待て。それ以上は考えちゃ駄目だ」

「ぐっ、こうなれば奴を殺して俺も死ぬしか」

「お前も早まるな!」


まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だな。主に男子が、だけど。

女子は女子で友達とヒソヒソ話しては「きゃあ」とか「いやぁん」とか謎の黄色い声を挙げている。

一体どんな妄想を展開してるのか聞くのが怖いな。

このままだとマジで暴動が起きかねないくらい教室中の圧が高まる中、いつもの調子ですたすたと俺の所に歩いてくる男子が一人。


「で、実際のところどうなんだ?」


俺の肩に手を回しながら聞いてきたのは庸一だ。

ここはある程度事実を交えて話さないと皆納得しなさそうだな。


「ひとまず恋人同士になったりはしてないから」

「そうですね」

「「ふぅ~~」」


俺の回答に姫乃も同意し、それを見た男子達から安堵のため息が溢れだした。

よし。これですぐに暴れ出すことはなさそうだ。


「で、なんで名前呼びになったかと言えばだ。

偶然実家が近所だったらしくてな。夏休みの帰省中に実家の近くを散歩してたらばったり姫乃とその家族に会ったんだよ。

そうなると、折角ならご飯でも一緒に食べようかって話になって、更に家族と居る時に名字で呼ぶと誰を呼んでるのか分からないでしょってご家族の方に言われてな。

人生の先輩にそう言われたら断ることも出来ず、結果的に下の名前で呼ぶことになったんだ」


俺の説明に続けるように姫乃も話を継ぎ足してくれた。


「そうですね。

その時に私だけ下の名前で呼ばれるのは不公平だねって言われたから私も同じようにすることになったんです」


よく考えれば1日2日、それも家族の前だからって理由ならすぐに名字呼びに戻るはずで、今に至るまで続いてるのはまだ何か隠してるって勘のいい奴なら分かっただろう。

そういうのにいち早く気付くのはハルなんだけど。

庸一が来たなら一緒に来てるのかと思えば姿が見えないな。


「あれ、そう言えばハルは?」


俺の質問に庸一がグーサインで教室の隅を指した。

教室中が俺と姫乃の事で憶測が飛び交い賑やかになっている中、そこだけは学園中の闇をかき集めてきたかのようにどんよりとした空気が漂っていた。


「はぁぁぁ~~」


虚ろな顔で深いため息をつくハルは、まだ8月末なのに10月を通り越して枯葉舞う秋の終わりのようだ。

どうやらハルにとってこの夏休みはかなり厳しい試練の日々だったようだ。



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