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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第6章:さあ夏休みです!
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82.お祖母ちゃんは背中を押したい

夕食を食べ終えた後は温めのお風呂にゆっくり浸かり改めて身体の疲れを洗い流します。

左足は、もう見た目じゃ分からないですね。

触っても……はぅ!?


「ぷ、ぷるぷるしてる!」


まるで赤ちゃんの頬っぺたみたいに艶々のぷるぷるでした。

もし仮にこれが全身に出来たらエステ業界に革命が起きます。間違いなく。

でもきっと今回は一度古い皮膚を破壊して再生させたからで、単純にあの薬を塗れば同じようになる訳では無いでしょう。

それにこれが全身だと柔らか過ぎて簡単に怪我してしまいそうです。

多少でも皮膚が堅くなっているのは大事なことです。

特に私は温室育ちのお嬢様ではないですからね。

うぅ、でもやっぱりこのスベスベぷるぷる肌は女の子としては魅力的過ぎます。

そんな戦慄を覚えつつもお風呂から上がり部屋に戻ると携帯に着信がありました。

えっと、あ、キヒトさんからチャットが届いたんですね。

えっと、夏休みを満喫していますかっていうのと、羽目を外して怪我しないように、か。

すみません。もう怪我した後です。

なかなかにタイムリーですね。

ふむ……キヒトさんかぁ。

結局あの執事喫茶店にはあれ以来行ってはいませんが、今でもキヒトさんとはこうしてチャットのやり取りを継続しています。

何故キヒトさんと繋がりを保っているかと言えば、こうして時々チャットが着ては楽しく話をしているのと、なによりも、


「名前が気になるから、なんですよね」


いや、仕草とか雰囲気が夢の中のキヒトと何処と無く似てたっていうのもあるんですよ。

でもどちらにしても失礼な話ですよね。

まるで別れた恋人の面影を他人に求めているようなものですし。

やっぱり休み明けにもう一度会ってこないとダメかな。

それでちゃんとごめんなさいしてこないと。

そう決めた私はキヒトさんに返信を送りつつ眠りに就きました。


翌朝、ちょっと遅めに起きた私はパジャマのまま居間に降りていき、あり得ないものを見つけて目を見張りました。


「……なんでいるの、村基くん」


確か私を家まで送り届けた後、用事が残ってるからって帰ったんですよね。

それなのになぜ朝から私の家に居て、なおかつお祖母ちゃんと一緒に朝食を食べてるんですか。

そんな私の声を聞いて村基くんは呆れた顔をしていました。


「聞いた?おばあちゃん。頑張って助けてくれた相手にこの仕打ちだよ」

「ほっほっほ。許してやりなよ。年ごろの娘は難しいものさ。私もあれくらいの頃は色々あったよ」

「ふむ。流石年の功だね。それと藤白、寝癖が凄いぞ?」

「!!?」


突然の事態に固まっていた私はその一言で慌てて頭に手を置いてブワッとした感触に慌てて洗面所に駆け込みました。

ね、寝起きの無防備な姿を見られてしまいました。

しかも今日のパジャマはヒクミンのキャラクター柄の可愛い奴です。

まさかこんな姿をみられるなんて。

うぅ~鏡に映る私の顔が真っ赤です。

急いで寝癖を直して部屋に戻って身だしなみを整えた私は恐る恐る居間を覗き込みました。

村基くんが居なくなってたりは、しないですね。


「ほれ姫乃。そんなところにいないでこっちに来てご飯たべなさい」


うぐぐ、やっぱ出て行かないとダメですよねぇ。

渋々出て行って椅子に座れば目の前には昨日に引き続き山菜をふんだんに使った料理が並んでいます。

こうなったらやけ食い……なんてことは勿体なくてしませんが、食べることに意識を集中させましょう。


「それで藤白」

「ん?」

「はいよ」

「「……」」

「そこの若くて可愛い藤白さんや」

「な、なに?」

「はいはい」

「「……」」


多分間違いなく村基くんは私に声を掛けてくれてるんだけど、お祖母ちゃんが一緒に返事をしてしまう。

そりゃ確かにお祖母ちゃんも私も姓は『藤白』で間違いはないんだけど。

村基くんも気にせず話せば良いのに、言葉を止めてお祖母ちゃんと視線を合わせてます。

じっと見合った後、にこりと頷くお祖母ちゃんと何か諦めた感じの村基くん。

どうやらお祖母ちゃんの勝ちみたいです。何の勝負か知らないですが。


「えと、姫乃」

「はいっ!?」


突然下の名前で呼ばれました。

なぜ、なんて聞くまでもないか。この場には藤白は2人居るので特定させるには下の名前を呼ぶのが確実ですからね。

多分、さっきのお祖母ちゃんとのやり取りもこれを意図したものです。


「えっと何?村基くん」

「ん、ん、ごほんっ」


更に私が返事をするとお祖母ちゃんがこれ見よがしに咳をしながら私をじっと見てきます。

これはあれですね。


「えと、その、一会くん」

「うんうん」


お祖母ちゃんが楽しそうに頷いてるので正解だったみたいです。

でも下の名前で呼び合うってハードルが高いと思うのは私だけでしょうか。

あ、そういえば謡子ちゃんや真子ちゃんはいつの間にかそれぞれ阿部くんと兵藤くんを下の名前で呼んでましたね。

ということは2人に比べて私は一歩遅れてるってことでしょうか。

いや別に何か競い合ってる訳でもないですけどね。


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